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The End of The World 〜one years later〜  作者: コロタン
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第16話 AH-1 コブラ

  「お父さん、誠治さん・・・おはようございます・・・」


  自衛隊との連絡がついて一夜明け、僕は布団から這い出してリビングに向かい、既に起きていた父と誠治に挨拶をした。


  「おはよう、よく眠れたか?」


  「おはよう貴宏君、昨夜は遅くまで騒いでごめんな・・・うるさくなかったかい?」


  父達は僕に気付き、挨拶を返した。

  昨夜は自衛隊との連絡がついた事で、ある程度救助の目処がつき、父達は咲の父親や他の人達を呼んで遅くまでお酒を飲んでいた。

  父と誠治は、集落の外で色々とあった割には意外と元気だ。


  「大丈夫だよ。声を抑えてくれてたから、ぐっすり眠れたよ・・・それより、お父さん達は大丈夫?遅くまで飲んでたけど・・・」


  「まぁ、俺達は慣れてるからな・・・」


  「大人っていうのは、色々と付き合いがあるからね!いずれ貴宏君にも解る時が来るよ!俺なんてこんな状況になる前は、残業や接待でどんなに帰りが遅くなっても、必ず6時前には目が覚めてたからね・・・」


  父と誠治は苦笑しながら答えた。

  父もこんな状況になる前は、僕が寝た後に帰って来て、起きる前には仕事に出る日が多かった。

  改めて大人の苦労を知ってしまった。


  「さて、朝食にしよう。自衛隊からの連絡がいつ来るかわからないし、早めに済ませておいた方が良いだろう」


  「僕も手伝って良い?」


  「おっ、貴宏君は偉いな!うちの千枝にも見習って欲しいくらいだよ・・・前はよく手伝ってくれてたけど、最近は学校が忙しくて疲れてるのか、朝は遅刻寸前だよ・・・」


  誠治は、片手で器用に野菜を切りながら苦笑している。


  「学校かぁ・・・僕もまた行けますかね?」


  僕は正直学校は苦手だった。

  勉強が得意な訳では無かったし、どちらかと言うと友達も少ない方だった。

  だけど、こんな状況になって初めて学校の大切さを感じる様になった。

  今でも勉強は苦手だけど、友達と過ごす何気ない日々が恋しくなる。


  「貴宏君は学校が好きなのかい?俺なんて行きたくなくて仕方なかったよ・・・。勉強は出来た方だけど、面倒臭くてね・・・正直、いつもサボりたいって思ってたくらいだよ!」


  「井沢、お前は昔からそんなんだったのか・・・確かに思い返すと、大学時代もお前は講義はしっかりと出てはいたが、常にやる気は無かったよな。人も避けてたし・・・それが今ではこんなになっちまってビックリだよ・・・」


  「世間の荒波に揉まれた結果ですよ!こんな状況にならなかったら、今でもあの頃のままでしょうね・・・仲間や家族に恵まれたのは、この状況で得られた唯一の救いですよ・・・」


  呆れる父に、誠治は昔を懐かしむように俯いて答えた。


  「誠治さん、九州に行ったら学校に通えますか?」


  「井沢、実際九州はどの位安全なんだ?俺も、出来れば貴宏を学校に行かせてやりたいんだ。貴宏も今まで頑張ってくれていた・・・叶うなら、昔の様な生活を送らせてやりたい・・・」


  僕と父は、改めて誠治に聞いた。


  「そうですね・・・もし九州に来るなら、しっかりと安全が保たれているので、学校に通う事は可能です。何かあった時の為に、教育機関には俺の部下達が常駐していますし、街の至る所に見張りも居ますから、安全は確保されていますよ!」


  「警察や自衛隊はいないのか?」


  「彼等は空港や港湾の警備と、海に面した道路などを担当してくれています。街にも少なからず居ますが、ほとんどは俺達が担当しています。奴等が街に来る前に対処出来るようにしてるんですよ・・・」


  誠治は街の警備の仕組みについて簡単に説明してくれた。

  少なくとも、安全が保たれている事がわかり安心した。


  「じゃあ僕も学校に通えますか?」


  「あぁ、その時は俺が口利きしてあげるから安心して良いよ!先輩さえ良ければ、俺が今使ってる家を使って貰っても良いですしね!」


  誠治は軽く答えたが、僕と父は慌てた。

  軽い調子で、自分の住んでいる家を譲ると言いだしたのだ。


  「いやいや、それはダメだろう!!お前や家族はどうするんだ!?」


  「えっ、実家に移れば良いだけですけど・・・」


  「あのな・・・今それを決めてしまったら、お前は嫁さんや娘から怒られるぞ?」


  僕も父と同意見だ。

  誠治は優しく頼りになるが、意外と考え無しの行動をする傾向がある。

  父も昨日その事を注意していた。


  「何言ってるんですか先輩、俺の惚れた女がそんな事で怒る訳無いじゃないですか!むしろ、世話になった先輩に何もしない方が怒られます!美希はそういう女です!!千枝も絶対に許してくれないです・・・新しい家族が増えて喜ぶくらいですよ!」


  誠治は自信満々で胸を張っている。

  まったく根拠が無さそうなのに、妙に説得力がある。


  「まぁその時になったら、お前の家族に話をさせて貰うよ・・・お前が家族を信頼しているのは解るが、流石に向こうに行っていきなり引っ越して貰うなんて失礼な真似はしたく無いからな・・・」


  「誠治さん、その時はよろしくお願いします・・・」


  僕と父は、誠治の自信満々な雰囲気に気圧され、頭を下げた。

  誠治は嬉しそうに笑っている。


  「じゃあ、準備も済んだし朝食にしようか・・・」


  僕達は、話を切り上げて朝食を食べ始めた。







  『誠治君、酒井だ。聞こえるか?』


  僕達が朝食を済ませ食器を片付けていると、通信が入った。

  昨日誠治が親しげに話をしていた護衛艦の副艦長の酒井からだ。


  「はいはい、聞こえてますよ!酒井さん、お待たせしてすみません、食器を片付けてました・・・」


  『それは申し訳ない、後からにしようか?』


  「いやいや、もう終わったんで大丈夫です!それより、どうするか決まりました?」


  『何とかね・・・一から練り直しで苦労したよ!君の報告を受けて、上も慌てていたみたいだし、新個体の情報は無いみたいだったよ・・・』


  誠治は酒井に対して軽く答えている。

  僕はそんな返事で大丈夫なのかと耳を疑ったが、酒井はまったく気にせず話を続けている。


  「そうですか・・・俺も山口や広島とかでは新個体は見ませんでしたからね・・・恐らく、最初に奴等が発生した関東を中心に新個体が現れているのかもしれませんね。それで、どうなりましたか?いつも通り1ヶ所に集めて殲滅しますか?」


  『あぁ、まずは安全を確保する必要があるからね・・・取り敢えず、先ずはいつも通りコブラ2機で奴等を1ヶ所に集めて排除する予定だよ。その後、安全が確認出来次第救助に向かう予定だ』


  「ここの周辺の地理はわかりますよね?近くに、結構広い運動公園があるらしいので、そこが良いかもしれませんよ!」


  『あぁ、その場所なら無人偵察機で確認したよ!作戦決行は正午になる予定だ。その時間帯は騒がしくなるかもしれないから、住民の方々に説明して貰えると助かるよ!また終わり次第連絡するよ』


  「了解です、こっちの方は任せてください!では、健闘を祈ります!!」


  誠治は酒井との通信を終え、住民に説明するため準備を始めた。


  「井沢、酒井さんの言ってたコブラってのは何だ?」


  父は、誠治と酒井の邪魔をしない様に近くで聞いていたが、通信が終わったのを見計らって質問した。


  「コブラは自衛隊の攻撃ヘリですよ。20mmガトリング、対戦車ミサイル、ロケット弾ポッドなどを装備しています。1機40億もするお高い機体ですが、色んな国で採用されてます。ヘリはかなり音が出ますから、奴等をおびき寄せるのには便利なんですよ!ミサイルで一掃するところなんて、若干引きますよ・・・。俺が直接戦わなくても良いじゃん!って毎回思いますよ・・・まぁ、備蓄にも限りがありますから仕方ないですけどね・・・」


  誠治は説明をしながら手早く着替えを済ませていく。


  「そうか、話を聞いただけじゃ想像も出来ないが、いつもやってる作戦なら大丈夫だろうな・・・さて、俺は皆んなを集めてくるよ。集まったら報せるから待っててくれ」


  父は誠治に伝えて部屋を出た。

  僕は誠治の着替えを手伝いながら父の帰りを待つことにした。

  





  

  

  

  

  

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