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The End of The World 〜one years later〜  作者: コロタン
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第13話 衝突

  「先輩、停まってください!」


  「くそっ!間に合わなかったか!!」


  俺と貴之は皆んなが待つ集落の近くまで戻り、異変に気付き車を停めた。

  俺達を襲った奴等の仲間が入り口のある通りに着いていたからだ。

  ワンボックス車が2台、それぞれ運転席と助手席に人影が見える。


  「どうする井沢!?このままだと入れないぞ!!」


  「先輩落ち着いてください、まずは状況を整理した方が良いです・・・車の中には確認出来るだけで4人います。襲撃に来てるのは9人と言ってましたから、他の奴等はたぶん入り口に向かっているでしょう。自衛官が持って来ていた装備は、予備を合わせて拳銃と小銃が6挺ずつ、それと手榴弾を複数個でしたが、さっきの奴等が持っていたのは拳銃が2挺と小銃が1挺。拳銃1挺は生かした奴に残して、箱バンの中には手榴弾しかありませんでしたから、奴等が拠点に残して無ければ、残りの9挺はあそこの奴等が持ってる事になります。正直、普通に行っても勝ち目無しですね・・・。ただ、こっちにはLAVがありますから、この中に居るぶんには安全です」


  俺は、焦る貴之を落ち着かせ、状況を整理した。

  計画無しではこちらが危険になってしまうからだ。


  「井沢・・・この車の装甲はあいつ等の銃に耐えられるのか?」


  「あいつ等の持っているのは、自衛官が持って来ていた89式5.56mm小銃ですから、十分耐えられますね。それに、この車の防弾ガラスは7.62mm弾にも耐えられますから、車内に居れば安全です」


  俺が貴之に説明すると、彼は少し考えてゆっくりと口を開いた。


  「井沢・・・この車であいつ等の車に突っ込んでも大丈夫そうか?それが大丈夫なら、車内の奴等を無力化出来るし、入り口に向かっている奴等も孤立するんじゃないか?」


  「この車の車重は向こうの2台分はありますから大丈夫だとは思いますが・・・追突するなら、こちらにもそれなりのダメージがありますよ?」


  「それは覚悟の上だ!ここで手をこまねいていては、皆んながあいつ等に襲われる・・・」


  貴之は俯きながら答えた。

  彼の意思は堅いようだ。


  「わかりました・・・では行きましょう!」


  俺は貴之に頷いて答え、シートベルトを締めてダッシュボードを掴み身体を固定した。

  貴之がアクセルを踏み込もうとした瞬間、銃声が響いた。

  集落の人達は銃を持っていない。

  この銃声は襲撃者達の物だ。


  「あいつ等!!」


  「先輩、突っ込んだら一度停まってください!念のため、あいつ等の車に手榴弾を投げます!!」


  怒りに燃える貴之に指示を出し、俺は手榴弾を握りしめて衝突に備えた。

  4.5tの車体が勢い良く加速していき、見る間にワンボックス車が近づく。

  ワンボックス車に乗っている奴等がこちらに気付き、慌てて逃げようとしたが、すでに遅かった。

  十分に加速した4.5tの車体がワンボックス車の側面に突き刺さり、勢い良く吹き飛ぶ。

  凄まじい衝突音と衝撃が起こり、俺は身体を固定していたにも関わらず、身体が宙に浮き、天井で頭をぶつけた。


  「くっ・・・井沢、大丈夫か・・・?」


  「何とか・・・頭が割れるかと思いましたよ・・・」


  貴之は何処か怪我をしたのか、苦痛に顔を歪めて話しかけてきた。


  「ワンボックス車は2台とも使い物にならなそうですね・・・これなら手榴弾はいらないでしよう・・・。それにしても、この車が横転しなくて良かったですよ・・・重心が高くて横転しやすいって聞いてたので、心配だったんですよね・・・」


  俺がため息をつきながら集落の入り口を見ると、5人の男達がこちらを振り向き、慌てて走って来ている。


  「井沢、あいつ等にも突っ込むぞ!」


  「了解ですよ!早くしないと、音を聞きつけた奴等が集まりだしますから、遠慮なく行きましょう!!」

  

  男達はLAV目掛けて銃を乱射してくる。

  弾丸が車体に当たり、弾かれて甲高い金属音が鳴り響く。


  「先輩、少しゆっくりと走ってください」


  「どうかしたのか!?」


  貴之は俺の指示通りに速度を落とす。


  「これを投げますよ!」


  俺は天井にあるハッチを開け、左手に持っていた手榴弾の安全ピンを抜いて車外に投げた。

  

  「おい、てめえ等逃げろ!!」


  銃を乱射していた1人の男が、手榴弾に気付き仲間に注意して横に飛んで逃げる。

  その直後、銃声を上回る轟音が鳴り響き、空気が振動する。


  「凄い威力だな・・・」


  「殺傷効果範囲は15m程ですからね、この距離だと結構衝撃が来ましたね・・・」


  俺達は耳が痛いのを堪え、周囲を見渡す。

  車外に居た男達の内、気付くのに遅れた2人は、爆風と破片により見るも無残な死体に成り果て、残る3人はいまだに動けない状態のようだ。

  通りの入り口を見ると、奴等が集まり始め、動かなくなったワンボックス車の中で気を失っている男達に襲い掛かろうとしている。


  「先輩、奴等が来ました!急いで中に避難しましょう!!」


  「わかった!」


  俺達は倒れている男達を放置し、入り口の前でクラクションを鳴らす。

  すぐに門が開き、仲間達が出迎えてくれた。

  後ろを見ると、新個体がこちらに向かって走って来ていたが、まだ息のある男達に気を取られ、そちらに襲い掛かった。

  男達の悲鳴が聞こえてくるが、そのまま門を閉めた。

  今日だけで13人の生きた人間を殺した。

  後悔はしていないが、やはり何とも言えない気分になる。

  俺と貴之は、門が閉まると同時にどっと疲れが押し寄せ、大きなため息をつきダッシュボードに突っ伏した。


  


  

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