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抜かりはないのです


 ミコトが可笑しい。

 確実におかしい。


 だってミコトってすべてが「どうでもいい」か「好ましい」かに分類されていそうなんだもの。あんまり「嫌い」っていう対象なさそうなんだよね。「嫌い」に辿り着くには周りに興味なさ過ぎる自由人筆頭だし。


 それが、こんな、こんな上げて落とすなどという面倒なことに労力を払うなんて今までのミコトからは考えられない。

「消え失せろ」の時点で実行に移すのがミコトさんだったはずだ。

 ので。


「……なあ。ミコトさん、……いつもと違わないか?」


 すでに歩みを再開して少し、恐る恐る、騎士団長は傍らのスラギに聞いてみた。

 すると。


「ん? そうだねえ」


 あはっと笑顔で爽やかに肯定された。

 やはりおかしかったのか。そして気づいていたのか。


 なのになんでそんな笑顔なんだろう、貴方の大事なミコトが何かおかしいのに。


 聞いてみた。


「あははっ、だってミコトがああなってる原因解ってるし~」


 わかっているならどうにかしていただけないものだろうか? 騎士団長はジト目で一応部下を見た。しかしまあ当然のように効果はない。哀しくなった。


「ん~、どうにかしようにも、どうにもできないしねえ」


 こてん、首を傾げていうスラギ。

 どうにもできないってどういうこと? 自由人にも不可能なことって存在したの?

 ていうかそもそもミコトがああなってる原因ってなんなんですか教えてください。


「ん? 風邪ひいてるんだよねえ、ミコト」

「……は?」

「三十九度くらいはあったかも~」

「は?」

「昨日の夜、ミコトはバシリスクの毒の実験しててねえ」

「は!?」

「ちょっと免疫力が下がってたんだけど、そこに風邪っぴきの黄龍が来てねえ」

「はあ!?」

「うつされちゃったみたい~」

「………」


 まて、まとうか、待ってください。


 突っ込みどころしか見当たらない。風邪をひいていらっしゃる? 熱が三十九度もある? バシリスク? 黄龍?


 ……いやまて。多分バシリスクは毎晩恒例狩りイベントにて捕獲されたんだろう、多分。そして実験をしていた、クラーケンの事例からも理解出来んこともない。


 そして黄龍、これはたしか以前に友人発言が飛び出していたはず、そうだそうだった、なんでここに居るのが分かったとかちょっと恐怖だけど。


 いや、でもとにかく一番聞きたいのは、



「えっ、ガーゴイルの心叩き折ったあげくまとめて蹴り飛ばしたぞミコトさん」



 綺麗な放物線を描いて飛んでいった光景は未だ脳裏に焼き付いている。


「そうそう、体調崩すとミコトってちょっと社交的になるんだよねえ」


 どんな副作用?


 ていうかあんな過激に暴力的な社交があって堪るものだろうか。いや、言っても絶対意味はない。ならば。


「……休んでなくて、いいのか?」


 ミコトに視線を投げながら尋ねる。ていうかなぜ動ける。なんで元気。なんで顔色一つ変わらないの?

 そして自由人も病原菌に負けることがあるんですね知らなかった。

 が。


「ふふ、ミコトさんが休んでるわけないじゃない~。今もあたらしい風邪薬の実験中~。もともとそういうの全然ものともしない人なんだよねえ」

「……へえ、」


 どうしよう、わからない。

 え? 人間の領域を逸脱してない? 普通体温が三度も上がったらめっちゃきついと思うけど。そして黄龍からうつったってそれけっこうやばい奴じゃない? ふつうの病原体じゃない可能性が高くない?


 なのになんで「何言ってるの」みたいな感じで諭されているんだろう、解せない。


「えっと、俺たちにうつるとか、悪化するとか、」

「あははっ、ないない~。朝ごはんに抗生剤入ってたから~。それにミコト、昔からどんな病気も一日あればほっといても治るし~」


 自己治癒力たけえ!


 が。


 待って、……朝ごはん?









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