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彼は邪魔をされるのがお嫌いなんです


 そう、魔族である。

 一行の前に飛び出してきて、金を要求した者たち。十人ほどはいるだろうか、なかなか豪勢である。そんな彼らを少しご紹介するならば、肌の色は灰色っていうか岩。凶悪な顔つきに翼。牙。


 ぶっちゃけガーゴイルの集団だった。


「ッ!」


 すぐに戦闘態勢に入る騎士団長とイリュート。やはり魔大陸に入った以上、思ったよりも普通であったとはいえ魔族との交戦は避けられないのか。奥歯を噛む。

 魔族との身体能力の格差はいかんともしがたいものがあるのだ。気は抜けない。


 が。


「わあ、盗賊だあ~」


 あははっと、すごく楽しそうな声が上がった。

 安定のスラギだった。


 楽しそうなのも緊張感が皆無なのももう諦めた。


 が、いやちょっと待とうか。


「え、盗賊?」


 思わず聞き返した。


「盗賊だよ~?」

「盗賊だろう」

「金目のもん置いてけって言ってたじゃねえか、きいてたろ?」


 ああ、そう言えばそんなこと言ってたけど。今思い出したけど。ちゃんと聞いてたんだ、そして理解してたんだ。


 てか盗賊? いるの? 魔族に?

 え、これ、人間だから襲われてるんじゃないの?


 自由人の皆さんは口々に冷静な発言繰り出してくるけど。

 そりゃ魔族に襲われたってことで相手の台詞完全に失念してたけども。


「人間にもいるけど、魔族にもまあいるよな、盗賊くらい」


 アマネがしみじみと言った。

 なんでしみじみと言った?


「ああ、居るんだ……」


 つい、相槌を打ってしまった騎士団長。


「いない方が可笑しいだろう。集まれば阿呆なことをやらかそうという頭のネジが足りない輩ぐらい混じっている」

「……あの、」


 ミコトさん何その辛辣な評価。いや、うん、そうね、そう言われれば居るね。納得した。そしてまあ、ミコトの評価も否定はしない。だって自由人を三人も有するこの一行に喧嘩を売ったのが既に不幸なほどに阿呆だしね? 頭のネジが足りてないしね?


「あははっ、ミコトああいうの心底面倒臭そうにしてるもんねえ、時間の無駄だから~」

「……えっと、ちょ、」


 スラギが楽しそうに笑う。ああ、だからユースウェル王国で襲われた時も「消すか」とか物騒な発言したんだ。聞かなかったことにしたけどまあこびりついてるよね。怖かったもの。あの時のミコトさん。スラギが一瞬で掃除を完了しなきゃ確実に実行してたもの。


「……あの、だから、」

「特にこういう、明らかに健康で元気が有り余ってるくせに楽な手段に流れて地道に仕事も探さずに手っ取り早く稼ごうとしてる輩が大嫌いだよな」


 アマネが深く、深く、頷いた。


「……」

「嫌いというよりは理解出来んな。事情があるのか知らんが、馬鹿の馬鹿な行動は視界に入れるのも無駄しか感じない」


 ミコトは淡々と言い切った。

 えっと、なんていうか、ミコトの中で「盗賊」ってそんな底辺なの? いや普通に考えて上位じゃないだろうけれども。何かあったの?


「行動が不合理なくせにミコトの薬草採取の邪魔するから~。ほら、山とかに棲みついてるから、荒らされたりもしたことあるんだよねえ」


 あはっとスラギは教えてくださった。


 そっかあ、それは仕方ないなあ。ミコトは他人に興味ないけど邪魔されるの嫌いそうだもんなあ。


 って。


 何で普通に談笑してるんだ自分達。

 こんなことしている場合ではない。そんなこんなでディスられまくってる当の盗賊さんたちが現在目の前で金品を要求しているのである。


 すっかり忘れてたけど。


 ていうかこっちの話が終わるのを律儀に待っている盗賊も盗賊である。……ガーゴイルだからか? 気が長いのか?

 思って、騎士団長は視線を自由人からガーゴイルの集団に戻した。


 が。


「へ?」


 そこに居たのは青筋を立てて拳を振りかざす凶悪な魔族……ではなく。



 オブラートもくそもない氷点下の評価が全てぶっ刺さって涙に臥せるガーゴイルの集団だった。









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