奇行も積もれば当然になります
それは今から十四年の昔の話である。
ミコトが十二歳、スラギが十三歳。そしてアマネも十三歳であった、夏の事。
ミコトとスラギが一応師匠である所のグレン翁と出会ってだいたい五年くらいの年月を経た挙句、二十年に一度の一念発起が起って定住した、そんなころである。
人間社会へ迎合する気が端からない自由人の集合体であった三人は、その自覚は特になかったけど町の中ではなく、森の浅いところに小屋を作って暮らしていた。
自覚がないのになぜそこに居を定めたか?
もちろん師匠たるグレン翁がこの時画家になることを志していたために「芸術の匂いがするわい!」との一言を唐突に叫んだ結果であった。
電波である。
まあそんな師匠の奇行に慣れきっている弟子二人は「そうか」の一言で何の疑問も抱かなかったけど。
そして職人もかくやの手際で魔法を大盤振る舞いの挙句数日もたたずに立派な小屋を森の中に作り上げたけど。
ともかく。
そんな三人が暮らし始めて数日。狩りが趣味なグレン翁及びスラギ、薬草とともに様々な収穫物を採集してくるミコト。食生活はなかなかに充実していたものの調味料や主食などは自給自足に限界がある。
そのため、一応それまで旅芸人として貯めていた金銭もあったが、どうせ町に行くならばとミコトの作る薬草も細々と売っていた。
ぶっちゃけ細々って形容詞が厚かましいくらい売れた。
いや、もちろん初めは子供が売るもの、という目線で見られていたのだが、あまりに泰然自若、からかう目的でちょっかいを出せば返り討ち。
あ、この子只者じゃない。
そう周囲が認識するのに時間はいらなかった。
その上で好奇心で購入した者から噂が瞬く間に広まりあっという間に大人気になったのだ。そしてミコトの気が向けば傷の手当などもその場でしてくれる。医師や薬剤師の常駐していない町では重宝されまくった。
その上ミコトは美童だった。そして不意打ちでデレを繰り出してきた。
攻撃力は推して知るべし。
ミコトは昔からミコトなのである。
……その時のグレン翁とスラギ? スラギはミコトが薬草を売りに行くときはついてきてにこにことおばちゃんをたらしこんでいた。そして商品をおまけしてもらうという策士である。そしてグレン翁は……あれだ。森に居た。
だってグレン翁の目標は現在画家になることなので。そして弟子二人はなかなかに常識を忘れ去っていたものだから、五年という月日で既にそれほど教えることはなくなってしまっていたというかなんというか。
このころにはすでに不意に飛び出た質問に答える、ぐらいであった。むしろ生活力が異様に高いミコトにグレン翁はお世話されていた。いっそ足蹴にされていたこともしばしばだった。
師匠の威厳とは。
まあいい。
兎にも角にも、そんなこんなで生活していたものだから、ミコトの噂は当時少し離れた村にかくれるように住んでいた、アマネの下にも届いたのだ。
で。
「薬草売ってるっていうのは、あんたか?」
細い体躯で鋭い目つき。
そんな赤茶色の髪をした子供が、日差しのさんさんと差す夏の日に、尋ねてきたのである。