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人間でいらっしゃいます

あけましておめでとうございます!

 そしてそれから数日は至極平和に過ぎて。


 蛸に襲撃を受けたとかそれをスラギが粉みじんにしたとか、巨大魚の魔物に集団で襲われてその鱗をミコトが三秒で剥いだとかまあ些細な事件はあったけれど概ね平和であった。


 ともかく。


 ――陸である。


 そう、五日という長いんだか短いんだかわからないとりあえず濃厚すぎる出来事をサンドした数日間を経てとうとう六人は再び土を踏んだのである。

 ……船? ミコトが何でもないかのように亜空間に収納してました。便利の極みです。気にしたら負けです。


 ので。


「……ここが、魔大陸」


 ごくり、息をのむように神妙に声を発したのは誰だったか。


 まあその横で通常運転の自由人は、船をしまったその手で馬車と馬を亜空間からひょいひょい出して「早く乗れ」とか感慨のかけらもない発言かましてきたんだけど。


 情緒がない。

 なんていうんだろう、感情の振れ幅ものすごく少ないよな今更だけど。

 でもだ。


「なんつうかこう、少しは恐れるとかなんか、」


 なんといっても魔大陸。今までにも魔物に襲われてきたけれど、ここはその元締めみたいな魔王が住む土地である。


『大勢で来るとかマジうざい』とか女子みたいな発言する魔王だけど。


 まったくその姿が想像できないし、その手紙が届いた瞬間脱力したっていうかイメージが崩壊しかけて接着剤で止めたけど。


 いやでも魔王だし。何百年も生きてるっていう噂だし。人間の侵略を指先でつぶしてきたのは事実だし。全属性魔法の使い手だって言われてるし。


 まあスラギも全属性でミコトなんて神聖魔法を日常生活に便利に活用してはばからないけど。

 そしてつい先日この自由人ども、子供にして戯れに一つの国崩壊させたって衝撃の事実暴露してくださったけど。

 深海の覇者も魔物の団体様も眉ひとつ動かさずに楽しそうに殲滅していらっしゃったけど。


 あれ? 自由人の方がこれおかしくね? 魔王よりも魔王じみてね? 人間に手を出されないと何もしてこない魔王よりも気まぐれで動く自由人の方が恐怖じゃね? あれ?


 いや、気のせいだ気のせいにしよう、うん。


 それよりもだ。


 騎士団長の中にわずかにある恐怖。

 この魔王、あの手紙からして自由人と同類の臭いがしないでもないような気がするんだけどどうしよう。

 出会ったら意気投合しそうでそっちもそっちで怖いんだけど。


 本当に怖いんだけど!


 しかしそんな心境などお構いもなく、黒と金の自由人は平常運転でミコトの薬によって深い眠りについていたはずが現在元気にいなないている馬にまたがって「早くしろ」と言ってくる。


 なんなの?

 死んだようにピクリとも動かなかった馬がどうして五日間の昏睡を経てつやつやと良い毛並みで上機嫌なの?

 ミコトの麻酔にはいったい何が配合されてたの?

 相変わらず意味が解らない。


「「「「……はい……」」」」


 ため息交じりの虚ろな返答は、四つ綺麗に重なっていた。

 しかしそれでも何とか馬車に乗り込み馬にまたがり、いざ出発、と、その時である。


「あれ……」


 ぼそり、イリュートが海を見て小さくつぶやいた。


「?」


 騎士団長はそれに反応して振り返る。

 すると。


「……へ?」


 見えたのは、小さな船影だった。それは見る見るうちに近づいてきて、魔大陸に泊められる。そして少し距離があってはっきりとしないが明らかに人型の影が下りてきて、


 待て。


 何を普通に小舟で到達しているんだ。

 えっ、あれ人間? それとも魔族?

 にわかに騎士団長とイリュートの身体が強張った、その時。



「アマネ」



 ひどく落ち着いた声で、黒髪の麗人が呼んだのだった。








新キャラ登場です。

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