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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
ユースウェル王国内編
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誰にでもわかる簡単な問題です


 そもそもの話をしよう。

 たいへん今更であるなどということは自覚していても無視するのが様式美である。


 ともかく。


 顔面蒼白になりながらも国王が懇願までして、スラギに頼んだことが何かと言えば、濃縮すれば確かにスラギ自身が言った通り。

『魔王のところへ向かう一行との同道』である。

 では、なぜそんな一見狂気の沙汰を威厳をかなぐり捨ててまでのらくら自由人に懇願したのか、というとだ。


 基本的な話、この世界には魔王なる者が存在する。

 魔族がいて魔物がいて魔法がある。

 そしてこの国の名前はユースウェル王国、国王がいて騎士団があって騎士団長がいる。

 そんでもって、一応あれでもスラギはユースウェル王国騎士である。


 どんな経緯でもって彼が入団するなどという騎士団長にとって人生最大の不幸が起こったのかという話は別の機会においておくとして。


 魔王である。

 ぶっちゃけ、この世界の魔王はまあ、魔族の国というものを持っており、魔族の頂点に君臨してウン百年だったりする。

 そして、そんな健康長寿な魔王様に、人間がちょっかいを出しては指先であしらわれてこれまた同じくウン百年だったりもする。

 そんでもって侵略しては追い払われ、侵略してはうざいといわれ、侵略してはしまいにゃしばくぞワレと脅されて数十年なのだったりもしてしまうのである。


 何をしているのだ人間よ。


 ともあれ、ここにきてやっと人間は学習した。

 なかなかに血のめぐりが悪い脳みその作りをしていたとは思うが、結論に至ったのだ。


 魔族とは長命で頑健で魔力も豊富で扱いに長けている者である。→そもそも短命でひ弱で魔力も少なくて扱いもいまいちな人間が勝てる要素などかけらもなかった。→すわ人間魔族に滅ぼされるフラグか?→いやいや、そもそも人間が攻撃しなきゃ魔族って割りと大人しい理知的生物ではないか。

 ……。

 …………。

 ……あっ。

 友好条約結んで貿易しましょうそうしましょう。

 というわけだった。


 なぜそこに辿り着くのに何百年もかかったのか人間。


 ともかく。

 そんなこんなで決まった友好方針、実はこのユースウェル王国が先駆であったりする。

 この世界の人間たちはちょっと全体的にのんびりさんなのかもしれなかった。

 まあそれはいいとして、とりあえずは無難に騎士を使って手紙で送ってみた。


『魔王さん魔王さん、どうかお友達になりましょう』と。

 すると返ってきた返事がこちら。

『ざけんな友達とかいうならそれなりの使者寄越せや。怠惰か? 怠惰なのか』。


 正論だった。

 そこで悩んだユースウェル国王。自身が行くのは色んな意味で問題が大きすぎた国王。でも魔王さんは怖いので使者は王族が適当だということぐらいはわかっている国王。

 でも子供は王女と幼い王子が一人ずつしかいない国王。

 結果、王女が使者として使わされることになったのである。


 で。


 それでもやっぱり怖いので、もちろん万全を期さねばならないのは必至。

 だがしかしぞろぞろ引き連れていくのは他国の横やりを避けるためにも難しいという素敵な現状。

 ていうか魔王が釘をぶっさしてきていたりする。


『行列で寄越すとかやめて超うざいし』。


 魔王よお前は女子か。


 ともかく。

 数をそろえられないならば質で勝負するしかあるまいよ。

 もちろん騎士団長はメンバーである。

 しかし、彼だけではやはり万全とは言えない。

 だからこそのスラギであったりしてしまったのがこの国の哀しさであった。









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