表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/254

質問事項は明確にすべし


 ミコトの言う、『餓鬼ども』とは、彼らが解放したという奴隷仲間のこどもたちの事、なのだろう。おそらく。


「奴隷商人ギルドなんてものが無かったらよかったのにってね~」


 スラギが笑う。何とも言い難いような空気が流れた。

 が。


「それを聞いてスラギが『じゃあ挨拶に行くのも楽しそうだ』とか言い出したんだ」


 固まりかけた空気を壊すようにはあ、とため息をついたのはミコトだった。ばっと視線はスラギに集中する。しかし当の本人はにこにこしているばかりで。


「だって退屈だったんだもん~」


 ミコトはともかくスラギの本音はそっちだったらしい。即物的である。


 しかものたまったあとミコトに抱きついた。

 まあ一瞬で蹴り飛ばされたけど。

 セクハラである。


 でも、そんなやりとりを横目で見ながら騎士団長は、ああ、と思った。思い出した。

 そうだ、ミコトは。

 ――そうやって手を差し出す人間なのだった。


 優しいのだ。

 多分、どうしようもなく。


 ……異常だといわれた革命劇と連邦の崩壊。けれどもっとも異常だったのは流れた血が驚くほどに少なかったことだ。

 それさえも、当時幼子であったミコトとスラギの手のひらの上であったのかもしれない。


 そう考えると、騎士団長は……



 尋常でなく、背筋が凍った。



 いやいやいやいや。超怖い。超怖い!



 この自由人たちの規格外を恐れながらもまあ興味ないんだからそんなことしないよねぐらいで流してきたけど。

 三日でその存在の片鱗も歴史に残さず一つの国を崩壊に導いた手腕。

 八歳と七歳にしてその手腕。


 鮮やかである。


 スラギの物理にミコトの頭脳。いかんなく発揮されている。


 どうしよう滅ぼされる。冗談でなく、この自由人二人がやろうと思えば楽しく世界は滅ぼされる。


 ミコトはそういう、人に手を伸ばす性質を持っているけどストッパーがついていらっしゃらない!

 スラギに至っては『退屈』とか些細な理由で楽しくフィーバーしちゃっている!


 結果的に悪いことにはなっていないし多くの人間を救うことになっているけれどもそれは結果論であってやったことは戦慄の極み。


 だってそれやったの大人じゃないんだよ? 子どもなんだよ? なかなかにおかしいと評判のお師匠様たる『グレン翁』に出会う前なんだよ?


 純然たる恐怖しか感じない!


 というかホントどんな子供だったのだ。まったく想像できない。美童であったということは想像できるがそれ以外が未知すぎる。


 可愛げや子供らしさを一体どこのどぶに捨ててきたんだ今からでもいいから拾ってきなさい!


 というか。


「ホント、仲いいよな、お前ら……」


 そんな子供のころから。

 スラギが『退屈だった』というふざけた理由を受け止めちゃうくらい。

 そんで今までずっと一緒だったんだよね。心の友だよね既に。


 いや、そんな特殊な環境で奇跡的に出会った色んな意味での同類だからこそ仲良くなったんだろうけどさ。


 でもミコトはなんだかんだ言ってスラギに厳しいけど甘いし、スラギのミコトへの懐きっぷりはもう言い尽くせないほどだ。

 まあつまり、若干ストーカーじみた犯罪臭は漂うものの全体的に鑑みて二人はデロデロのメロメロである。


 爆発すればいいと思う。


 子供のころからあんまり変わっていないんじゃないだろうかと予測できる二人の性格、では他者に興味がないのも昔からだろう。

 それがここまでこうなったのには『同類』以上のきっかけがあるんじゃないかとか、やっぱり気になるじゃないか。


 いや『類は友を呼ぶ』と言われたらそれはそれで納得するけども。


 が。


「ふふ、だってミコトは、」

「俺にとってスラギは、」



「「俺を人間にした存在だから」」



 一人は笑って、一人は瞳を伏せて無表情に。


 言ってくれたんだけどどういう意味だろうか。ラブラブはわかるんだけど現在も十分人間じみてはいないと思う。……自由人とは常に言葉が足らない人種だから仕方ないけども。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ