彼らは純粋なのです
「よ、『幼年趣味を拗らせた変態ババア』……?」
幼年趣味を拗らせている時点で変態であることはわかるのだけれどもさらに『変態』を重ねているということはよほどの何かがあったのか。
顔を引きつらせる四人である。
しかしミコトとスラギは何処までも平常運転で。
「ああ、鎖につないだ子供に罵られて喜ぶ変態だった」
「しかも美人な子どもばっかり選ぶんだよねえ。理解できなかったねえ、あれは」
どこら辺が変態だったのか暴露してくださった。
それは変態だ。
紛う事なき変態だ。
気持ち悪いっていうかイってしまっているというか病が深い。深すぎる。
何てことだろう、まさかそんな幼少期の苦い体験が現在自由人をこんなことにしてしまった原因なのだろうか。
が。
「まあ、別にいつも通りに接していたら勝手に喜んでいたから放っておいたが」
「あはっ、ミコトったら基本的にごみを見る目してたもんね~」
「人のことを言えるのか、お前も笑って暴言吐いてただろうが」
違った!
彼らのサディスティックな自由さは生まれながらだった!
そう言えばそもそも奴隷商人の人格修正するほどに個性に富んでいたんでしたね!
そんな歪んだ個性の成長結果がここに!
……いや、最初からこれだとすればむしろ現在まですっきりとぶれなく歪みなく育ったというべきなのか。
兎にも角にも自由人は初めから自由人でしかなかったことが判明した。
なるほどもう十分である。
うん、これ以上は突っ込むべきではない。詮索すべきではない。疑問はいろいろとあるけれどそっと蓋をして封印しよう。
いや、ミコトもスラギもたぶんおそらく気にせず疑問にお答えしてくれると思うけど此方の精神が持たない気がするので。
ていうか気にせずお話してくれている時点でどうしたらいいのかわからないです。
そう、騎士団長とサロメは遠い眼をした。
が。
そこで疑問が尽きなかったのは若者二人であった。
「でも、貴方たち、子供のころは『師匠』に師事なさっていたのですわよね?」
「どうやって、逃げたの……?」
なんだろう、あたかも冒険譚を聞いているかのごとく好奇心に目が輝いてるんだけど王女とイリュート。
違うよ?
そんな軽い話じゃないよ?
その疑問の答え気になるけども!
「ああ、三年ぐらいで逃げたな。奴隷を買うだけあって金持ちだったから、利用して知識を蓄えていた」
ミコトは何でもないかのように答えてくださいました。
なんて子供に有るまじき長期的計画!
そして簡単に言ってくれてるけどそんな単純な話じゃないよね?
「そんな、簡単だったの……?」
こてん、と尋ねたのはイリュートである。言い方は控えめだけど実質ぐいぐい行っていた。若者の特権だろうか、この素直さ。
まあ騎士団長とサロメの年長組も沈黙を守りつつ聞いてるからどっちもどっちだけど。
ともかく。
「そうだねえ、奴隷って魔力封じの首輪でつながれてるんだけど、俺たちって『先祖返り』で魔力が多いでしょ~? だからねえ、魔力一杯籠めたら壊せるなってわかってたんだよねえ」
力業!
さらっと言ったけど繋がれてたんだよね? そんな笑って言う事じゃないんだけど? どんな顔して聞いたらいいのかわからないんだけど!?
というか、ん?
……待とうか。首輪壊せたんだよね。簡単に。ではそもそも奴隷商人から逃げられたのではないだろうか?
思ってしまった騎士団長、つい、そのことを聞いてみた。
すると。
「あ? ああ、あいつからはあんまり知識が得られなかったからな。旅するにも準備がいるだろうが。奴隷を買うなんてのは金がある証拠だから、そっちに行ってからの方が色々とできる」
何て合理的な幼児!
騎士団長たちは顔が盛大に引き攣った。
しかし重ねて。
「別に商人のところでもババアのところでも、結構勝手にしてたしねえ。おんなじだよ~」
結局何処にいても主導権は自由人にあったことがここに証言された。
とどめを刺された気分だった。