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持って生まれた性質のようです

※シリアス要素注意!

倫理にもとる表現があるかもしれません。

 どうしようミコトさんの爆弾発言。

 あれ? スルーすべきなの? それとも突っ込むべきなの?


 ユースウェル王国も含め現在ほとんどの国では奴隷は禁止されている。しかしそれでも闇の根源は地下に残っているし、いまだ制度自体が撤廃されきっていない国もある。

 だから、彼等の過去はあり得ないなどと切って捨てられるものではなく、むしろそんな過去を乗り越えたからこんな自由人に育ったのだろうかとも思えた。


 重い。

 軽々しく飛び出してきたそれにいつものように返せないほどに、重い。


「う、あの、そりゃあ、……」


 故に、言いよどんでいる騎士団長。

 が。

 そんなことはどうでもいいとばかりに自由人は独自の世界で会話を続け。


「あはっ、最初はねえ、綺麗な黒いのがいるな~って思ったんだよねえ」

「ああ、俺も変な金髪だと思った」

「手を振って『こんにちは~』って言ったら『おう』って振り返してくれたよね~」

「ああ、丁度昼飯を徴収した時だったな」


 おかしい。


 ごめんそれ出会い? 自由人の出会いで第一印象で会話?

 In奴隷商館?


 何ていうか、比較的治安のいいユースウェル王国で育った貴族の騎士団長たちには想像しかできないんだけど、とりあえずおかしいことはわかるよ?


「……何歳だったんだ……」


 思わず漏れ出た疑問だった。

 すると。


「ん~? ミコトさんが四つで、俺が五つだったよねえ」


 スラギはにっこり答えてくれました。


 それが事実だとしたら本当に何とも悲痛な過去である。軽々しく口を出してはいけない領域だろう。出会った場所が場所だし、様々なことがあったのだろうと予想ぐらいはできる。


 が。


 騎士団長たちは言いたい。すごく言いたい。


『綺麗な黒いの』? 『変な金髪』?

『こんにちは~』で『おう』? 『昼飯を徴収』?


 本当に四歳や五歳の幼児ですか? 目の前にいらっしゃる自由人の平常運転にしか聞こえない!

 しかもだ。


「ふふふ、ミコトはあの頃からすごかったんだよ? 俺の方が後から来たんだけどねえ、奴隷商人をやりこめてはその日の食料を強奪してたんだよ~」


 スラギは笑いました。


 幼児……?


「あ? お前だって奴隷商人をからかって怒らせちゃ殴りかかってくるのを一発もかすらせずに心折ってただろうが」


 ミコトは呆れたように首を振りました。


 幼児……!?


 待とうか。本当にそれは子供だったのか。

 食料を強奪って何をしたの? 心折るってどんだけ?


 この美貌から子供のころはそれは美童であったのだろうと予想は着くが、そこから繰り出される攻撃がえげつないんだけど。


 重いはずの過去なんだけど、実際すごく重いんだけど。

 本人たちが自由人過ぎてどうしよう……!


「冷めた目でミコトは心底商人を馬鹿にしてたよねえ」

「お前こそあれを完全に面白い玩具だと思ってたくせによく言う」


 自由人過ぎてどうしよう!


「「「「……」」」」


 こう、不謹慎だとはわかるんだけど、間違っているともわかるんだけど。


 冷酷で残虐な悪人であるはずの奴隷商人が、かわいそうな生き物に成り下がっているようにしか聞こえないんだけど……!


「あの商人、俺たちをすごく売りたそうにして頑張ってたな、そう言えば」

「二人まとめて売れた時には感涙して格安で売ってたよね~」


 言っちゃ悪いが売れたのか。そんなとんでもない子供を欲する人間がいたのか。

 そして奴隷商人の身にいったい何が起こった。

 完全に矜持を折られている。


「ああ、そう言えば俺たちを売った後で足を洗ったとか聞いたな。普通の子供の愛らしさに目覚めたとかで孤児院を開いたらしい」

「あ、俺も聞いた~。あははっ、毎日神に祈りを捧げてるとかって噂もあったよね~」


 奴隷商人の身にいったい何が起こった!?

 人格が矯正されている!

 ……というか。


「……お前らを買ったってのは、その、」


 どんな人だったんだろう。つい、聞いてしまった。

 すると。


「「幼年趣味を拗らせた変態ババアだったな」」


 声をそろえて返って来たけどなんだその不穏な趣味のババアは。






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