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先人の知恵も自由人には勝てないようです

「……ごほん。いや、……うん……そうか。……そうなんだな……」


 スラギの長期的計画に若干どころではなくドン引きしていたが、まあなんていうかミコトならなんだかんだスラギの思い通りにはならないだろうから何も気づかなかったことにした四人である。


 まあ本音は下手に邪魔したら金髪の悪魔に消される気がしたからだけど。


 ともかく。話を戻そう。


「わかった。『両性体』ってのが何かは、まあ混乱はしてるが大体わかった。じゃあ、もう一つの方を教えてくれないか? ……『先祖返り』ってどういうことだ?」


 騎士団長は意を決して尋ねた。

 これが一番よくわからなかったのだ。

 ニュアンス的には「隔世遺伝」的なものなのだろうか?


 だが、しかし。


「そのまんま?」


 こてん、と首を傾げたスラギの答えは何も答えになっていなかった。


 そのまま聞いてはわからないから改めて尋ねているのだということをこの自由人はどうすれば理解してくれるんだろう難題である。


 しかし騎士団長は忍耐強かった。


「いや、あのな? そのまま聞いてわからないから訊いているんだ。そこのところをもう少し詳しく説明してくれ。な?」


 幼子に言い聞かせるかのように懇切丁寧に頼んだのである。

 経験が着実に積み重なっている。すると。


「『先祖返り』は『先祖返り』としか言いようがないんだが……。そもそもその昔、人間はみな俺たちと同じ『両性体』だった。それが時を経て男女それぞれの性を固有するように分かれたんだ」


 黒の麗人は言いました。


「もう一回詳しくお願いしますミコトさん」


 反射で騎士団長は頼みました。


 だってミコトが聞き捨てならないことをサラッとぶっこんで来た。

 いや、説明だ。スラギより全然説明になっている。

 でも待って。ちょっと待って。


 しかし現実は容赦なく。


「だからね~、人間の御先祖様ってみんな『両性体』だったんだよ~。それが男と女に分かれたのが今なんだけどね~。で、昔の人間とおんなじように産まれてきちゃったのが俺たちなんだよねえ。だから『先祖返り』って言ってるんだよ~」


 あははっととても楽しそうに、答えてくれたのはスラギでした。


「……へえ」


 なんていうか、なんとも言えなくてそんな声を出してしまったのは騎士団長である。


 うん。

 うん、待とうか。


 えっと、ミコトとスラギ曰く、人間とはもともと男と女両方の姿を取れる『両性体』であって、それが時を経て男女それぞれに分かれるようになった。ミコトとスラギはそのはるか昔の人間と同じ体質を持って生まれた、と。


 なるほどわからない。


 その根拠はいったいどこに。昔の人間がそんなことになっていただなんて聞いたことないんですけど学が足りないんですかそうなんですか。


 これでも騎士団長・ジーノをはじめとして侍女・サロメ、騎士・イリュートは貴族出身、王女・リリアーナに至っては王族でかなりの教養を積まされてきたんだけど。


 でもミコトもスラギも嘘を吐くような人間ではない。むしろ嘘を吐く時間を無駄だと思っている人間だ。


 だから、混乱する頭を押さえつつ騎士団長はまた聞く。


「えっと、それは、いったいどこで知ったんだ? 俺たちは『両性体』とか『先祖返り』とか今まで聞いたことなかったんだが」


 すると。


「昔旅をしている時だったか、石碑で『両性体』について読んだな。『先祖返り』というのは俺たちのこれにはその言い方が一番当てはまるだろうと思っただけだが」


 ミコトさんは平然とおっしゃった。


「……石碑……?」

「リゼの遺跡だったか? あるだろう」


 それは世界最大で最古とか言われている遺跡ですね。


「そこにでっかい石碑があるんだけどね~。知らない?」


 知ってる。

 学者が絶賛研究中だけど全然解読されてないってことも知ってる。

 観光地として開放されているから見ることはできるけど詳細は一切不明の神秘の遺跡ということで有名だ。


 ……うん、一切不明、ということで有名、なんだけど。


「……読めたのか?」


 聞いてみた。すると。


「ああ」

「一週間くらいで分かったよね~」


 あっさりと、自由人は笑って肯定したのでした。


 ……うん、お前らとりあえず学者に土下座で謝ってこい。





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