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歪みなき愛です

 すごく納得する光景を繰りひろげてくれているスラギに素朴な疑問がわいたのはサロメだった。

 疑問は口に出す、答えが理解出来なかろうとも聞かないよりはまし。

 この旅の中、もちろんサロメもそう学習している。だから素直に口に出した。


「……下世話な質問ですが……。お二方は男性であり女性であるという事ですわね? ならば、恋愛対象は限定されないのでしょうか?」


 頬に手を当て首を傾げるサロメ。

 それに一瞬きょとりとしたのは王女・リリアーナと騎士・イリュートだ。


 騎士団長・ジーノも、そう言われれば、と自由人に視線を向ける。ミコトもスラギも美形で美人だ。他の追随を許さないほど。スラギは町で女性に取り巻かれていたのを何度も見たことがあるし、ミコトは一目ぼれで求婚されるという珍事件も引き起こしている。


 それでいてスラギはミコトにぞっこん、ミコトにとってもスラギは特別。

 なるほど推測できない。


 さて真実はいかに。

 ――が。


「……」


 端的・簡潔・即答の三拍子がデフォルトなミコトがなぜか沈黙。スラギはにこにこしてるだけ。


「……」


 そのまま沈黙、十秒。

 騎士団長たちはかたずをのんだ。

 そしていよいよミコトが口を開き、出てきた答えは。



「考えたことがないな、そんなことは」



 答えが出たっていうか答えはなかったらしい。

 騎士団長たちは脱力した。


「大体、今まで近しかった人間など数えるほどしかいない」


 ミコトはきっぱり言い切った。いや、分らなくもないけども。


「ミコトさん、ついこの間も求婚されてたじゃねえか……。それでなくても、一人や二人、居るだろ?」


 確かに自由人につきあえる人間は少ない。しかし、皆無ではないはずだ。騎士団長たちのように。

 そして旅していたとはいえ、他人に興味がなさそうだとはいえ、ミコトもスラギも二十代半ば。恋愛経験が皆無なんてそんな馬鹿な。


 が。


「……求婚……? ああ、そういう手合いは男も女も確かに今までにもいたが……」


 やはりいたらしい。

 しかし、そこまで言って首を傾げるミコトは。


「気が付いたら消えていたな」


 うん、と真顔で結びました。


「消えた……?」


 消したのではなく?


 四人の頭に疑問符が浮かんだ。


 瞬間。



「「「「はっ」」」」



 気づき、ばっと黒ではなく金の、自由人を見た。

 金色の自由人はそれはそれはいい笑顔で笑っていた。


 お前いったい何をした!?


「あはっ。俺はミコトしか見てないから~」


 爽やかな言い草だった。


 ミコトには「そうか」とか軽く流されているけれど揺らがない鋼鉄の愛がそこにあった。

 四人は確信して戦慄する。



 下手人! 下手人がここに居る!

 ミコトが恋愛に疎遠だった原因が爽やかに笑って座っていらっしゃる!



 ミコトに惹かれる人間は、それこそ星の数ほどいたに違いない。ミコトは優しい。自由人だがタイミングさえ合えばデレてくれる。加えて滅多といない美貌の麗人だ。薬師で魔法も使えて有能だ。

 これでモテないはずがない。外見が男でも女でも。


 しかしそれを華麗に灰燼に帰す金色の悪魔が横にいた!


 奴が消したのだ。ミコトを狙う輩をきれいにお掃除したのだ。そしてミコトが基本的に興味がないのも相乗効果を生み出していたのだろう。


「まあ、自分の性別を気にしたこともないし、好きになったやつが恋情を向ける相手なんだろうな」

「だよね~。だから俺はミコトが大好きだよ~」


 ミコトは分析しているけど、それより騎士団長たちは戦慄していた。

 だってこのままだとミコトの選択肢は一択しか残らない。


 ミコトの興味がないうちに外堀を埋める……スラギ、恐ろしい子!





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