これでも部下ですが何か
そして。
国王は顔面蒼白になりながらも三白眼で騎士団長を脅してまでとッ捕まえたスラギに、その命を下したのである。
が。
それに対するスラギの答えはこうであった。
「やだ~」
真顔だった。
「まさかの即答」
国王は思わず立ち上がって瞬間フラッと立ちくらみ。スラギの後ろでは騎士団長が頭を抱えている。
「嫌にきまってるでしょ~。なんで俺がそんなことしなきゃいけないの? 面倒臭~い」
ひらひらっと手を振るとさも面倒くさそうに溜息をつくスラギ。
「それでも騎士か、臣下か、お前に人としての情はないのか!」
眩暈をこらえて涙目で叫んだ国王、威厳はいったいどこへやら。
スラギはそれでも「え~」と特に心動かされた様子などない。
そんでもってそのスラギの背後では、騎士団長が頭を抱えて蹲っている。
「お願いだからせめて考えんか、思考せんか、即答却下!」
「……」
喚いた国王、黙ったスラギ、間は三秒。
で。
「やだ~」
「考えた挙句の拒否!」
しかも三秒で思考は終了していた。騎士団長はスラギの背後で膝を抱えて鬱にはいっている。
国王はとうとう玉座を降りてがしりとスラギの肩を掴む。
「命令ではない、懇願なのだ!」
だが、しかし。
「だって俺、したいことしかしたくないし~」
つまり国王の懇願は『したくない』。
どこまでもゴーイングマイウェイ。
しかもあたかも己が一番正しいかのような真顔。
考え直す余地すらなかった。
「「もうこいついやあああああああ!」」
雑巾を裂くような汚い悲鳴が国王と騎士団長から上がるのであった。
「お願いだから考え直さんか? そうだ褒美、褒美をやろう」
「名誉なことだぞ、騎士としての矜持くらいあるだろう、な? な?」
国王と騎士団長の二人がかり。
しかしそれでもスラギはスラギである。
「え~、でも俺旅したいし~」
「こんな時まで欲望が優先! いいだろう、これも旅みたいなものだ!」
願望を口にしたスラギに騎士団長が叫ぶ。
「ええ~、旅と『御守り』は違うでしょ?」
「違わん違わん! ついででいいから! ちょっと同行者が増えるだけだから! 面倒掛けんよう言っておくからああああああ!」
珍しく正論めいたことを吐いたスラギにぶんぶんと顔を振ったのは国王だった。
そんな二人に、さすがのスラギも少しは考えたらしい。
条件を出したのだ。
「じゃあ……」
もちろん、それに国王と騎士団長は頷くしかなかったのである。