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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
ユースウェル王国内編
36/254

通訳の方はいらっしゃいませんか

※シリアス注意!

の、はずが、やはり……。


『俺はミコトが、ホントに大好きだよ? もしミコトがいなくなっちゃったら、ぜーんぶ壊しちゃうくらい』


 そんな怖いこと言い出した部下は現在にこにこ笑っていらっしゃいます。

 戦慄である。


「……え、幻聴?」


 思わず騎士団長の心の声が声に出た。しかし自由人は無情にも。


「あはっ。何言ってるの団長。大丈夫だよ、ミコトさんがいれば何にもしないから~」


 幻聴じゃなかった。そして何この自由人ヤダ怖い。いったいどの辺が大丈夫?

 何爽やかに破滅の可能性示唆してるの。


 これか。騎士団長が先刻この男の笑顔に感じた恐怖の根源はこれなのか。


 え、自由人ってそういう生き物? ラブラブなのは知ってたけどそこまで? 笑顔で世界を破滅に導けそうなやつが言うとシャレにならないんだけど。


 ていうかミコトも? ミコトもそういう感じだったりするの?

 この自由人どもが筋金入りで世界に興味がないことは認知してたけど。

 その興味のなさは安全性の証明だったのにどうしよう。


 どっちもどっちでどこもかしこもおかしい彼らは二人とも、この世界やこの国を、ましてや誰かをどうにかしようなんて考えない。だってそんなこと意味がない。どうでもいいんだから。


 そう思ってたんだよ? 間違いだった? 勘違いだった? お互いを失ったら残ったモノはクシャってしてポイってしようと画策してた?


 騎士団長は大いに焦った。

 が。


「あはっ、やだな団長、ミコトは簡単に死なないし~。それに、俺がいなくなってもミコトは何にもしないだろうから大丈夫だよ~」


 そう言ってポンと騎士団長の背中を叩くスラギ。

 ……うん。


 その情報は笑えばいいの? それともミコトとの温度差に同情すればいいの?


 確かにミコトは殺しても死ななそうだけど!


「……えっと。なら、ミコトさんならどんな反応すると思うんだ?」


 迷った挙句当たり障りのなさそうな疑問を返してみた。

 すると。


「ん~。『そうか』ってため息つくんじゃないかな~」


 スラギの中でミコトは薄情者だった。


 いや、その光景騎士団長も言われた瞬間脳裏に浮かび上がったけども。

 なんて一方通行な愛。

 というか自分で言ってて悲しくならないのかスラギは。……ならないんだろうな笑ってるし。


「そ、そうか……」


 思わず目を逸らしてそう返す。けれどそれでもスラギは笑っていて。


「だから、言ってるでしょ?」


 あはっと。


「ミコトはね、優しいんだって」


 ごめんちょっとよくわからない。

『優しい』の定義ってなんだっけ。


 そりゃミコトは当たり前のように他者を助けられる本質を持っているとは先ほど気付かされたけど。

 首をわずかにひねった騎士団長、そんな様子にわかっていないのが分かったのだろう。スラギはうーんと、と指をひとつ立てる。


 で。


「例えばね~、目の前に死にかけてる人間がいるとするでしょ?」


 初っ端から過激なたとえぶっこんで来たなオイ。

 まあ進まないので頷いておくけど。


「その人にね、俺なら笑って『大変だね』っていうけど、ミコトならため息をついて『阿呆か』と言いながら手を伸ばすんだよ」


 ……。

 待って何の話? 自分は人でなしですと主張したいの? そんなスラギと比べればミコトでなくても菩薩です。


 ミコトの優しさじゃなくてスラギの鬼畜さが煌めいてる件について。








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