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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
人間大陸編
249/254

それが自由人という存在です


 そうして、なんやかんやあって。


 無事命は拾いました。


 特に希少魔族五人組の追求がすさまじかったけど、ミコトに名前を呼ばれる=ミコトに大切にされていることの証明であったため、抹殺はされませんでした。


 ミコトの威光すごい。ミコトのせいで責められたんだけど。どうしよう素直に感謝できない。


 だって抹殺されなかったけど根掘り葉掘り聞かれてノイローゼ寸前だったジーノ。何あの執念蛇のよう。


 もちろん話すには微妙に過ぎたミコトの正体だとか世界の成り立ちだとかは濁しに濁して逃げ切ったジーノをほめてほしいけど誰も褒めてくれなかった。後にミコトに「アンタは本当にクソ真面目だな」と言われたぐらいだ。


 あれはけなされたのだろうか。でもミコトの目線は柔らかかったので満足することにした。自由人の愛情表現は歪んでいるのだ。


 まあ頑張ったことを褒めてほしかったのも本音だが、結局は別に隠さなくとも意にも介さないのがミコトたちであることを判っている。

 話さなかったのは、ジーノの自己満足だ。


 その話をした時は、ミコトが久方ぶりにアレドア邸に訪れていた時だったので、その日はジーノの好物を振る舞ってくれてサロメと共に舌鼓を打ったし、それでいい。まあ若干胃袋を掌握され過ぎている感が否めないが、今更だ。どうしようもなかった。


 さて、ここで、その後の話を少ししよう。


 あの時、詰め寄られるジーノをしり目にいつの間にか姿を消していたミコトは、見事のそのまま行方をくらました。


「むう、追いかけっこだねえ~」

「行くか」

「一緒にはいかんぞ、邪魔臭い」

「こっちの台詞~」


 そんな会話と共に窓からいち早く飛び出していたのはもちろん自由人眷属三人組で。

 とっても、楽しそうだった、と言っておく。


 なお、その他魔族組は追いかけなくていいのかと苦し紛れにジーノが問うたところ。


「行ってしまったなら、ミコトは吾輩たちごときには捕まえられないでござる」

「捕まえられるとしたら、あいつらだけなのだ」

「でもお、ミコトちゃんは優しいから、また会いに来てくれるわあ」

「それを待つもん! 時間は、いっぱいあるもん!」

「それがミコトと、妾たちの関係であるでのぅ」


 希少魔族五人組の言い分はそれで。


「できればミコト様は魔国に留まっていただきたかったですがの、無理なのは最初から判っておりました」

「ここで私たちまで追っていけませんし。人間の国ですからね」

「ミコト様は逃げているわけではないであります。だから陛下ならそのうちミコト様に追いついて、ミコト様に魔国に追い返されるであります」


 魔王側近三人組の言い分はこれだった。


 思ったより常識寄りの発言に、自由人が離れたからだろうかと思ったけど最後の側近・アスタロトの信頼はどうなんだろうか。ヤシロはミコトに強制送還される荷物決定なのだろうか。もしかして今までにもよくあった光景なのだろうか。


 言いたいことはあったがそれよりも、と責めたてられてそれどころではなくなった。


 そしてそれを乗り切れば案の定ものすごく忙しくなって、東奔西走。しかし友好条約締結に際してヤシロの姿を見ることができたのだから、確かにアスタロトの信頼は正しかったのだろう。


「うるせえ、仕事でもしてこい」


 と吐き捨ててヤシロのみ魔王城に強制転移させるミコトの姿がありありと浮かんだ。

 それを待ち構えて魔族たちが軍隊総出で捕獲・拘束・連行する光景も浮かんだ。そう言えばヤシロとの出会いはそんな衝撃的光景だった、と懐かしく思った。


 それからまた、ミコトを追いかけて行ってしまったスラギとアマネだが、こちらもこちらで冒険者ギルドで『不死鳥が何か怖いのと一緒によみがえった』という慟哭を聞いたので元気にやっているんだろうというのはすぐに分った。


 ちなみに王城内のスラギの部屋をのぞいてみた所、きちんと騎士服と騎士団支給のサーベルが置かれていたので、本当に特別騎士をやめて冒険者、というよりは『由民』に戻ったのだろう。


 挨拶もなかったし許可もしていない身勝手ではあるが騎士服を置いていく分別はあったらしい。非常に意外である。きっと気まぐれに違いない。


 ……なお、これで他国に対する『スラギ』という抑止力はなくなったわけだが、『同時に世界で最初の魔国との交友国』というカードを手に入れたユースウェル王国は特に揺るぎはしなかった。


 ていうか、スラギが離れてここぞとばかりに他国が何か動くかと思ったら、ユースウェル王国から離れたスラギが派手にやらかしすぎて「なんで捕まえておいてくれなかったんだ」とあれそっち? な恨み言を言われている。


 自由人は何処に行っても自由人なのはもうあきらめているが自重してくれないだろうか。彼らの辞書に自重という言葉はやっぱり存在しないんだろうか。


 ……ともあれ。


 去って行っても自由人は自由人で、騒々しいまま、五十余年の時が、過ぎた。






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