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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
人間大陸編
241/254

幸せそうではあります


 強い……強い心が欲しかったんです。

 そう……そんな心は、着々と鍛えられ、培われてきたはずだったんです……。


 が。


「「「「……」」」」

「「「……」」」


 ユースウェル王国友好使節団組、魔王側近組。

 七名はそれはそれは絶望に染まった顔で、仲良く床に崩れ落ちて頭を抱えた。


 だって目の前に広がる悲惨な光景は、鍛えられた心でさえ拒否をする。


「吾が君! さあ此方へ、茶の用意を整えております!」

「いいえミコト様、じきに昼、食事の用意を!」

「ミコト様、御髪に乱れが!」

「吾が主!」

「ミコト様!」

「おい貴様下がれ、ミコト様には私が、」

「こら、ミコト様はスラギ様方と談笑中であるぞ! 控えよ!」

「ご友人の方々もいざ!」


 彼らはキラキラしていた。

 とても、生気に、あふれてた。

 キラキラと、生気をあふれさせ、たった一人に、群がっていた。


 そして、


「うるさい、黙れ」


 その群がられていた本人のたった一言で。


『はっ! 御意!』


 背筋を伸ばし整列した一糸乱れぬ動きだった。

 彼らは何処ぞの軍隊ですか? いいえ、彼等はセルジア皇国皇室御一行です。


「「「「……」」」」

「「「……」」」


 ジーノたちは、涙目だった。


 ……何が……何が、あったというのだろう。あの……ホワイトニング君の中で、いったい、どんな『話し合い』が行われたのだろう。


 嘗て子種をばらまきまくったという色にぼけているが、それでも今まで君臨し続けているセルジア皇国皇帝。

 その正妻である皇妃は皇妃で、社交界を裏から支配する女傑。

 皇太子も二人の血を受け継ぐように利を求める人物。

 そしてセルジア皇国の皇室、だけではなくセルジア皇国貴族は総じてプライドが高いことで有名だ。その歴史の成り立ちが古い国であることがその一因だろう。


 それが……そんな集団が……。


 確かに彼らは自由人の対処法を知らなかった。いろいろと追い詰められて短慮を起こし、それを暴走させたのが今回の情報漏洩騒動だろう。

 あるいは、自由人を手中に収めさえすればそれこそ戦争を意図的に起こしてユースウェル王国を支配下に置こうとしていたのかもしれない。


 そう、よく考えれば対外的には次期皇帝最有力候補とまで言われていた第四皇子セドリック=アマネがあのやる気のなさの挙句まさかの軽々とした離脱。セルジア皇国皇室の内部事情や権力図は荒れていたに違いないのだ。


 割と、かなり、すごく。自殺願望があるとしか思えないこの情報漏洩騒動ではあるが、それでも彼らは一国の権力者たち。


 そう、いろんな事情を踏まえて頭の出来が残念なことになってしまっていたとしても、プライドの高さは変わらないだろう。


 それが……!


「ミコト様、美しい……!」

「ミコト様の実験台にならなります、わたくし!」

「ご主人様、どうかなんなりと命令を!」


 目を覆う光景である。

 黙れと言われたなら黙っていてくれないか、ジーノたちの為にも。


 ……なぜ、どうして、道を歩けば信者を増殖させるんだミコトよ。


 割と、だいぶ、ものすごく。ミコトの言動には恐怖しか覚えないことが多いというのに、それでも信者がミコトを妄信するのはなぜなんだ。

 そしてミコトが良ければすべてがどうでもよくなるという狂信ぶり。すごく怖い。


 だってほら、シレッと自由人に混ざってる元皇室一行の一員・アマネにもミコトの連れというだけで敬意を払ってるよ皇室御一行。魔族もいるのに気にしてないよ皇室御一行。なんなの実は見えてないの?


 なに? 何がそんなに彼らを惹きつけるの?


 そりゃミコトは魅力的だ。美しいし、言動はひどいことも多いが根はやさしい。容赦はないが無駄なことはしない。暴言は吐くが自由人や希少魔族五人組という強靭な肉体を持つもの以外に暴力をふるうこともほぼほぼないと言える。


 でも、でもね、自由人って自由すぎるから、自由人なんだ。その自由さはね、魅力と相反して相殺どころか打ち勝つとジーノは思う。


 ていうか『お仕置き』されたのだろうにどういう事なんだ。セルジア皇国皇室御一行は揃ってマゾヒストなのか。確かにアマネはミコト限定で極度のマゾだけど。


 涙目で、ジーノたちは視線をかわす。キラキラしている皇室御一行、キャッキャしている自由人たちと希少魔族五人組。


 視線での会話の末、そっと手をあげて発言の意を示したのは、やっぱりジーノだった。







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