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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
人間大陸編
235/254

端折られました


 腐乱死体の目をしてヤシロを見つめていたジーノたち、しかしそんな淀んだ空気を切り裂くように声が一つ。


「話は済んだか? なら、行くぞ」


 どこに?


 声まで美しい何様神様ミコト様ですが、他人に異論も同意も疑問もはさませない即断即行。

 問いただす間もなく絶賛現実逃避中のジーノおよびその他一行を連れて再びの転移で着地した先はお城の中でした。


 なんでお城の中とわかるかっていうとまず足元に固い石の地面があります。超安心。もう離れたくない。

 そして次に目の前に見覚えのある老爺とそれを取り囲む、やっぱり見覚えがあるうえにわりと悪趣味寄りの豪奢な衣装をまとった方々がおられます。……見覚えのある老爺の頭には輝く王冠(・・)が。


 なるほどどうしよう展開が早い。


 三周回って冷静になったジーノは思わず悩んだ。


 なぜならば見覚えのある王冠爺とその御一行はセルジア皇国皇室御一行だったからだ。


 とりあえずなんで皇室御一行がこんなところで、護衛もいない部屋の中一堂に会しているのかが不可解なんだけど、ちらっと自由人四人組を見たところ愛らしく金の自由人にウィンクかまされたので、ああミコトさんですかと流れるように理解した。


 恐らくは顔も知らなかったであろうセルジア皇国皇室御一行を発見・捕捉・強制転移。ついでにそれ以外の邪魔なものは排除したようだ。どうやって見分けたんだろうというのは闇に葬った方がいい愚問だから気にならなかったことにしておこうとジーノは決めた。


 やっぱりどうしよう展開が早い。


 セルジア皇国皇室御一行は全く状況を理解できていないうえに目の前に現れた自由人という名の美形に圧倒されて放心寸前。しれっとアマネ(血縁者)が混ざっていることにすら気づいていないようだ。


 かくいう此方の陣営も、ユースウェル王国友好使節団組は呆然、魔王城側近組はひきつり笑い、希少魔族五人組は興味津々、自由人四人組は談笑、……意外と余裕あるな。


 いや待て落ち着こう。こんなところでミコトはいったい何をするつもりだ。


 目の前にはいまだ放心状態のセルジア皇国皇室御一行。基本的にミコトを取り込もうなどという愚かにもほどがある行為を行ったアタマは皇帝であるとして、そのほかはせいぜい皇妃や皇太子が一枚かんでいた可能性があるというレベル。首謀者は諜報部や軍部、宰相辺りが妥当だろうとふつう思う。


 なのにその辺りはスルーしてなんで皇室御一行を一網打尽にしたのだろうか。

 ……面倒臭かったのだろうか?


 護衛を排除しておく辺り抜かりがないのに、面倒臭いから現アタマと未来のアタマを叩いて終わらせようという変なところでずぼらが見え隠れするミコトは本当に鬼畜だと思います。


 だって皇子妃とか皇太孫とか混じってる。放心状態でも皇帝辺りはいい加減アマネとその横の金髪・黒髪に気づいて真っ青になってるから自業自得だけれども全くなんのこっちゃかわかっていない面々が半数以上見受けられるので、彼等は割ととばっちりに近い形で此れから恐怖のお仕置きを受けようかという事態に陥っている。いや、一網打尽と言いつつ子供は混じっていないようで、下は大体二十歳までだから一応分別はあったのか壮大な気まぐれか。


 きっと気まぐれなんだろう。なぜならばミコトさんだからだ。


 それはともかく。


 部屋の中に広がるのはカオスだった。


 だって見わたせば、此処に自分たちはいませんと言わんばかりに息をひそめるユースウェル王国友好使節団組。


((((明らかにこちらが不法侵入な国際問題は御免蒙る!))))


 頭を抱えた魔王側近組は眩暈を覚え。


(((仕事が増える……)))


 希少魔族五人組は高みの見物を決め込んで。


(((((ミコト直々の制裁!)))))


 あまりにも楽しそうな自由人どもは談笑しつつ。


((((これが終わったら昼だな))))


 誰一人としてセルジア皇国側の心配をしていない不法侵入者たちは全員そろってわりとフリーダムに酷かった。


 しかしここでかつり、一歩ミコトが踏み出して。

 瞬間、理解出来ない放心状態から脱却したセルジア皇国皇帝、大きく口を開けてもちろん声を、


「だれk」


 上げようとして、消えた。

 それはもう見事に、消えた。


 むしろ皇室御一行が瞬時に全員消え去った。



 何が起こった。



 ……いや、一瞬、何か黒くて長くて禍々しいものが、パッと伸びてぱっと引っ込んだのが、見えた気がした。それは、ミコトの方からだった気もした。ぎぎっと軋む首を回して、みた。


 そうすればあら不思議、そこには肩にちょこんと、黒くて禍々しい皮膚に毒々しい赤い斑点がぼつぼつと浮き出た生き物を乗せた、ミコトさんがいたのでした。







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