表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
人間大陸編
226/254

見なかった振りで本当になかったことになればいいなと思っています


「「「あー……」」」


 情報漏洩された張本人とはとても思えぬ冷静な指摘になぜか自由人どもがそろって理解を示していた。


 なぜ理解する。

 そしてなぜ怒らない。


 己の情報を隠す気はあんまり見受けられない気ままな自由人どもではあるが、だからと言って自身の情報を他人に探られてあまつさえ漏洩されていては怒り心頭、もしくは嫌悪の一つも見せるのが通常だ。


 なぜ平然としている。ミコト至上主義の三人までが、なぜしみじみとしている。


 そして最大は、……いや、何がどうなってそこ(・・)がクロと思い至ったのかはミコトのミコトによる反則能力の数々のどれかが威力を発揮したのだろうということにしておいて、問題はそこ(・・)がセルジア皇国だという事である。


 視線はそう、騎士・イリュートから見事外れて一人の男に吸い寄せられる。

 地の底から響くような低音でジーノが叫んだ。




「アマネさあああああああんんんん!?」




 どおいうことかなああああ!?


 その場のおよそ全員の目が語っていた。


 なぜならば何を隠そうともしていないけれども、覚えておいでだろうか。この赤茶髪の男、左目に傷を持つ着物姿の美形、常識の片鱗を感じないこともないけれどもやっぱり駆逐された跡地しかないんだろうこの男。


 セルジア皇国第四皇子である。

 元が付くが。


 曾ては王女・リリアーナの婚約者候補と囁かれた男であり、時期皇帝と名高かった皇子である。

 出会ってさほどもたたぬうちに露見したその正体、しかしあっけらかんとその立場「やめてきた」とのたまったのは衝撃的な記憶の一つだ。そんな個人の一存でやめれるものだったのね皇族、と遠い眼をしたジーノたちは何も悪くなかったと今でも思う。


 が、ここで。


「そなたの母国であったかえ?」

「そうだったっけー? でもアマネ、潰してきたんじゃなかったのー?」

「そうよお、アマネちゃんがここに居るんなら、やっちゃったんでしょお?」

「アマネでも取りこぼすことがあるとは、思わなかったのだ。ではこれを機に消滅させるのを見たいのだ」

「楽しそうでござるな、ぜひやってくれ。我も見学するでござる」


 やだ、何か客人たちが言い出した。


 精霊の長・ソカリさん以下の発言内容はどうとればいいの? そのまま受け取って戦慄すればいいの? 彼らはアマネを何だと思ってるの? そしてこれから何が起こることを期待して目をキラキラさせてるの? 何にも楽しくないし、そして黄龍・イマさんは、疲れ切ってこの世をはかなんだオーラと期待に満ちたきらきらしさをどうやって同居させてるの? 器用すぎるわ。


 が。


「あー、それな。やろうと思ったんだけど、面倒くさかったから原形はとどめてる感じで放置してきたんだよ」


 やっぱあの時一網打尽にしとけばよかったなあ、あっはっはー。


 そうやって笑うアマネさんは心の底からそう思っているようでした。


 何が楽しいの? いや、そういえばそんなこと言ってたね、深くは追及しなかったけど怖かったから。


 そして見た目さほど気にしてない感じで飄々としている客人五人組を含め自由人たちは実は内心ブチぎれてたの? やっぱり大事な大事なミコト様を探ってくる分不相応な輩をこの世から抹消する気満々なの?


 そこから行くともれなく騎士・イリュートもこの世に別れを告げる未来しか残っていないのだけれどもその場合上司としてジーノはどう行動すべきか現時点では判断ができない。


 情報漏洩は、大罪だ。

 だがしかし洩らしたのが国の機密ではなくミコトのあれこれ。


 そしてセルジア皇国と一言に言っても『誰に』洩らしたのかはいまだ明らかにされていない。ぶっちゃけミコトのざっくり加減だと、『セルジア皇国に住んでいる友人に世間話で』の可能性もワンチャン、ある。ミコトの秘密っていうかこんな自由な方々と旅をして精神的に参っているんですという流れであったなら憐みしかないジーノである。


 まあ、ともかく。


 アマネを問い詰めてもどうせ「ちょっと何言ってるかわからない」という現実逃避必須なお話しか飛び出してこないだろうから心の平穏のために一度なかったことにしよう、と思ったのはジーノを含めた比較的常識の残っている面々である。


 自由人及び客人たちは実は切れているかもしれないが今すぐ惨殺行為に移行する気配は見受けられないのでこれも一旦見なかったことで大丈夫だ。


 つまり。


「イリュート、ミコト。俺たちにも理解できる、精神に優しい言葉で、説明を」


 視界から余計なものをシャットアウトして、ジーノたちはイリュートとミコトに視線を固定したのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ