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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
人間大陸編
223/254

社会的ヒエラルキーはあてになりません


 そして夜が明けました。


 ジーノが今朝、精神的疲労をため込んだ割にすっきりと目覚めたのは諦めがついたこととミコトに無理やり飲まされた『馬鹿に効く薬』が発揮しなくていい効果を発揮したのだと思われる。


 そして現在。


 ミコト作成の美味しい朝ごはんを自然な流れでご相伴にあずかって、何の疑問もなく応接室に移動した。


 現在室内にいるメンバーを説明しよう。


 まずは自由人。ミコト、スラギ、アマネ、ヤシロ。

 仲良くじゃれあっている。いつも通りだ。時折閃光が走ろうとも、破壊音が響こうともいつも通りだ。何も問題ない。


 次にユースウェル王国友好使節組。騎士団長・ジーノ、王女・リリアーナ、侍女・サロメ、騎士・イリュート。

 ぎこちなくヤシロ手ずから淹れたお茶をすすっている。だからなぜ魔王が給仕をするのだ最高権力者よ、という突込みはそろそろ古い。


 それから魔王側近三人組。宰相・ガイゼウス、側近・アスタロト、近衛隊長・ファルシオ。

 魔王城組から外れて自由人組に紛れている主を死んだ魚の瞳をデフォルトに見つめている。昨夜は結局主を働かせることは出来たのであろうか。藪蛇になりそうなので口には出さない。


 最後に客人五人組。雪男・アリ、ユニコーン・オリ、世界樹の化身・ハベリ、黄龍・イマ、精霊の長・ソカリ。

 昨日の羞恥など忘れたように談笑している。厚顔である。おそらくそれぐらいの神経を持っていないと長い人生渡っていけないのだろう、心中微妙に察せるので蒸し返しはしない。


 ともかく。


 つまりは魔王城での個性的なメンバーが勢ぞろいである。

 なおここは昨日と同じ応接室。客人五人組によって歪み、自由人によって破壊された扉は修復済みだ、世界樹の化身殿によって。

 己の暴走が原因の一端を担っているだけあって無表情に黙々と修復作業を行うゴリマッチョ(着衣)という光景は割と印象的だった。


 それはさておき。


 この十六人で朝食からの移動。イマココだ。

 ユースウェル王国友好使節組と魔王城側近三人組は疑問符を禁じ得ない。

 なぜならばヤシロは友好条約を結ぶとは言ったものの詳細を部下に放り投げたからである。


 ではなぜ集めた。何の用だ。不穏なことか? 不穏なことなのか?


 信用などかけらも残らぬいぶかる視線が留まるところを知らない。

 なお客人五人組が談笑しているのは彼らにとってはミコトがいればそれで何も問題ないからだと思われる。


 ミコトがいたところで問題は大いにあるしむしろわりとミコトがいるからこそ問題が発生するような気がする。


 中身が神であろうとミコトの身分は一般人だ。王族でも貴族でも騎士でも元皇子でもなく魔王城勤務でも他種族長でも何でもない。

 なのになぜかミコト=神と知らないメンバーも何の疑問も持たずにミコトがこの場で最強と正しく認識している。


 生物としての本能だろうか。素晴らしい。


 ではなくて。


 ジーノは嫌な予感がしていた。


 集めたというよりは、正しく言えばミコトが言ったのだ。「あんたら、こい」と。ジーノたち、四人に向って。


 そしてミコトが来るなら自由人が来ないはずがなく、客人五人組もついてくる。その自由人には魔王・ヤシロが含まれるのだから側近三人組も来るだろう。仕事はどうしたと言いたいところであるが彼らの目下最重要事項は主君に仕事をさせることである。


 結論、別に集めてなかった。ジーノたちが呼ばれただけだった。自然な集結である。ただし拒否しないというミコトによって大所帯になった、これがアンサーだ。


 そして呼ばれたジーノたち。ジーノの脳裏には昨夜の「面倒くさいアレ」という発言がチラッチラしている。「面倒くさいアレ」はジーノたちに関連して「面倒くさい」らしい。


 どういうことだ。何が面倒くさいんだ。こんなことになるのであれば昨日停止した時間の中でお話を伺って心の負担を減らしておくべきであったと猛省するジーノである。


 しかし後悔先たたず。

 審判の時を待つのみである。


 そして。


「おい」


 ようやく、ようやく。

 じゃれ合いなのか殺し合いなのかそろそろわからなくなってきた自由人のやり取りから思い出したように、ミコトはこちらに声を投げ。


「お前、こそこそ鬱陶しい。面倒くせえから、やめろ」


 美麗な無表情で、言い放ったのです。

 その先には。


「……?」


 ぱちりと瞬く騎士・イリュートがいたのだった。







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