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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
人間大陸編
222/254

ずっと待っていましたが、なにか


 まとうか。


 何言い出した。何言い出したんだこの人。


 なんでそんなに切り替えが早いの。ぱあっと花が咲いたような可愛らしさを一瞬で脱ぎ捨てて美しい御尊顔で何かカタをつけなきゃならないものがあると堂々宣言したんだけどこの黒髪麗人。


 ……。

 いややっぱ待たなくていい。そのままどこへでも行ってほしい。そしてジーノは置き去りにしてほしい。


 だってやだ、知りたくない。自由人が『面倒臭い』と評する『あれ』が何かなんて知りたくない。


 時間が止まっていらっしゃるということは睡眠を確保する暇はあるという事である。

 不覚にも口説き落とされてまんざらでもない己は諦めるので、ベッドに帰してくれないだろうかと思うジーノだ。


 おじさんは、疲れました。

 主に心が、疲弊しています。


 ので。


「俺は『ついで』はいらないから、休みたいかな」


 素直に、素直に。主張してみたジーノ。

 すると。


「まあ、そうだな」


 頷かれた。

 ……頷かれた!?


「えっ」

「は?」


 意見が通ったことに思わず正直な驚愕の声をあげたジーノ、間髪入れずに訝った声を返したミコト。


 全面的にミコトが正しくジーノが悪い。

 それは判っていた。


 が。


「悪い、『あんたは阿呆か』が返ってこない未来を予想してなかった」


 ジーノは、正直だった。


「言ってほしいのか」

「いいえ言ってほしくありませんけれども」


 己のセカンドネームかと錯覚を起こすほどに言われ続ければ未来予測として大部分を占めても仕方ないと思うんだ。


 つまりはそれほどジーノがミコトに阿呆呼ばわりされてきたという事なのだけれども。そして阿呆呼ばわりされるようなことをやらかしてきたという事なのだけれども。


 ともかく。


「ミコトの決が出たということで、時間を正常に戻して休みましょう、そうしましょう! 俺をここから出してくださいヤシロ様!」


 意見を翻されないうちにパンパンパンと手を打って腰を上げるジーノ。目を細めながらも仕方がないなとでもいうように息をついたミコト。


 いたたまれないからその小さい子供を見守るが如き視線をやめてほしい。

 ……やめてくれないかなこれでもジーノの方が年上だから。


 だがしかしジーノは休みたかった。

 だから、反論はせずに、ミコトとヤシロを、じっと見た。

 そうすれば、まあ自由人と言えども生身の体、休眠は一応、多分、きっと、必要であったのだろう。

 動き出してくれた。


 が。


 ……あまりに長い時間、こうしていたので、忘れていたのだ。本当に、忘れていただけだったのだ。


 だってまさか思わない。


 ヤシロが己の執務室にかけた無駄に強固な結界を解き。

 ミコトが指先ひとつで世界の時間を進めた、瞬間。





「「「「へ、い、か~~~~~~~!?」」」」





 此処は地獄でしょうか。


 いいえここは魔大陸魔都魔王城魔王執務室。なるほど字面を見れば『魔』が四つも入っているという禍々しさ。そんな部屋を一歩外に出れば凶悪面が雁首並べて叫んでいました。


 その先には、黒ではなく金でもなく赤茶でもなく。

 それは白い白い自由人が、いました。


「……あっ」


 やべって顔した、ヤシロ。


「「「「つ か ま え た」」」」


 ヤシロ捕獲隊の方々は、カラフルな体色をさらに鮮やかに染め上げて、微笑んでいました。

 そう言えば、ずいぶんと前のことに感じても時間は止まっていたのだからつまりは何の齟齬もなく、


 仕事を放棄した魔王城最高責任者は、灯台下暗しの執務室立て籠もり中でした。

 ずっと、追いかけられていたのです。


 しかしそれでも逃げようとしたヤシロ。素早かった。風かと思った。

 まあ、ただ一言ミコトに「うるせえから、働け」と言われていいお返事をしてたけど。

 安定のミコト至上主義。揺らがないぶれない。


 ……そんなヤシロに向かう捕獲隊の方々の空気が、重力感じるほど最悪だったのは、仕方ないと思います。





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