見た目は考えてはいけない要素です
大分間が開いてしまって申し訳ありませんでした(;''∀'')
納得したような顔でキャッキャと談笑しながら騎士団長から殺気を逸らした金髪たちは局地的地震が起きているかの如く笑顔で震えていらっしゃいました。
全然大丈夫じゃない状態にこの自由人どもを記憶だけで追い込めるなんてやっぱりミコト様は最強だと思います。
ぎゅっとしてる。お互いの手を、ぎゅっと握ってる。むしろ右からスラギ・ヤシロ・アマネでくっついてるわけなんだけどその右と左、つまりスラギとアマネが騎士団長の服の裾をぎゅっとするものだからいい歳こいた男が四人で輪が出来ました。
在りし日にどんな目で彼等を睨み据えたんだミコトよ。
ミコトに与えられるものならそれが暴挙であろうと愛であると豪語する限定的すぎるドのつくマゾヒストどもが小動物のようではないか。
……うっかりかわいいとか思った騎士団長は末期というよりは脳みそが腐りかけているのかもしれなかった。
ともかく。
「何の話だったっけ」
割と衝撃的な話題でストップしていたと思うけれども上塗りされて見事に塗りつぶされた騎士団長はすぐに最前の話を思い出せなかった。
が。
「グレン爺さんが俺の前神だったという事実についてだが」
ミコトは冷静でした。
騎士団長は手を打った。
「ああ!」
そう言えばそんな話だったと思い出した。
そして深く納得した。
神であるミコトとそれにくっつくその他自由人どもの師匠的存在が人間だったら逆に驚きである。
そもそも空から降ってきたのが出会いだとか、一週間ほど行方をくらまして発掘されては連れ戻されるだとか、己の寿命を悟って元気に遺言を残して天に召されるとか、グレン翁は何も普通じゃなかった。
グレン翁が、ミコトの、先代神。
なるほど。
……あれっ。
「そうするとグレン翁はミコトのお父さん的な」
「あんな爺が親で堪るか」
「全否定」
食い気味で否定されてちょっと慄いた騎士団長である。
そんなに嫌なのか。名前で呼んでるし懐いていたのではないのか。……生物学的に親子ではない、というのはまあ多分そうなのだろう、きっと。神に年齢とかが当てはまるかは微妙だし、ミコトは己の父親を知らないというか興味のかけらもないから絶対ではないと思うけど。
いやでも生物学的には違っても、魂というかそれ的には息子になるのでは。……それをいえば生物全て神の息子なのだろうか?
……うん。
その話題は理解の範疇外であると結論が出た。むしろ理解出来たら出来たでいろいろ複雑な感情が湧き出てきそうなので考えるのをやめた騎士団長。
「いや、でも一応幼少期ミコトとスラギの保護者ではあったんだろ?」
引き攣りながら言ってみる。
が。
「あんたは阿呆か。あれが保護者の器のわけがないだろう。出会ったときから俺が保護者だ」
グレン翁と出会ったときのミコトさんは十にも満たない少年ではありませんでしたか。
騎士団長の記憶が正しければミコトは七つだったはずである。
なんで七つの子供に保護されてるんだ爺よ。
そして一応仮にも元神に対して『保護者の器のわけがない』と言い切るミコトよ、いったいグレン翁があなたに何をしたというのだ。
「飯も風呂も掃除も連れ戻すのも破壊の後始末も分からん行動の後始末も分からん制作物の後始末も初めから俺がやっていた」
「何という出来た保護者」
後半後始末しかしてないけど。
七つの子供になにさせてるんだ爺よ。
むしろミコトに出会うまでどうやって生きてきたんだ爺よ。他者の慈悲か。人間社会の温かみはこんなところでわかりたくなかった。
ていうかミコト、スラギを拾ってグレン翁を拾って、アマネを拾ってヤシロに懐かれたのか。
…………。
ミコトは、あれか。
「四児の母」
瞬間。
「自分より年上の息子なんぞ要らん」
間髪入れずに返されて、騎士団長はそのメンバーの中でミコトが一番年下である事実を、思い出した。そのうち白い人と爺な人は見た目より断然爺だったことも、思い出した。
そんな息子は騎士団長も要らないと思った。