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黒の止まり木に金は羽ばたく  作者: 月圭
ユースウェル王国内編
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早急に癒しを用意せよ


 ともかくも。


 その後、軽すぎるスラギを何とか誘導尋問した結果、ミコトは失われたはずの神聖魔法の使い手で、スラギと同じく人間としては規格外の魔力量を誇っているという事実が判明。


 というかミコトにしろスラギにしろ、己の魔力の限界値自体知らないとか。

 かたや魔族にもほぼあり得ない全属性使いで、かたや伝説の魔法使い。

 そんでもって双方仲良く魔力量チート。


 ねえどうして君たちは『人間』に所属しているんですか?


 しかもあの後、とても面倒臭そうなミコトやスラギに、「いつから使えるの」「なんで使えるの」と問い詰めてみたらたった一言、


「最初から使えた、原理なんぞ知らん」

「右に同じく~」


 との回答を得たんだけれども何なのやっぱり神様が何かを間違えて生み出したの?


 ちなみに。

 スラギのおかしさが露呈したのは王国特別騎士になってから後である。

 もちろんその理由は騎士団全員が一度は殺意を抱いたあれである。

 ケラケラ笑いながら多種多様な魔法を使って逃げる、あれである。


 だからなんでそんな便利に活用するの。隠すという発想は存在しないの?


 まあ、全属性保持ということが発覚してから勿論国は今まで以上にスラギを囲って逃がさない様にしようとしたかったんだけれども無理だったというのが現実だけど。

 よく考えなくてもスラギにとって隠す意義が存在しなかった。泣きたい。


 ともかく。


 そんなこんなで、スラギはその能力と実力から拝み倒して王国特別騎士にとどまってもらっているけど、ミコトの貴重さはスラギ以上だ。

 だって伝説。便利魔法じゃなくて伝説の、幻の魔法。

 国単位で囲って軟禁されてもおかしくないレベルである。


 まあできないけど。

 やっぱりできないけど。


 なんでってミコトはスラギに溺愛されているので。


 ミコトの戦闘能力は未知数ではあるが、その後ろにスラギがついている時点で無理強いなど不可能だ。そしてスラギがミコトを売ることはないだろう。

 だってあの自由人がミコトに対してはわんこの様相を呈している。

 その理由に『おいしいご飯』が含まれていることをさし引いてもわんこである。

 まあミコトの『おいしいご飯』は……あれだ。


 大変おいしゅうございました。


 もくもくとミコトが完成させた熊肉料理を食べた瞬間とりこになった。舌が肥えているはずの王女でさえも魅了されていた。

 あれからなんだかんだ言いつつ数日たっているのだが、今では毎食自炊。ミコトの手料理オンリー。


 完全に餌付けされている。


 無表情から生み出されたとは思えない絶品の数々。かの黒き麗人の手は神の手であった。

 くそ、美形で薬師で魔法チートでおまけにプロ顔負けの料理の腕。


 ミコトの欠点は何処だ。

 常識がないことか。


 欠けてはいけないものが欠けていた。


 神よなぜ一思いに完璧な人間にしておいてくれなかったのか。


「……なんか、もう大抵の事では驚かなくなってきた……」

「そうね……。彼らを見ていると、実は私たちが可笑しいのかと不安になってくるわ……」


 騎士団長と侍女・サロメの乾いた会話の一端である。

 魔王への友好使節の中で最も大人な二人。

 最も常識的な二人。

 彼らは疲れ果てていた。

 主に精神面において。


 もともと精鋭と言いつつ難解すぎるメンバーではあったのだ。

 王女・リリアーナは当然箱入りで、何かと世間知らずな面があるし。

 専属騎士であるイリュートは無口で何を考えているのか今ひとつわからないし。

 この二人だけでも通常ならば割と苦労することも多いだろうに、それに加えて王女と騎士が背景に成り下がるほどの個性の持ち主が二人である。

 大人で常識人、有能と定評のある二人にも手に余る。あまりまくる。

 二人はぽつりとつぶやいた。


「「常識、捨てようかな……」」


 彼らの瞳は疲れ切っていた。











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