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マインドコントロールパネル  作者: 小沢 健三
第5章 “開戦”
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5-5 核廃棄物

岩井警視正に折り返しで電話をかけると、福島原発から核廃棄物が盗まれたとのことらしい。

岩井警視正が急いで事務所にやってくるという事で、アラタは純哉とともにタクシーに飛び乗り、事務所へと戻った。



「それで、どうしてその核廃棄物盗難が“心の鐘”によるものだと?」


「警視総監だ。前にあんたが言ッてたろ、佐野警視総監が心の鐘に抱き込まれてるッて。こっちでも色々調べてみたがどうも臭い。俺の勘からしたらほぼ黒だな。」


「で、その佐野警視総監が関わっていると?」


「あぁ、動きが遅すぎるんだ。福島原発からの警察への届け出が発見後2時間もしてからだ。で、警察は道路封鎖を行ったが、輸送に使ったと見られるトラックを発見できてねェ。警察に連絡があってからも、なんだかゴタゴタがあって道路封鎖が完了するのに4時間も掛かってるんだ。発見から6時間。事件の重要性を考えると、いくらなんでも遅すぎる。で、ちょっと探ってみたところ、どうやら佐野のオッさんがゴネたらしい。」


「なんてゴネたんですか?」


「まァ逃走ルートを正確に割り出してそれから動くとか、そんなとこだ。一見それっぽい様にも聞こえるが、6時間も経てばとっくに逃げてると考えるのが普通だわな。それに、福島から南に向かう方面の封鎖が特に遅れた。普通に考えりャ東京方面に向かう可能性が高いってのに、北や西にばかり人をかけて、南はお留守だったってェわけだ。あと、海もだ。海上保安庁への協力要請も、不自然な位に遅かった。車で運ぶにせよ船で運ぶにせよ、あるいはその両方かも知れねェが、いずれにしても十分な時間を与えちまッたワケだ。」


「岩井さんはどう考えているんですか?」


「最悪の想像をすりゃ、もう核廃棄物は都内のどこかに運び込まれて、き散らされる準備が整ってる、ってとこだろうな。」


「……。」


アラタも純哉も言葉が続かない。

核廃棄物が都内に持ち込まれている。だとすると、今この瞬間も危険だという事だ。

しばらくの沈黙を破って口を開いたのは純哉だった。


「もしその通りだったとして、どの位の被害になりそうなんですか?」


「核廃棄物だけなら、まァき散らしたとしても拡散に時間がかかるァ。風や雨の影響を受けるから、計算しにくいしな。その場所は30年近く人が近づけない場所にはなッちまうが、避難させる位の事は出来るだろうよォ。ただし、もし一緒に爆弾があれば、一瞬で半径300m程の範囲を誰も残らない位にする事は出来らァ。仮に東京駅や渋谷、新宿あたりで使えば、数百万人が死ぬだろうな。」


「数百万人…。」


純哉の顔から血の気が引く。


「少なくとも、交渉材料として使うとしたら、かなり強力なカードである事ァ間違いねェな。」


核について、アラタはよく知らない。身体中の原子を破壊するとか、DNAの繋がりがなくなるとか聞いた事はあるが、核についての知識は問題ではないだろう。

数百万人の命が危険にさらされる。それだけで十分だ。


「伊部は、既に爆弾を用意しているんでしょうか?」


「どうかな、それは何とも言えねェ。起爆装置ぐらいならちょっと詳しい奴がいれば作れるが、その量の火薬を調達するとなると、ちょっと厄介な筈だ。スーパーやコンビニで買えるわけじャねェからな。」


「同じ様に盗まれたりした記録はないんですか?」


「今、部下たちに調べさせちャいるがな。少なくとも俺の知る限りではそんなことァねェ筈だ。」


「となると、火薬はこれからってわけか…。」


爆弾をどこから調達するのか。

自衛隊の幕僚長クラスも抱き込んでいるらしいから、既に入手していてもおかしくはないが、ものがものだけに簡単ではない筈だ。

少しずつ盗み出してバレない様にする可能性もあるが、そんな面倒な事をするだろうか。


「こちらで心の鐘にスパイを仕込んでいますので、ちょっと情報を集めて貰いますよ。どの程度使えるのかはまだ、未知数ですが…。」


「そうして貰えると有り難てェ。こっちでも伊部をはじめとした幹部連中に監視は付けるが、ヤツらはなかなか手強い。簡単に下手ァ打つとは思えねェからな。」


百戦錬磨の岩井をして手強いと言わせる、それだけで“心の鐘”の、伊部 壮心の底知れない不気味さを感じる。

各分野のプロを用意しているのだろう。


純粋な戦力としては、既にあらががたいレベルに達している様に思える。


ただ、現時点ではまだ、伊部はアラタの存在を知らない。

つまり現時点ではアラタの様な、自身と同じくマインドコントロールパネルを持つ存在を想定して計画をってはいない。


付け入る隙があるとすればそこだ。


今回こちら側に引き入れることが出来た、確か野田と言ったか。


彼の存在が肝になる筈だ。

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