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マインドコントロールパネル  作者: 小沢 健三
第2章 “人脈”
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第2章“人脈” -11 天使との時間

天使との初めてのキスは、アラタを陶酔とうすいさせた。


はじめはチュッと触れるだけのキス。


だが一度唇を離すと、すぐにまた口付けたくなる。

口付けては離れ、離れてはまた口付ける。


何度か繰り返した後、舌を絡める濃厚なキス。

アラタの舌が天使の口の中に入り、天使の舌がアラタの口の中で動く。


15分ほども、殆ど離れる事なく、キスを繰り返した。


半ば眠りにつく時の様に、深い瞬きを繰り返し、焦点の合っていない目がジッとアラタを見つめている。



めすの顔。



その表情はクルミンの美しさを更に引き立たせる。


クルミンがどれだけ素晴らしい女優であっても、きっとこの表情をカメラの前で見せる事は出来ないだろう。


アラタにしか見せない表情。

その思いが、アラタを更に興奮させた。


もう一度、深く天使を抱き締める。


「クルミン、あのさ…。」


「うん。」


「ホテルへ…、行きたい。」


「…うん。」


そこから無言で1分程抱き締め、最後に数秒間だけ、思い切り力を入れてギュッと抱き締める。


「よし、行こう。」



----



東新宿駅近くのラブホテルの一室。


なるべく感じの良さそうな、お洒落なホテル、その中でもお洒落な部屋を選んだつもりだが、それでも、目の前の天使の美しさには相応ふさわしくない様に思えた。


さっきのキスの時の陶酔とうすいは移動の時間でめてしまい、再びアクションを起こすのに勇気が必要だった。


ベッドに座り、無言の2人。


「クルミン…。」


「うん…。」


「あの…、もう1回、チューしても良い?」


「うん。」


堅い仕草で、2人が向き合う。


両腕を天使の肩に乗せると、ゆっくりと目が閉じられる。


今度は最初から、舌を入れた。

天使の舌もそれを受け入れる。


少しずつ体重を掛け、天使を後ろに倒す。

アラタがまたがる様な体勢になり、少しずつキスは深みを増す。


アラタの手が天使の胸に伸びる。


「ん…。」


予想していたよりも胸が大きい。

決して巨乳と言う訳ではないが、細い身体からもっと小さいと思っていた。


「あの…、電気…。」


「あ、あぁ、ごめん。」


枕元にあるスイッチをオフにしていく。


薄く灯りをつけておこうかとも思ったが、真っ暗にした。

ちょっと残念だが仕方ない。きっとその方がいいだろう。


再び、クルミンにまたがる様な体勢になり、キスをしながら胸のボタンを外していく。

スカートを脱がそうとすると、天使は少し腰を浮かせてくれた。

その腰は両手の親指と人差し指で一回りさせられるんじゃないかと思う位に細い。

思っていたよりも胸はあると思ったが、その下には肋骨の形が分かる程に浮き出ている。


首筋、胸、へそ…。

少しずつ、キスをする場所を下へと下げていく。

それが股下にまで来そうになった時、天使は「えっ⁉︎ちょ!ちょっと…!」と声を上げたが、聞こえない振りをして舌をわせた。


踏み込む事は許されない、天使の“聖域”。

そこに、アラタの舌が到達する。


「あっ…!」


天使の声が漏れる。



十分に天使の身体を堪能し、それから、1つになった。


----


アラタの右肩に、まだ少し息の粗い藍澤くるみの重さを感じる。

少し汗ばんでいるが、それを嫌がる素振りはない。


「よかった…。」


天使が呟く。

咄嗟とっさにアラタは、行為の事を言っているのかと思い、ドキッとした。

それを察したのか、天使が慌てる。


「あっ!ち、違うの!そう言う意味ではなくて、あっ、違う!そう言う意味では良くなかったって言ってるわけじゃなくて…その…。何言ってんだろ私…。」


あわてて言いつくろうクルミンが可愛くて、アラタから笑みがこぼれる。


「つまり、こうなれて良かったってこと?」


「そう!そうなの!」


「うん。俺もそれは、心から良かったと思うよ。」


「そっか…。アラタ君がそう言ってくれるの、嬉しいな。」


「そりゃそうでしょ!日本中の男が全員、クルミンとこうなりたいと思ってるよ。」


「そう…なの…かな?全員は大袈裟じゃない?」


「まぁそりゃ、何人かは物凄いデブ専だとかブス専の人もいるだろうけどね。」


「あ、ヒドイ。」


「はは。でも、そういう人を除けば全員だと思うよ。よく知らないけど、なんかの雑誌で“彼女にしたい女優”の1位だったよね?」


「…うん。皆様に支えて頂いてます。」

と天使が笑う。


「もしバレたら俺、ファンの人に殺されるんじゃないかな。」


「あぁ、確かにファンの人は…、ちょっと変わった人もいる。殺される事はないだろうけどね。」


「クルミンってスキャンダルみたいなこととか、一切なかったでしょ?ファンの人たちは聖女だと思ってるんじゃないかな。いやこれはけっこうマジで。」


「聖女は言い過ぎよ。でも、私、確かに恋愛経験と言うか、そう言うのはかなり少なくて。中学生の時からこのお仕事してるから、忙しかったり出会いがなかったりとかもあるんだけど、同じ位の友達と比べても、かなり少ない方だと思う…。」


「そうなんだ。」


「でね、アラタ君と出会って、初めて恋愛してるんだなぁって思うの。アラタ君の事を考えたら眠れないとか、ご飯も食べられなくなっちゃうとか、苦しいんだけど、楽しくて…。」


やっぱりご飯を食べられていないのか。


そこまで食べられないのはきっとマインドコントロールパネルの力によるものなので、みんながそこまでの恋愛をして来ているとは思わないが、もちろんそれは言わない。


「他の女の子と一緒にいたり…、して欲しくないなぁ…とか思ったりね。今までも、お付き合いした人は少ないけどいた事はいてね、でもそんな風に思ったことって今までなかったの。みんなこう言う恋愛を高校生の時とかにしてたんだろうなぁって。」


“お付き合いした人いたのか…。けどまぁそりゃそうか。クルミンも23歳なわけだし、彼氏がいたことないってことはないか…。”


残酷な真実だが、天使は処女ではなかった。


とはいえ、23歳の、物凄く美しい女の子なのだ。

今まで何もなかった事を期待するのは自分本意過ぎるだろう。

悔しい気もするが、過去の事は良い。


「けど、もうちょっと食べないとね。」


「うん…。確かにちょっと、今はせ過ぎだと思ってるよ。共演する女優さんとか、マネージャーさんにも言われる。もっと食べなさいって。」


「そう言えば、今日も何も食べてないね。お腹減った?」


「うん。そうね。私、前回もそうだったんだけど、アラタ君が一緒の時はけっこう食べられるの。」


「そっか。じゃあ何か食べに行こうか?」


「うん。」


「…けど、その前に…。」


「ん?」


「もう1回!」


そう言うと、天使の口を再びアラタの唇がふさいだ。


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