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第2話 婆やのたくらみ

 お付きの兵士4人と婆やは、颯爽と馬に乗るロザリア王女を囲んで城外へ出た。まだ陽は高い。抜けるような晴天の中、爽やかな秋風が吹き抜ける。散歩には絶好の日和である。


 一方のロザリアは、これまでにない高揚感に包まれていた。なんと、兵士達は馬に乗っていないのである。馬は自分1人だ。つまり、いつでも脱走することができる。


 笑顔でご機嫌なロザリアを見て、婆やはほっと胸をなで下ろしていた。


 そして30分も歩いた頃……。一行は畑の入口に到着した。


「ロザリア様、あと少しで秋桜(コスモス)畑に着きますよ」

「ええ、楽しみね」


 秋桜畑は城の管理下にある。入口付近には、大抵管理人がいるはずである。それが今日は見当たらない。管理人といっても貧乏国のロキシアである。専業の人間を召し抱えることはできない。村人に畑を貸す代わりに管理を兼ねてもらっているだけの、粗末な警備体制でしかない。


「あら、管理人は居ないのですね。お茶でも飲みに家へ帰ってしまっているのでしょうかねぇ」

「婆や、いいじゃない。どうせ畑は直ぐそこなのでしょう? 勝手に入らせてもらいましょうよ」

「え、ええ……」


 婆やは少し不安になっていた。


 入口を過ぎ10分も歩くと、そこには一面の秋桜が広がっていた。見事なものだった。青空に映えるピンクの花弁は、ロザリアはおろか兵士達の心まで深く感動させるものだった。


 見渡す限り一面の秋桜畑。これほど見事な畑を作るには、相当な手間暇がかかっただろう。もし管理人が居れば、苦労話の一つも聞けたかもしれないと婆やは思った。


 気分屋のロザリアは、脱走計画など頭から抜け落ち、すっかり目の前の景色に夢中になっていた。


「もっと奥へ行ってみましょうよ!」


 そういってロザリアは馬を降り、(くつわ)を兵士の1人に預けると、秋桜畑に降り立った。長い金色の髪が太陽に反射して輝き、その姿はまるで優美な一枚の絵のようだった。


 これで性格がおしとやかで従順ならば、本当に最高のお姫様なのに……。婆やと兵士達はそう思った。


 ロザリアがふと草深くなっている足元を見ると、赤い液体がまかれていることに気が付いた。


「何これ? こんなところにペンキかしら?」

「どうなされました?」

「婆や、こんなところに真っ赤なペンキが撒かれているのよ。まったく一体誰かしらね、こんなことをするのは……」


 婆やは、それが直ぐに血だということに気が付いた。そして、その草むらの中に人が転がっているのが見えた。カッと大きく目を見開き、口からは血を吹き出している。ピクリとも動いていない。既に絶命しているようだった。幸いロザリアの位置から死体は目に入っていない。その死体の顔には見覚えがあった。不在だった管理人だ。


「ロザリア様っ! 早くこちらへお戻りくださいっ!」


 畑の中に立っているロザリアへ、焦った声を投げかける。


「何よ、人がせっかく良い気分に浸ってるっていうのに……」

「お願いですから早くお戻りくださいませ!」

「いやよ! だってここは気持ちが良いんですもの」


 突然、畑の奥から騎馬の一隊が現れた。20騎くらいだろうか。城の騎士や兵士ではない。スキンヘッドの男を先頭に、見るからに粗野で乱暴そうな荒くれ者が乗っている。


 男達は、あっという間にロザリア達を取り囲んだ。


 兵士達4人と婆やは異変を察知し、素早くロザリアの周りに集まって守りを固めた。


「何なのあなたたちはっ!」

「俺達は隣国ライツから来た盗賊団よ。しかしどんな獲物が来たかと思えば、とんだ綺麗な蝶々が舞い込んできやがったな。……お頭、どうしやす?」

「どうもこうもねぇだろ。いつものとおり、全員殺して身ぐるみ剥ぐだけだ」


 先頭をにいたスキンヘッドの男が、腰の蛮刀を抜いた。それを合図にして、残りの男達は馬を降り、一斉に帯刀していた剣を抜いた。


 ロザリアは、自分に何が起きているのか理解できていなかった。平和で美しい世界が、突然、野蛮な男達に踏み荒らされたのだ。


「管理人を殺したのもあなたですか?」

「ああ、そうだ。あの管理人も貧乏でなぁ。この国は貧乏だとは思っていたが、まさか畑の管理人にまで払いをケチっていやがるとはなぁ、ハッハッハッ」

「何と惨い事を……ここはロキシア家の管理地ですよ、それをわかっての狼藉(ろうぜき)ですか?」

「もちろんだ。城の管理地なら、関係者が来るだろうと思ってな。関係者なら、まさか普通の庶民よりは金目のモノをもってるだろうからなぁ」


 婆やは会話をすることで、時間を稼ごうとしていた。


「ば、婆や……わ、私達は殺されるの?」


 ロザリアは恐怖していた。これまでにないほど怯えていた。足がすくんで腰が抜けそうだった。こんなにも激しい剥き出しの暴力の匂いに出くわしたのは、初めてだった。

 

 もちろん剣を振るったことはある。打ち合いもしたことがある。しかしそれは、あくまで訓練という枠内だ。しかも相手は家庭教師。自分を傷つけることは絶対にないという安全が保証された中での訓練だ。だが今は違う。相手は確実に自分を殺そうと剣を抜いたのだ。そんな者達を目の前にしている。


「ロザリア様、ご心配なされますな。兵士達をあの”お頭”と呼ばれた男に突撃させます。少しの間だけ、隙ができるでしょう。そこを馬でお逃げください。ロザリア様の乗馬の腕ならば、城まで逃げおおせることができましょう」


「う、うん、わかった。ば、婆やは……婆やはどうするの?」

「ご心配なされますな、ちゃんと逃げる算段はついております。必ず後から参りますよ」


 婆やはロザリアを安心させるために、ニッコリと笑った。だが、本当は違う。兵士達と一緒にここへ残り、少しでもロザリアの逃亡時間を稼ぐつもりだった。


「さぁ、兵士達! お行きなさい!」

「ウオォォォォーーーッ!」


 婆やの掛け声を合図にして、兵士達4人が剣を抜いてスキンヘッドの男へと突撃した。


小癪(こしゃく)な。無駄な悪あがきを……」


 スキンヘッドの男が、蛮刀を振りかざして兵士達と剣を合わせると、周囲の手下達が一瞬怯んだ。


「お、お頭っ!」

「馬鹿野郎っ! 俺は大丈夫だ。そっちの女を逃がすんじゃねぇ!」


 ロザリアは婆やに手を引かれ、愛馬に騎乗することができた。後は鞭を入れて走らせるだけである。何しろ頭目であるスキンヘッドの男は、兵士達4人を相手に身動きが取れていない。残りの連中は馬を降りているのだ。このまま全速力で走れば、ロザリアは無事に逃げ切ることができるだろう。


「婆やも早く乗って!」

「いいえ、ロザリア様、2人乗ったら追いつかれてしまいます。さぁ、お一人でお逃げくださいませ!」


 そういって婆やは、思い切りロザリアの愛馬の尻を叩いた。


「そ、そんな……」


 ロザリアの愛馬は、全速力で秋桜畑を疾走し、徒歩で追ってくる盗賊団をたちまち引き離していった。


 ――― ロザリアは絶望的な気分に襲われた。


 婆やを失ってしまう。そう思っただけで、自分の体がちぎれてしまいそうだった。今まで散々ワガママ放題にやってこれたのも、すべて婆やのおかげだ。いつも優しく諭してくれ、周囲との調和を保ち、自分の事を一番に心配してくれる存在……それがロザリアにとっての婆やだということに、この窮地で気が付くことができた。


「い、いや……婆や……」


 何を思ったか、ロザリアは愛馬の鼻先を返し、盗賊団の方へと物凄い速さで突っ込んで行った。


「ロザリア様、なぜお戻りになられたのですかっ!?」


 そこには肩を蛮刀で斬られた婆やが立っていた。血が流れている。それを見たロザリアはイチかバチかの賭けに出た。婆やに向かって思い切り馬を跳躍させたのだ。


 盗賊団の頭上を越え、婆やの傍に立つことができた。足場の悪い畑でこれだけの技を成功させたのは、まさに奇跡だろう。


「婆や、手を伸ばしてっ!」


 婆やは言われるがままに手を伸ばす。ロザリアはその腕を掴み、力一杯婆やを馬上へ引き上げた。腕が抜けそうに痛い。おそらくロザリアの肩と肘は脱臼しただろう。だが今は、そんな事に構ってはいられない。


 ロザリアは、我がままで世間知らずのお姫様だが、根性だけは本物だった。暴力には慣れてはいなかったが、自分にとって真に大切な人を見失うほど愚かではなかった。


 婆やはロザリアの腰に手を回して、しっかりとしがみ付ついた。ロザリアはそれを合図に、一番壁の薄そうなところへ向かって馬を走らせた。


 既に兵士達4人は地面に倒れている。ピクリとも動いていない。出血の量からして、もう助からないだろう。


「や、野郎っ!」

「ちくしょう、その馬を止めろっ!!!」


 盗賊たちは必死で剣を振るって駆け寄るが、ロザリアの馬の方が僅かに速かった。だが、今は2人乗りである。持久戦になれば直に追いつかれてしまう。


「ロザリア様、婆やを降ろしてください」

「駄目よ。……私、婆やを失ったら生きていけないわ」


 馬の手綱を果敢に握るロザリアの眼から、涙が水平にこぼれ落ちていく。その涙を見て、婆やは今さらながら、このおてんば王女の優しさを感じていた。人を思うことのできる人間に育ってくれていたのだ。もうこの世に未練はない。……いや、あるとすれば、この子に人としての幸せを味あわせてあげたい。もうそれだけだった。


「はぁ、はぁ、はぁ……大丈夫、大丈夫よ婆や。私がどれだけ乗馬が上手いか知っているでしょ?」


 無理矢理に笑顔を作って、微笑みかけるロザリア。だがその笑顔とは裏腹に、現実は無情で冷徹だった。既に1馬身後ろまで、盗賊団の馬が迫っていたのだ。どんなに優れた操馬術を持っていても、2人乗りと1人乗りの馬の速さは圧倒的に異なるのだ。


「どうして、どうしてよっ! もっと速く走ってよぉ!」


 ロザリアは半泣き状態で馬に話しかけた。一方、婆やは馬を飛び降りることを覚悟していた。


「へっへっへぇー、もう逃げられねぇぜぇ」


 盗賊団の馬が迫ってきた。舌なめずりしながら、手慣れた様子で血の付いた大きな蛮刀を振り回している。


 もうダメだ。剣で斬られる。落馬したら、きっと(なぶ)り殺されてしまうだろう。


 ――― その時だった。


 突然、風景が斜めになった。踏みしめるはずだった大地が落下し、大きくバランスが崩れた。馬もろとも空中に放り出される感覚があった。


 ロザリアと婆やの乗った馬は、いつの間にか断崖絶壁の際まで来ていた。運悪く崩れやすくなっていた地面を踏み抜き、崖下に落ちてしまったのだ。


「とっとっと……危ねぇ危ねぇ。崖になってやがったか。これは高けぇな。ここから落ちたら、どんなタフガイでもお陀仏だろうよ」

「おい! 娘とババアは捕まえたか?」

「すんません、お頭。それがあいつら、馬ごと崖から落ちやがって」

「ちっ、ったくしょうがねぇな。あの兵士どもの鎧と武器を身ぐるみ剥いだら、さっさとずらかるぞ。こんな貧乏な国じゃろくな稼ぎになりゃしねぇ」

「へ、へい……。あーあ、でもあんな上玉、滅多に居ねえのにな。惜しかったなぁ」


 こうして、隣国ライツからの盗賊団は、兵士4人と管理人の死体を秋桜畑に残し、素早くこの地を去って行った。


◇ ◇ ◇


 婆やは、崖から落ちた瞬間に自分とロザリアは死んだと思った。しかし、奇跡的に生きていた。偶然にも崖下には木々が覆い茂り、上手く枝に引っ掛かりながら落ちたのだ。


 意識を取り戻した時には日が傾き、既に夕日が美しく空に映えていた。あれから数時間は経ってしまっただろう。城に戻る約束の時間が迫っていた。


「い、イタタ……」


 婆やは自分の体を確認してみた。擦り傷や切り傷はあるものの、骨に異常はない。歩くこともできる。近くを見ると馬が潰れていた。さすがに、馬の体重を木の枝では支えきれなかったようだ。無残にもロザリアの愛馬は死んでいた。


「ロ、ロザリア様……」


 婆やは必死になってロザリアを探した。下草が短く、手入れの行き届いた森だったため、幸いにも直ぐに見つけることができた。


 ロザリアは、馬からかなり離れた樹の下に落下していた。婆やは枝に加え、馬がクッションになってくれたおかげで、ほとんど無傷だったのだ。だが、ロザリアは空中で馬から放りだされ、枝のみが落下の衝撃を吸収する格好となっていたため、重傷を負っていた。意識はなく、加えて両足が折れていた。もっと細かく見れば、他の骨も折れているかもしれない。


「ああ、ロザリア様、どうしてこんなことに……」


 婆やは心から嘆き悔いた。自分が外遊などに誘わなければ、こんなことにはならなかったはずだ。あの時、宰相の言葉に従っていれば……。重い責任を感じずにはいられなかった。


「ば、婆や……ぶ、無事、だったのね」

「はっ! ロザリア様、お気づきになられましたか?!」

「え、ええ。私は婆やが無事なら、それでいいわ。ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」


 これだけの重傷を負っているにもかかわらず、ロザリアが目を覚まし、婆やに話しかけることができたのは、実に幸運だったろう。


「今から助けを呼んで参ります。お気をしっかりとお持ちください! ロザリア様は必ず助かります」

「う、うん。私、頑張る……」


 そういってロザリアは目を閉じてしまった。呼吸はあるがショックが大きかったせいだろう、意識が混濁している。


 もう馬は使えない。ここから人家に助けを求めるには、離れすぎている。走っても間に合うかどうかわからない。その間に、ロザリアが野犬にでも発見され、襲われようものなら、目も当てられない。


「おや、こんなところでお会いするとは」


 ふと声を掛けられた。婆やが振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。妹の旦那が立っていたのだ。彼は木こりを生業としている。方々の山に入るのが仕事だ。猟をしたり木々を伐り出したり、炭を焼いたりと山に密着した仕事をしている。つまり、この辺りの山は彼の仕事場なのだ。


 彼の背負子(しょいこ)には、たくさんの薪が積まれていた。どうやら薪を取りにこの辺りまで出ていたらしい。


「ああ……これは神のお導きか!」


 婆やは膝を突いて泣き出してしまった。だが泣いている場合ではない、早くロザリアを治療できる安全な場所に運ばねばならないのだ。


「義姉さん、こんなところでどうなすった! うん? そっちに倒れているのは……もしやロザリア王女?!」

「詳しい話は後です。早く運んでやってください」

「な、なんてこった! こりゃあとんでもない大怪我だ」


 妹の旦那は背負子にあった薪をすべて捨てると、ロザリアを乗せてしっかりとロープで括りつけた。これで王女を背負って運ぶことができる。木こりだけあって、体力と筋力は人一倍秀でている。山の2~3ならば、このまま越えて移動するのも問題ない。


「と、とりあえず城に運べばいいだか?」

「そうですね……」


 と言いかけたところで、婆やはふと思った。


 ロザリアをこのまま城に連れ帰ったら、どうなるだろうか? もちろん、婚約者の貴族に理由を話し、治療してから結婚することになる。だが、ロザリアが望まぬ結婚をしたところで、幸せにはなれない。一生人質の生活が待っているだけだ。


 ロザリアが結婚すれば、この国はきっと安定するだろう。だが、婿に入った貴族の一族に国は牛耳られ、国民は奴隷の扱いを受けることになる。実質的には侵略されたも同然だ。ロキシア家の家名も、剥奪されない保証はない。何しろ、今の愚王以外にロキシア家の血を継いでいるのは、ロザリアだけなのだ。

 

 では、ロザリアをこのまま匿ったらどうだろうか? もちろん婚約は破談になる。国は不安定で貧乏なままだ。いつ他国に攻められるかわからない。国民は不安がるだろう。だが、ロキシア王家を旗印に、自らの力で誇りを持って戦うことはできる。


 ロザリアは、容姿端麗で礼儀作法も完璧だ。はねっ返りのところはあるが、心根は優しい子である。素性を隠して国外に出ても、良縁に恵まれるだろう。幸い、婆やの親戚は隣国のエスーニャで商家を営んでいる。規模も大きく、それなりに裕福だ。そこに養女として入れば、ある程度の生活水準でロザリアの望む自由が手に入る。恋愛をして、好きな男とも結婚することができよう。


 ロザリアを城に帰しても帰さなくても、国が窮地に陥るのは間違いない。であれば、少なくとも自分の育て上げたこの娘が、幸せになる方を選ぶべきではないのか?


 婆やは咄嗟にそう考えた。


「いいえ、城ではなく家へ連れて行ってください」

「し、しかし……」

「いいのです。今はそれがロザリア様のためになるのです」

「わ、わかった。んじゃあ、急ごう。怪我が心配だ」

「あなただけで行ってください。私が山道を歩けば、足手まといになります」


 妹の旦那の家、つまり婆やの実家はここから山を2つ越えた先にある。整備された街道を辿れば1日ほどで着く距離だ。だが、今は早く応急処置を施し、安静にする必要がある。道は険しいが、山の中を突っ切る方が早い。熟練の木こりなら2時間もあれば着く。

 

 しかし、山中には脅威があるのだ。日が暮れれば野犬や狼が出る。彼らに遭遇すれば、手負いのロザリアを抱えたまま振切るのは難しい。ましてや、戦うことのできない夫人がいれば、足手まといにしかならない。


「んだども、義姉さんはどうするんだ?」

「私は城へ戻り、事情を説明しておきます。ロザリア様を匿っていることは、絶対に秘密にしてください。私達の親族以外には絶対に話さないように!」

「わかった。誰にも言わねぇ。きっと深い事情があるんだろ? 王女様の事は心配いらねぇ。任せておきな!」


 そう言うと、義弟は颯爽と獣道を辿り、山中へ消えて行った。


「……ええ、そう。これでいいのよ。もう後戻りできないわ」


 婆やは震え声で呟いた。


 こうして、ロザリアが企んでいた脱走計画は、奇しくも別の形で実現されることになった。大変なのは、これから城に帰ってからである。果たしてどう説明すればいいのか……。婆やはあれやこれやと、ごまかすための言い訳を考えながら、城への帰途についた。


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