遠距離関係
他サイトで載せていたものです
「おにーちゃん、私の手袋みなかった?」
「ああ、あのぼろっちい軍手?」
「軍手じゃないよっあれは大切な・・・・」
「あーごめん目障りだったから捨てといたわ」
「・・そんな」
「だったらリビングに放置しとくなっつーのばーか」
「ひどい」
憮然とした唇。
恨めしそうな瞳。
わなわなと微かに震える拳。
全部、全部俺への嫌悪に、怒りに耐えているためだ。
妹は、緑は普段温厚で大人しい気質で俺と正反対。
こうして怒りをあらわにするのは珍しいことだ。
あくまでも、他人からしたら、の話だが。
このことでどれほど俺が影響を与えているかがわかる。
「昔はあんなに優しかったのに、どうして最近のおにーちゃんはそんなに冷たくなっちゃったの?」
「はっ『優しかった』兄貴?んなもんハナからいねぇよ。バカじゃねぇ。お前昔からそうだよな。頭ん中空っぽで、物事の表面ばっか見てさ。同級生が皆お前のこと『優等生』だとか『かわいい』とかチヤホヤしてんだろ。ああいうのいってるやつ皆裏でお前の悪口ばっか言ってんの。」
「やめて」
「俺もそうだよ。ちっせぇ頃からお前が目障りでしょーがなかった。『おにーちゃんおにーちゃん』てさ。仕方ねえから『優しい』おにーちゃんやってたんだよ」
「・・・・おにーちゃんなんて大ッ嫌い!!」
緑はそう俺に浴びせると部屋から出て行った。
言葉が頭の中で反響する。
耳朶の甘い疼きが消えてゆくのが名残惜しい。
「・・・・・・ああ、俺も、お前のことが『大っ嫌い』だよ・・・・・・」
熱を持って掠れた声は部屋の冷たい空気の中に溶け込んでいった。
いずれこの二人をメインにした長編小説をかきたいです