逆ハー狙いの転生ヒロインも幸せになりました
乙女ゲーネタでぷぎゃー?とか書いてみたくなったのです
14/7/26:気付いた脱字などの修正、内容の変更はありませんデスヨ
私の名前は仏坂 礼(17才:高2:♀)、所謂前世の記憶持ち転生者というやつだ
どうやら私は乙女ゲーと呼ばれるゲームに酷似した世界(ひょっとしたら小説や漫画かもしれないけど)に生まれているみたいなんだよね
なぜそう思ってるかと言うと
世界的に有名な大企業の御曹司の俺様生徒会長
膨大なレアメタルの鉱脈が発見され一気に大金持ちになった小国の第2王子な癒し系留学生
只今大ブレイク中のチャラい現役アイドル
世界各国の有名研究所からスカウトがきていると言われる天才腹黒メガネ
大物政治家の息子だが反抗期真っ最中の一匹狼な不良君
なんていう属性持ちの超絶美男子が私の通っている学園に存在しているから
ここで普通の女の子なら彼らを攻略しようとするのかもしれない
例えば現在進行形で逆ハーレムを築こうとしているこれまた超可憐な容姿のヒロインちゃん(仮)のように
でも私にはその気は微塵もなかったりする
別に傍観者を気取っているわけでも、容姿・学力・運動能力の全てがこの学園の生徒の平均しかない微妙なスペックだから諦めてるわけでもない、ましてや腐っているから鑑賞しているとかでは絶対ない
単に私の前世が享年41才のおっさんだったから
つまり恋愛対象は女性限定、今世では紛うことなきガチレズなのですよ
ちなみに家族にはカミングアウト済み、家族会議が開かれ紛糾もしたけど幸い弟がいるので血が途絶える心配もないことから何とか認めて(諦めて?)もらえた
だからヒロインちゃん(仮)や攻略対象達のことなんて気にも留めておらず、せいぜい噂話でヒロインちゃん(仮)がいろんな男に言い寄っているというのを聞いたことがある程度のもので干渉する気など更々なかった
いや今でもない……けど
「考え直してスーン!!あなたはオイジア王国の王子なのよ
それを国に帰らず日本に永住するなんて何を考えているの?!」
「すまない、シェーラ
でももう決めたんだ、僕はこの日本で彼女と、泡姫と生きていくと決めたんだ」
「そんな!せめて一度国に帰って国王様とご家族にご相談をして…」
「そんなことを言って国に帰ったらもう国から出さないつもりなんでしょう
お願いだからもうスーンを国に縛り付けるのはやめて、彼を自由にしてあげて、お願いよ」
「なっ?!貴女は何を言っているのですか
今あなたは関係ないのですから少し黙っていて下さい」
「関係なくなんてない
スーンは私の大切な人よ、大切な人のために少しでも力になろうとするのは当たり前じゃない
あなたの方こそただ自分がスーンのそばにいたいだけで少しもスーンのことを考えていないじゃない」
「だから貴女はさっきから何を言っているのですか
いい加減なことを言わないで下さい
だいたいスーンの為を思うなら…」
「もういい!!」
「スーン?」
「もういいよ、シェーラ
君に何と言われようと僕の考えは変わらない、行こう泡姫」
「まって、スーン
そんな女の言うことを…」
「そんな女?」
「えっ?」
「そんな女だって?!僕は僕の大事な泡姫を馬鹿にする人を許さない
君がそんな女性だとは思わなかった
シェーラ、いやシェヘラザード・イルハーム、君を僕の専属侍女から解任する
以後僕につきまとうな、スーンと呼ぶことも許さない」
「そ…んな……」
というやり取りの後、涙を流しながらへたり込むイルハームさん(クラスメートだったりする)を一瞥もしないで去っていく王子とイルハームさんを見下し嘲笑しているような表情で見た後一緒に去っていくヒロインちゃん(仮)
なんて現場をみてイルハームさんをほっとくなんてできない
しかもイルハームさんが
「ダメ、あの女性を何とかしないとスーンが……」
と、まだ王子を見捨てず何とかしようとする意志を持っているのだからなおさらだ
このままだとイルハームさんは何としても王子からヒロインちゃん(仮)を引き離そうとするだろう
そしてそれはヒロインちゃん(仮)の望むところではないだろうか?
私はヒロインちゃん(仮)は原作知識のある転生者だと思っている
でないとほぼ逆ハーが完成している現状の説明がつかない、そもそも逆ハーなんて可能だと知っていなければ普通目指さない
そしてイルハームさんは所謂ライバルキャラなのだろう
だからヒロインちゃん(仮)は彼女がどういう行動をとってくるのかわかっている、その効果的な対処法も含めて
つまり何かしらのイベントがまだあるということだ、ヒロインちゃん(仮)と愚王子の仲を深めるために彼女が犠牲になるイベントが…
去り際の表情といい性質の悪い女だな
とにかくイルハームさんにとっては理不尽なことこの上ないだろうけどをこれ以上ヒロインちゃん(仮)に関わらせないようにしないといけない
そうでなくとも、何らかの強制力みたいなものがあったかもしれいが、ヒロインちゃん(仮)の上辺だけの言葉でコロっとおとされた上に今まで尽くしてきてくれた人間の諫言を聞き入れないばかりか切り捨てるような男とは縁が切れた方が彼女のためだろう
まぁ、あわよくばという下心がかなりあるのは認めるけどね、彼女ライバルキャラだけあってかなり美人さんだし良い娘だからね
そんなわけで私は彼女に声をかけて私の家に連れ帰ってきた
彼女も最初はほとんど見ず知らずの私を警戒して私の申し出(家に呼ぶ)を断ろうとしてたけど
私がさっきのことを最初から見ていたこと、
今は冷静さを取り戻すため時間を空けてからどうするか考えた方がよいと忠告したこと、
力になれるかは分からないが相談に乗るし、愚痴も聞くと言ったこと、
私が1人暮らしで他に誰にも迷惑をかける心配がないこと、
なにより、彼女が侍女として愚王子と同じ家に住んでいるため帰ったら必然的に顔を合わせてしまうことが決めてとなり連れ帰ることに成功した
彼女が世話になるだけでは悪いからと食事の用意を買って出てくれたので先にお風呂に入った
食事をした後は彼女をお風呂に入れその間に食器の片付けと彼女用の布団を私の寝室に敷いた
ちなみに着替えなどは彼女が同僚に連絡してすでに持ってきてもらっている
私の寝室でミルクティーを飲み一息ついたところで彼女がこれからどうすべきか相談してきた
彼女としては藁にも縋る思いだったのだろうけど私の答えは“放っておきなさい”の一択だ
勿論彼女は難色を示し、“そんなことはできない”と拒否したが私の
「あの手の女性に簡単に篭絡される王子なんて国にとっては害にしかならないのは貴女もわかっているのでしょう?
それならこのまま王子としての権限を取り上げて自由に生きてもらった方がいいんじゃないかしら
なのになぜ貴女はあの王子に構おうとするの?」
という言葉に沈黙してしまった
暫くしてようやく彼女が淡々とした声で自分が王子に恋心を持っていたこと、幼馴染とはいえ身分の違いから諦めていたことを教えてくれた
そこから彼女は王子との思い出を話し始め
出会いやいっしょにどんなことをしてきたのか、いつ恋心を自覚したのかなど国での思い出の時は少しだけ微笑んで話してくれていたが学園に留学してからのことは明らかに声に悲しみの感情が篭っていて彼女が泣くのを我慢しているのは明らかだった
泣くという行動はストレスを発散させ精神を安定させるために必要なことだ、今は我慢すべきじゃない
私は彼女の隣に座ってそっと抱きしめた、彼女も抵抗することなく私に体を預け嗚咽をもらしやがて号泣した
なぜあの女なのか、たとえ自分は選ばれなくともあの女だけは選んでほしくなかったと
どれくらいたっただろうか、泣き止んだ彼女が顔を上げはにかんだ笑顔でお礼を言ってきた
その笑顔を見た瞬間、私の理性は崩壊し彼女を押し倒していた
何か物凄い甘い台詞とか言っていた気がするが正直あまり覚えていない
彼女に逃げられないように、そして受け入れてもらえるようにと必死だったし興奮もしてたからね
でも言葉を正確に覚えていないけどちゃんと気持ちは本物だったですよ
…どう言い繕っても彼女の傷心につけこんだことの言い訳にはならないけど
そんなちょっとアレな手段だったけけれど彼女は受け入れてくれた
最初は驚いていたし少し抵抗もあったので、あのタイミング以外だと受け入れてもらえなかったと思うが
その彼女だがまだ私の隣で寝ている、というか正確に言うと失神している
褐色のできるお姉さん系の美人が乱れていたのだ、ブレーキをかけるなんて発想はなく色々な道具も使って朝までノンストップだったからなぁ
とにかく彼女のご飯の用意をして合鍵と置手紙を置いて登校する
あぁ、太陽が黄色いなぁ~
担任には彼女は体調不良で休むかもしれないと伝えていたがお昼前にお弁当を持って登校してきてくれた
しかし昨日のことがもう噂になっている(しかも彼女が悪役で)ようであまり雰囲気がよろしくない
なので人が滅多に来ない格技場の裏のそのまた死角で一緒に食べていると昨日の焼き増しのようなことが行われた
今日はヒロインちゃん(仮)withチャラ男とチャラ男の公式ファンクラブ会長の花園 愛理だった
彼らのやりとりを要約すると
彼女は当時まだ無名だったチャラ男のファンになり彼女がプロデューサーである父親(話からすると結構な大物)に頼みいくつかの有名な番組に出れたことがブレイクのきっかけらしい
そのことには感謝しているが自分は1人でも遠くないうちにブレイクしたからそのことをいつまでも恩にきせて自分に纏わり付き交友関係に口出しするのはやめろ、デブ
ということらしい
今回もヒロインちゃん(仮)は好きな人を助けるのは当たり前、それに見返りを求めちゃいけないとか何とかその言葉だけ聞けば正しいけど会話の流れからすると見当違いなことをまくし立ててたな
あと彼女の名誉のために言っておくが彼女は決して肥満ではない、確かに標準よりほんの少し肉付きはいいかもしれないが本当にほんの少しだ
ややぽちゃの範囲にすら入らないロリ巨乳な愛らしい少女だ
1人泣き崩れる彼女を見てシェーラは昨日の自分だと言って
すでに居候として迷惑をかけているのに申し訳ないけど
自分と同じように彼女の心も癒してあげたいので協力してほしいと私に頼んできた
私には泣いている少女を無視すると言う選択肢はなく快諾したのだが
結果、愛理は私とシェーラの2人を相手にしたせいで早々に獣のような声をだし意識を飛ばしていた
まさか本当に同じ方法だとは思わなかったな
勿論その後シェーラともした
そうそう交友関係うんぬんは最近悪い噂の絶えないタレント達とよく会っているようなので心配して声をかけていたんだそうな
2度あることは3度あるという言葉通り、今度は愛理の件から3日後に紙一重で馬鹿になったメガネと学力と胸は残念だけど唯一裏表なくメガネと接していた運動神経抜群のボーイッシュなボクっ娘スポーツ特待生(陸上)、河野 茜が
そして歴史は繰り返すと言わんばかりに茜の5日後には発情した犬とその義理の妹で大和撫子を絵に描いたような旧華族の令嬢、龍ヶ峰 鏡子が
もう来ることを疑わず鏡子から何日後になるか賭けをしつつ待つこと8日(勝ったのは茜だった)、ついに下僕会長とその許婚でこちらも独
自の特許を多数持つ国内有数の大企業のツンデレ(唯の憶測)お嬢様、北御門 斎
と半月ちょっとでヒロインちゃん(仮)はコンプリートしてくれやがりました
まぁ、それに乗じた形で百合ハーレムを形成してしまった私はヒロインちゃん(仮)に何か言えた義理じゃなくなったんだけどね
彼女達にそれを言うと『あんなのと一緒にしちゃいけません!!』と怒られてしまったが…
とにかく良くも悪くも学園内の有名人だった人物達が逆ハーと百合ハーでまとまったので学園は一応の平静をみた
もっともハイスペックなライバルキャラの集まりである百合ハーの中心が凡庸な私だというのには未だに疑問の視線が絶えない
うんうん、気持ちはわかるぞ
ただ実態は私が中心というより他の5人で私をシェアしているというのが本当のところである
オンナノコツヲイ カテナイ マヂ ムリ
そんなこんなで2ヶ月程たち12月になった
その間、逆ハーメンバーがヒロインちゃん(仮)に夢中でしでかした多くのことを見ていた百合ハーメンバーは僅かに残っていた情も消え去り、むしろ縁が切れてよかったと本気で思っているようだ
当然周りからの評価も落ちている
会長が生徒会に顔を出さなくなり業務が滞り(他の役員は言われたことしかできないタイプのようだ)
王子は最初の頃の柔らかい笑顔はどこえやらヒロインちゃん(仮)以外の人に拒絶オーラ出しまくり
天才も専用の研究室を貰っているのに研究をほっぽりだし
アイドルはヒロインちゃん(仮)とのスキャンダルと愛理をデブと罵ったことをスッパ抜かれ人気ガタ落ち
不良もちょっとしたことで一般生徒にも絡むようになった
対してうちはさして変化はない
若さ故に性的には暴走しているが他を蔑ろにしているわけではない
しいて言えば
シェーラがなぜか私のメイドになり
愛理はまた何かの会長(ファンクラブは辞めている)に就き
茜は国際的な大会で優勝しメディアにも顔を出すようになった
鏡子は書と花で個展を開いて
斎は何やら海外の研究所と頻繁に連絡を取り合っている
その程度だ
いよいよクリスマスが近づき、逆ハーの方は一触即発の雰囲気を醸しだしている
そりゃクリスマスぐらいヒロインちゃん(仮)と2人きりですごしたいよねー
えっ、私?
私はすでにイヴとクリスマスの2日分のタイムスケジュール(個別デート含む)を渡されてますが何か?
そんな逆ハーの雰囲気には気付いていたが私はのほほんと日常をすごしていた
2ヶ月以上何もなかったからだろう、油断していたのだ私は
逆ハーの維持に苦労しているヒロインちゃん(仮)なら私が潰したであろうイベントを起こそうとする事ぐらい予想できただろうに…
おかげで私は今ヒロインちゃん(仮)に嵌められてピンチを迎えている
私の足元にはヒロインちゃん(仮)の私物が見るも無残な姿になって散らばっていてヒロインちゃん(仮)は泣き崩れている
そして後からやってきた逆ハーメンバーはそれを見て私に殺意のこもった目を向けている
ヒロインちゃん(仮)の嗚咽交じりの説明と逆ハーメンバーが時折もらす呟きをまとめて要約すると
私達のグループができた頃からヒロインちゃん(仮)いじめが始まり日を追うごとにそれは酷くなっていったらしい
これには逆ハーメンバーが皆頷いていたのでヒロインちゃん(仮)の自作自演にしろガチ(結構嫌われてるからねぇ)にしろそうゆう現場に居合わせたことがあるのだろう
犯人がわからず困っていたが少し前に偶然私達が次はどんなことをしようかと話し合っているのを聞いたヒロインちゃん(仮)は止めてくれるようお願いしたが『何のこと?』と白を切られ取り合ってもらえずどうしようかと悩んでいたとのこと
ヒロインちゃん(仮)の設定だと逆ハーメンバーを取られたライバルキャラ達が私を隠れ蓑に自分に嫌がらせをするために結託して作ったのが私達のグループということになっているようだ
逆ハーメンバーがなぜ自分達に相談しなかったのかと言と皆に心配をかけたくなかったのと以前親しかった女性がそんなことをする人達だったと知ったら傷つくかもしれないからだとさ
逆ハーメンバーは感動していたようだけど、私はかなりカチンときましたよ?覚悟しときなさいね?
そして今日登校すると皆に貰った大切なプレゼントが無くなっており代わりに1人でここに来るように書かれた手紙があったのできてみると
私がいて目の前で大切なプレゼントとやらを足元に転がし踏みつけ始めた
泣いて必死に止めたけど無視され大切なプレゼント達は無残な姿に変えられたとのこと
そうか私から見たら突然現れたヒロインちゃん(仮)がいきなり足元にガラクタぶちまけて泣き出しただけだったけどそんなドラマが展開されていたのか知らなかったヨ?
凄まじい殺気の中とりあえずした『せっかく白を切ったのに何でわざわざ目の前でそんなことするの?矛盾してない?』という私の質問にヒロインちゃん(仮)はビクッとして黙ってしまったが色メガネの『あんたは捨てられたのさ、蜥蜴の尻尾切りだな』という言葉に息を吹き返していた
さて困った、ここで物語の主人公なら予め対策を立てるなり、たまたま持っていた道具とかを有効活用して乗り切るんだろうけど私は何もしていないし持ってもいない、そもそもそんなに機転の利く頭は持っていない
仕方ないので見たままを言ってみたが
「はっ」
「人として自分の非を認められないのは最低ですよ」
「ウザっ」
「これだから頭の悪い人間は…」
「殺すぞ」
と決め付けているどころか会話にすらなっていない
本当にどうしようか……
被害者の証言だけで他に目撃者とかいないから私が認めなければ処罰はされないだろうけど、周りは冤罪とは思ってくれないだろうなぁ
私達のグループにしても実際の“仲良く百合ってます”と言う理由より“男とられた女達が下っ端使って復讐してる”という
ヒロインちゃん(仮)の設定の方が真実味高いのが何とも……
私が黙っているのをいいことに
1、私をぼろくそに言う×5
2、ヒロインちゃん(仮)軽く私を擁護する×1
3、ヒロインちゃん(仮)は優しいなぁ、それに比べて×5
の3工程を延々と繰り返している
ところで逆ハー5人の喋る順番が1回も変わらないんだけどなんか取り決めとかあんの?
ハッ!もしやこれが世界の強制力なのか!!(驚愕)
なんて驚いているとようやく逆ハーメンバーのヨイショに満足したのかヒロインちゃん(仮)が私に話しかけてきた
「お願いです、もうこんな悲しいことはしないで下さい
私だけじゃなくて他の誰に対しても……
そうしてくれるなら私、わた、し……うぅ」
「泣くなよ泡姫」
「本当に優しい人ですね、泡姫は」
「名は体を現すだっけか?マジ天使だよな」
「その優しさがそこのお馬鹿さんに通じればいいんですけどねぇ?」
「これ以上は絶対に許さん」
突っ込みたい、『名が体を現しちゃったらヒロインちゃん(仮)はソープ嬢ってことになっちゃうよ?』って突っ込みたい!!
そんな衝動を抑えている姿を怯えていると捉えたのか逆ハー達の視線に侮蔑の色が濃くなりヒロインちゃん(仮)の口角が僅かに上がった
まぁ、そちらがどう思おうと私の答えは変わらないんだけどね
「最初からしていないことを止めろと言われても困ってしまうんですが…」
そう答えると宣言通り駄犬が殴りかかってきた
男子高校生が女子高生(体だけだが)に本気で殴りかかってくるのはどうかと思うよ?
本人的には男女平等パンチとかのつもりなのかもしれないけど、現状ただの暴力になってるし
あまりおいたが過ぎるようだと…ヤッチャウヨ?
私は狂犬の右ストレートを逸らすと同時に側面から斜め後ろに回り込んで上体を反らせて投げる、合気道の基本技の1つ、入り身投げだ
狂犬(笑)は受身を取れず悶絶してたりするが自業自得です、知ったこっちゃありません
他のメンバーは驚きのあまり思考停止しているようだね、余程以外だったんだろう
確かに私のスペックは平凡そのものだけど前世と今世あわせて40年以上合気道やってるんだから、いくら君らのスペックが良かろうとも素人さんにそうそう負けたりしないよ?
とはいえ未だ状況は改善されてい、暴力に訴えることこそ思いとどまっているが引く気もないみたいだからね
そんな状況を打破したのは私の待ち人達だった
「さすがです、礼さん」
「その辺のアクションスターよりかっこよかったです」
「ボクもできるようになりたいな~」
「とても美しい投げでした」
「強いとは聞いてたけどここまでとわねぇ、惚れ直したわ」
そんなことを口にしながら私の傍までやってきてシェーラの
「さ、行きましょう」
と言う言葉と共に何事もなかったように私をこの場から連れ出している
突然のことに思考停止していた私は流されるままだ
逆ハーメンバー達も予想してなかったようで一瞬反応が遅れたがすぐに私達の行く手を阻もうとしてきた(悶絶中の1匹は除き)
「クズが」
「これだけのことをしておいて何もなしに帰れるとでも?」
「逃がさないよ」
「本当に愚かな人間というのは度し難い」
先ほどの光景を見てもその強気な態度が取れるのはある意味立派だな
そんな彼らだが斎の
「これを見ても同じことが言えるかしら」
と言う言葉と共に斎が持っていたハンディカメラの映像を見せられると愕然としたあとヒロインちゃん(仮)を見ている
映像は私の位置からでは見えなかったが音や声から察するにヒロインちゃん(仮)が私の足元に私物をぶちまけた時のもののようだ
そんな彼らを横目に私たちは悠々とその場を後にした
隠し撮りしてたのか、気付かなかったな
それにハンディカメラなんて持っているところを見るとヒロインちゃん(仮)の行動を予測して対処していたと言うことだ
うぅ、彼女達の3倍くらい人生経験あるのに完全に負けてる……
翌日から彼らを見ていない、何でも停学になったそうだ
今までの迷惑行為が証拠と共に学園長に提出された結果らしい
そんなわけで私達は何の憂いもなくイヴとクリスマスを斎の家(勿論ご両親も使用人も不在)で楽しく過ごした
おかげで私は精も根も尽き果ててダウン中、鏡を見たらちょっとやつれてた
反対に彼女達はなんか艶々してるし元気に昨日のパーティとか何やらの片づけをしている、解せぬ
片づけが終わり旅行の準備(急遽冬休みの間私達だけで鏡子の家の別荘で過ごすことになった)が整った頃チャイムが鳴った
ヒロインちゃん(笑)が来たのだろう、彼女は罰の1つとして迷惑をかけた私達に冬休みの間中奉仕することになっているのである
きっとこき使われるんだろうなぁ
カメラ付きインターホンをとるとそこには憮然とした顔の旅装のヒロインちゃん(笑)と逆ハーメンバーが勢ぞろいした画像が映っていた
なんでだろう?
私達に奉仕するのはヒロインちゃん(笑)だけで彼らは学外でのボランティア活動のはずだ
話を聞くと彼女達に直接謝りたいそうだ
彼女達に確認をとるとまだ出発まで時間が結構あるので会ってもいいとのこと
ただし、まとめて一度に会うと収拾がつかなくなるかもしれないので個別に会うそうだ
なので一旦逆ハーメンバーは会う順番と謝りたい人物をヒロインちゃん(笑)に告げて奥の部屋で待機することとなった
最初は俺様会長だった、謝りたい人物は当然、北御門 斎だ
彼は部屋に入ってくるなり不機嫌さを隠そうともせず
「なぜその女共がいる?」
と言って部屋にいる私とヒロインちゃん(笑)を睨んできた
謝りに来たと言う割には不遜な態度だな
「あたりまえでしょう?
泡姫さんには事の顛末を見届ける義務がありますし
礼さんも立派な貴方の被害者でしょうに、この前のことを礼に謝らなくていいと本気で思っているのですか?
正直に言いまして礼の名前がなかったことに人としての常識を疑いました
それに礼がいてくれればもし貴方が暴力に訴えようとしても安心でしょう?」
「――ちっ、礼とかいったな
そこのアバズレに騙されていたとはいえすまなかったな、許せ
さて斎、俺達は婚約者だこんなことでギスギスしたくないし、お互いの会社の為にもそれは良くないだろう?
だから今回のことは水にな…が…して……」
そこまで言ってバ会長は目を見開いて固まっている、右後ろの辺りに立っているヒロインちゃん(笑)からも驚いている様子が伝わってくる
私も驚いている
なぜならバ会長が私に謝罪にしてるとは思えない謝罪を口にしたあたりで斎がディープキスをしてきたからだ、しかもかなりエロティックに
卑猥な音を立ててだ
暫くして満足したのか斎の唇が離れる
すると再起動したバ会長の叫び声が部屋中に響いた
「き、貴様ら何をやっている!!」
「何といわれましても…
貴方が謝りたいとおっしゃるから時間を作りましたのに出てくるのは自分勝手な要望ばかり
はっきり言いまして時間の無駄です
なので時間を無駄にしないために礼との愛を育んでいただけですよ?何か問題でも?」
「愛だと?!ふざけるな!!
俺と言う婚約者がありながら、それも女同士でだと!
しかも、せっかくこの俺が謝ってやっていると言うのに自分勝手とはいってくれるな
どうやら貴様はそこのアバズレより性質の悪い女だったようだな!!」
「貴方が私達やついでですが泡姫さんのことをどう思おうと今更気にしませんが
先ほどの言葉で謝罪したと言い張る気でいるのでしたら常識はずれもいいところですね
貴方のお父様が後継者を弟さんに変えたのも頷ける話です」
「なん…だ、と?」
「あら、まだお聞きになっていらっしゃらないのですね
先ほど言った通り次期社長は弟さんに決まったそうです
ちなみに貴方は本社はもちろんグループの傘下企業でも雇用しないことも決定しているそうですよ
貴方の尊大な態度は面接ではかなり不利になるかと思いますので就職活動が始まる前までに口調や態度を含めた一般常識を身に付けられた方がよろしいと思いますよ?
あぁ、それとこれが一番大事なことなのですが貴方との婚約なんてとっくの昔に解消していますので馴れ馴れしく名前で呼ばないでください
不愉快です」
そこまで聞くとバ会長は携帯でどこかに連絡したようだが相手に繋がらなかったようで真っ青になって家を飛び出していった
「結局ちゃんとした謝罪もせず、帰りの挨拶もしないで帰るなんて最後まで非常識な人でしたわね
さてと、私は次の鏡子に声に声をかけておくから泡姫さんも次の方を呼んできてくださいな」
呆れた声でそういうと私に軽くキスをして斎は部屋を出ていった
ヒロインちゃん(笑)も面倒くさそうな顔をしていたが部屋を出て行ったので一応指示に従う気はあるようだ
私は特に何も言われていないのでこのまま此処にいろということなのだろうな
後の展開は予想通りさっきと似たようなものだった
駄犬は私に殴りかかってきたこともあり鏡子に人格を完全否定された上に家からの援助(学費や生活費など)を完全に打ち切られた
天才(苦笑)は茜の悪意や敵意といった負の感情の全く篭っていない言葉に打ちひしがれていた、天然って怖いな
落ち目アイドルは再び愛理を利用して(優しくすればまたすぐ堕ちると思っていたみたいだ)のし上がろうとしていたようだが思考パターン
を完全によんでいた愛理に台詞を先取りされ続けほとんど何もしゃべらせてもらえず去ることになった
元主はシェーラに王族の籍を外されたことを聞かされ、望み通り国から開放されたことを祝われた上に今回の件で最愛の主に出会うことができたと最高の笑顔でお礼を言われて帰っていった
私もこの機会に逆ハーメンバー達を凹ませてやろうと思っていたのに出番なかった
女の子っていうのは本当に強いねぇ~
鏡子の別荘は江戸時代から建っているらしく重厚な雰囲気を醸しだしていた
もちろん補修やリフォームなども情緒を崩さないよう上手くされており不便を感じることもない
私は1対1でイチャイチャしたり皆でイチャイチャして楽しく過ごした
そう、私達に奉仕するためについて来ていたヒロインちゃん(笑)の姿を1度も見ることが無かったのを疑問に思わないくらいに…
私が次にヒロインちゃん(笑)の姿を見たのは最終日の夜のことだった
ヒロインちゃん(笑)、いや泡姫は来る時に見せていた憮然とした表情ではなく、まさにヒロインといえるような朗らかな笑顔で嫌悪していたはずの私達のグループに従順なペット枠として加わって幸せそうに果てた
それを見て彼女達は口元だけを歪めて笑い
「調教完了」
と呟いた
うん、なんかゴメン