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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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記憶①

 人工皮で加工されたボールは摩擦で指先に引っかかりスナップがかかる。かすかに回転しながら山なりの軌道を描いたバスケットボールはそのまま吸い込まれるようにゴールリングに入った。その瞬間、笛の音がコート中に響く。

「ブ、ブザービートじゃねーか!」

 そうひとりの生徒が叫ぶように言うと体育館中が沸く。

 そこまですごいことをしたわけじゃない。そのゴールで試合がひっくり返ったわけでもない。ただ、俺の放ったシュートがあまりにもきれいな軌道を描いていてそれが入った瞬間ブザーが鳴ったことにみんな感動しているのだ。

「スゲーよ!国分!」

「あ、ありがとう」

 やたらにハイテンションな友人に若干引きながらも受け答える。

「普通じゃね?」

「そうだよな」

 肯定してくれる奴がいて助かった。

「何言ってんだ!国分はスゲーんだよ!さすが俺の嫁だ!」

「おい。誰かそこの変態窓から突き落としてくれ」

 気持ち悪い。お前みたいなキモさの塊みたいな奴と誰が結婚するか。というかお前は男だろうが!

「太田は相変わらずだな」

「いい加減にしてほしいよ」

 俺のことを嫁だとか叫ぶ変態は俺の中学時代の親友の太田。もう、ホモと思うしかないほど、俺のことが大好きだ。前に体操服が奴に盗まれそうになった。もちろん、殴ったがドMなので効果がないようだ。それの繰り返しをいつもしている。

「ハハハ。太田があれだけ言うのも一理あるな。国分はバスケうまくないか?」

「俺はバスケ部だが?」

「あれ?」

 この一件冷静そうだが若干天然が混ざっている俺の親友の尾崎。長身で眼鏡をかけて一見頭がよさそうだが運動はからっきしダメで学力もいいわけではなく太田より下だ。美術部に所属しておりコンクールでこの間佳作を受賞した芸術家なのだ。


「国分!今度は俺のチームとやろうぜ!」

「俺と接触して何かよからぬこと考えてるだろ!」

「・・・・・・・・・・」

「図星かよ!」

「太田は国分のことが好きだよな」

「何を今更言ってるんだよ!」

「尾崎!国分はお前に渡さないからな!」

「渡されないし!お前に渡した覚えもないわ!」

 いつもこんな感じだ。太田が暴走してそれを俺が抑制して尾崎の天然のようなボケを俺が処理する。どこにでもあるような仲のいい3人組だった。

 体育の授業が終わると今日の授業はそれまでだった。

「国分!今日は部活じゃないよな!俺といっしょに!」

「やだ」

「何ー!」

 太田と帰ってもろくなことない。逆にひどい目にしかあわない。

「国分。君は城野さんと帰るんだよな」

「バ、バカ!それを言うな!」

「なんだよ!国分は俺よりも女子の好きなのか!」

 当たり前だろ。

「もういい!お前なんか知らない!」

 そう泣きながら帰って行った。気持ち悪いだけなので追いかけない。どうせあいつのことだ。明日もいつも通りに俺にすがってくる。悪い奴ではないのは分かっている。あいつだけは俺がどれだけ変わろうとも同じように接してくれると思っていた。

「じゃあ、国分。太田といい夜を」

「おい。尾崎。何を勘違いしてるんだ?」

 尾崎はこんな風に変わらないで友人でいてくる気がしていた。どんなに変わろうとも持ち前のマイペースで持ち前の天然で俺と接しくれると思っていた。

 ひとりになった俺は昇降口で靴を履きかえて外に出て校門に待っているひとりの女子生徒。校門にもたれて足元の石を蹴りながら時間を潰している。

「待たしたな」

「あ!キョウ君!」

 俺の声を訊いて俺の姿を確認するとまるで天使のように笑って俺のことを出迎える。子供っぽいところあるがそんな守ってあげたいと思えるような存在。それが城野香波なのだ。ちなみにまだ恋人ではない。でも、こうして部活ない日はいっしょに帰っている。

 小学校のころにクラスがたまたま同じになり席替えでたまたま席が隣になり話すようになって弾む会話の中に家が以外に近いということが分かりこうしていっしょに帰るようになった。それが中学に進学した今でも続いている。もともと、あのふたりとは部活の関係上いっしょに帰ることはあまりない。太田とは部活とか関係なくいっしょには帰らない。いっしょに帰ったらどこに連れて行かれるか分からないからだ。

「すごく待ったよ!」

「悪い。今日の最後の授業は体育だったからな。終わるのが遅れた」

「そうなの?まぁ、いいけどね」

 香波はいつも笑っていた。そんな明るく輝く姿に俺は見とれてしまう。俺と香波は誰が見ても付き合っていると思われている。廊下に2人でいると通り過ぎる男どもが俺にだけ聞こえるように舌打ちをしてくる。確かに羨ましい関係かもしれない。でも、俺たちは友達以上恋人未満という関係にとどまっている。香波には彼氏がいるのだ。付き合うにも状況が状況だ。それでも香波は俺のことをまるで彼氏のように付き合ってくれる。うれしいが彼氏には申し訳ないと思っていた。常識を熟知し、それに見合った紳士的な対応をする。それが当時の俺の考えだった。

「さぁ、帰ろ!」

 だが、この当時の俺の頭の回転力ではこの微妙な関係をどう熟知し紳士的な対応をとればいのか分からなかった。今思えば、彼氏のいる状態の彼女から俺はすぐさま離れるべきだったんだ。そうすれば、彼女と俺の関係は今も続いていたかもしれない。

 当時の俺はガキだったんだ。香波のことが好きで離れるという考えまで行くことを抵抗していた。

 その抵抗がのちに大きな後悔となる。

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