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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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開封

 今朝の小火はやはりここ最近多発している不審火という結論だった。これで11件目だそうだ。昨日の夜にも別の場所で起こっているらしく。場所は市内に集中しているため警察は市内のパトロールを強化して犯人を追いかけるそうだ。未だに犯人の情報をひとつも手にいれていないらしく警察のメンツにかけても探し出して捕まえるらしい。

 さて、今日の授業はひたすら寝た。昨日は以上に疲れたというものあるがそれ以外にも今朝のことを少しでも忘れるためでもある。何度か起された記憶があるのだがあやふやで覚えていない。最後に起こされたのは昼休みだった。美嶋に起こされた。そして、訳の分からないまま連れていかれて屋上にやって来た。そこにはアキだけがおり、それ以外は誰もいない。

 美嶋が屋上に入ると屋上の扉に向かってアキがカードを打ち込む。

「何してんだ?」

「人払いです。これで私と秋奈さんと教太さん以外この屋上に入ることが出来ませんし、話声も聞こえることはありません」

「なんでそんなことする必要があるんだ?」

「教太」

 美嶋が珍しく真剣な顔をしている。

「なんだよ?」

「あたしたちが午前中に聞いたこと覚えてる?」

「寝ぼけてて何も」

 何か聞かれた記憶もうっすらあるが何も覚えていない。適当のぼやかして逃げていたような気がする。

「あたしたちはこう聞いたのよ。今朝の女の子は誰って」

 俺の体中から嫌な汗が噴き出る。

「は、は?」

「今朝の教太さんは変でしたよ。いつもの教太さんじゃないというか、何か焦っていました。おとといの時のように」

 な、何を言っているんだ?

「教太。言いたくないのは分かるわ。でも、それでもあたしたちは知りたいのよ。教太のことを大切に思っているからこそ」

 俺は何も言わない。いや、言う気はない。

「教太さん。今朝の女の人と知り合いですよね」

 俺は答えない。

「あたしが知らない顔だから中学の時の知り合いよね」

 鋭いな。女の勘というものは怖い。

「教えてください。あの女の人と何があったんですか?」

 俺は答えない。

 俺は過去を詮索されることを嫌う。だから、他人にもむやみに過去を詮索するようなことはしない。それがアキでも美嶋でも霧也でもオカマでもゴミクズでも。俺がむやみに過去の詮索することは俺自身が過去の詮索を嫌うというものあるが理由はもう一つある。この話をした際、俺も過去のことを話さないといけなくなる。だから、俺は答えたくない。

「教太さん」

 アキが俺の正面にやってきて目線を合わせる。俺は自然と目をそらす。

「目をそむけないでください」

 アキが俺の顔を掴んで目を合わせるように首を回してくる。

「なんだよ」

「教太さんが見えている者はなんですか?」

「・・・・・・・あ、アキだけど?」

「そうです。三月アキです。ですが、それ以外にもあるはずです」

 それ以外。そして、俺はハッとする。俺の見えている者は確かにこの世界では三月アキと名乗る魔術師美嶋秋奈だ。そして、人殺しの魔女でもある。俺は自然とアキの過去を知ってしまっている。つまりこれは・・・・・。

「汚いぞ。アキ」

「確かにそうかもしれません。でも、私は教太さんのことが知りたい。つらかったことも楽しかったこともすべて共有したい。秋奈さんも同じです」

 アキが俺にもたれるように寄り添ってくる。美嶋も同じように寄り添う。俺を包むのは過去に迫る冷たい視線ではなく、包むような暖かさだった。

「言うことがつらいのは分かるわよ。あたしもつらいもの。お父さんがいなくなって今まで築いてきた自分が崩れて行った過去の事。でも、今朝の教太を見ているのはつらい。その辛いことをあたしたちに吐きだして」

 アキと美嶋が俺の方を見上げる。同じ顔で同じ目で。

「私たちも教太さんの過去を背負います。役に立たないかもしれません。でも、私たちの辛いんです」

「あの子を泣かせた後の教太の顔を見ていられない。そんな教太のためなら何でもする。・・・・・だから・・・・・」

 俺は大きなため息をつく。

 そして、俺はふたりの頭を同時に撫でる。

「お前らせこい。そんな風に女の子がふたりで迫られたらどうやって断るんだよ」

「ち、違います。私たちは教太さんのことを思って!」

「ありがとうな」

「・・・・・・教太」

「いろいろ心配かけて」

 教術が使えなくなり、会いたくない旧友に再会し、ここ最近はかなり沈むようなことばかりだった。でも、その都度俺を明るくしてくれたのはこのふたりだ。教術が使えていた頃も俺を支えたのはアキだ。魔術を知らない頃、高校に進学して孤独だったのを支えたのは美嶋だ。感謝している。そして、俺が思っている以上に俺のことを大切に思っていてくれている。

「本当にありがとう」

 俺はふたりを覆うように抱きつく。

 二人がどんな反応をしたのか知らない。でも、心が少し軽くなった。痛みが二人に少し流れたのだとすれば俺は話さなければならない。

 俺は落ち着いたら二人を解放する。すると察したように少し俺と距離を置く。

「今朝の女の子は城野香波って言って俺たちと同じ年だ。俺と中学が同じだ。仲もそれなりに良かった。・・・・・・ある事件が起こるまでは」

「それですね。教太さんを惑わせて苦しめているのは」

「ああ、そうだ」

 今解き放たれる。固く封印された。まだ、青かったころの俺の記憶が。

「ちょうど2年になるな」

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