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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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愉快③

「世の中のもてない男が見たら殺されそうなシチュエーションだな」

「誰にも見られていないことを祈るばかりだな」

「俺が見ている」

「お前はリア充だから関係ない」

「それはどういう意味だ?」

「そのままの意味」

 帰りの電車の中。オレンジ色の夕日が電車の中をオレンジ色に染める。俺の両脇にはアキと美嶋が俺に寄り添うように眠っている。疲れてしまって眠ってしまったのだ。あの後、ゲーセンで遊び、カラオケで歌い、買い物を楽しみ久々に充実した休日を送った気がした。寝顔がそっくりだ。ほのかに感じる二人の体温で俺は沸騰しそうだ。

「本当に似てるな」

「同一人物だろ」

「いや、普段のふたりの姿を見ていると双子というほどではない」

 確かに同一人物なら双子と間違われてもおかしくない。でも、いくら同じ人物でもそれぞれの育ってきた環境が違う。そのためか大きく違うのは口調と性格と細かい仕草だ。それ以外は本当に同じだ。今、こうやって公衆の面前で何の抵抗もなく男に寄りかかって寝ているところも同じだ。

 アキは魔女として嫌われ孤独を過ごしてきた。美嶋は失った自分の立場から抜け出すことが出来ず孤独になった。どちらも今自分の置かれた状況に対応が出来ず孤独なっているところは同じだ。誰かが助けてあげないとどちらもすぐに壊れてしまいそうなそんな弱い存在だ。アキは少しずつその壊れそうな状況から抜け出そうとしている。だが、問題は・・・・・・。

「なぁ、霧也」

「なんだ?」

「この世界から魔術を絶つ方法はあるか?」

「教太。魔術の話はしない約束だが」

「いや、これは今すぐにというわけじゃない。多くの約束が破綻してしまった今俺には新しい約束を交わした。それを達成するためにも知っておきたい基礎に当たることだ。頼む。教えてくれ」

 霧也は少し悩むように腕を組む。しばらくアキの方を見る。魔術の話をしていいかどうか相談したいのだろう。寝ているから無理だ。

 そして、俺の方を見る。するとふっと薄く笑った。

「分かった。分かる範囲で教えてやろう」

「ありがとう」

「俺は安心してるよ」

「何を?」

「いつもの教太に戻って来たってな」

 昨日は少しおかしかったんだ。今日もそうだ。俺の冷静さを奪ていたのは過去に起きた事件を堀荒らす少女がいたということだ。忘れるための手段として魔術を使ってしまった。そのことについては俺がバカだった。

「魔術を絶つ方法か・・・・・・・。簡単に言ってしまえば俺やアキナのようにこちらの世界にいる魔術師を追い出せば早い」

「でも、今までの魔術師のようにこちらの世界には簡単にやって来れるみたいだし。それだけじゃ絶つことは無理じゃないのか?」

「それだけじゃない」

 霧也は何か重要なことを知っている。そんな気がした。その俺の勘は当たることになる。

「この世界には魔術という概念がまったくないというわけではない。例えば、テレビでやっていたマジックショーとか超能力とかだ」

「でも、そういうのって種とか仕掛けとかがあって」

「中にはそういうものがないものもある」

「え?」

「この世界には魔力というものをほとんどの人間が知らない。だが、俺にはどれが偽物でどれが本物の魔力を使った者なのか分かる」

「一部の奴はその魔力を使っていたと?」

「そうだ」

 確かに霧也が言っているのはいわゆるこちらの世界の神の法則だ。霧也たちからすれば当たり前のことを俺たちは幻想だと思っている。誰も知らないのだ。いや、誰も分からないのだ。俺はそれを知っている。

「でも、魔石の影響が少ないこの世界の住民が魔術を使うことが出来るのか?」

 霧也は一瞬悩む。だが、何か吹っ切れたようにため息をして話を続ける。

「以前にこの世界と魔術の世界がつながったことがある」

「マジで?」

「今、ある拳銃などの技術はこちらの世界から来たものに教わったものだ」

「ということはお前らはそのお礼に魔術を教えたって言うのか?」

「そういうことになるな」

「それって何年前くらいの話なんだ?」

「70年くらい前だ」

 そんな昔からこの世界には存在しないはずの魔術があったのか。

「話によれば介入してきたのは向こうかららしい」

「え?そうなのか?どうやって異世界に行ったんだ?」

「俺が知るか。その当時はまだ時空間魔術はなかったからな」

 魔術にも発展の歴史があったのか。俺たち科学が発展しているように。

「おそらく、その時に魔石のことを知って魔術を使おうと模索したのだろう。だが、今のこの世界の情勢を見ると魔術は発展しなかったようだな」

 発展しなかったわけじゃないかもしれない。ただ、利便性と効率性を考えると科学の方がいいという結論に至ったのだろう。得体の知れないものよりも自分たちが長年にかけて学んできたものの方が信用できるのだろう。

「じゃあ、この世界から魔術を絶つのは不可能なのか?」

「そういうことになるな」

 なんだよ。俺の新しく誓った約束は最初から破綻してるじゃないか。

「だが、この世界に来ている魔術師の大半の目的は教太の中にあるシンの力だ」

「だ、だったらこの力を転生魔術で抜き取ればいいじゃないか」

「それはできない」

「なんで?」

「上にするなと言われている」

 霧也とアキのボスって言うことか。魔術の世界で最強と言われているMMとかいう奴か。

「魔術の世界で保存するよりもこちらの世界の方が奪取される可能性が低いというのが理由だ」

「なら、抜き取ってそのまま壊せばいいじゃないか」

「そうかもしれないな。だが、内のボスは何かを企んでいる」

「何を?」

「教太や美嶋さんのように異世界の住民の魔術師のことを俺たちは異世界の人、異人と呼んでいる」

「異人」

「さっき言った俺たちの世界に来た異人も常識はずれの魔術を使ったという記録が残っている。美嶋さんみたいにな。どんなものだったのか詳細なことは分かっていないが。うちのボスはその異人の可能性を大いに評価している。きっと、シンよりも大きな力を取得するのではないかと。そうすれば、また戦争状態になった時に優位に戦争を進めることが出来るとな」

「なんだよ。俺はただの兵器かよ」

「だが、もしそうなった場合は俺が全力で止める。例え組織が敵になったとしても」

 霧也の決意本物だった。アキに頼まれたことでもない。きっとそれは自分の意思で決めたことだろう。こいつも俺と同じように多くの覚悟を決めて今ここにいるんだ。

「分かった。ありがとう。俺なりにこの世界から魔術を絶つ方法を考える。すまないな。魔術の話をして」

「別にいい。そうだろ?アキナ?」

「え?」

「そうですね」

 アキは目を開けていた。

「いつから起きてた?」

「最初からですよ」

 ああ、約束を破ったところを思い切り聞かれてしまったということになるのか。

「別にいいですよ。ただ、魔術を絶つ方法を私にも考えさせてください」

「はい?」

「私もこんな平和な世界から魔術をなくしたいです。こんなものは災いを起こすだけですから」

 アキはまた俺に寄り添うように目を閉じて眠りについた。

 アキの言うとおりだ。魔術というものが俺に振りかかった災いの元だ。その世界にはその世界にあるものを使う。アキたちは魔術というものがあるから魔術を使う。だが、俺たちの世界には魔術というものはないはずのものだ。俺がやろうとしていることはこの世界を正しい方向に直そうとしているだけのことだ。どれだけの時間がかかってもいい。俺はこの世界から魔術を失くしたい。その意思は強くなる一方だ。

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