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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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愉快①

 何となく自分の姿が映るガラスの前で髪の毛をいじってしまう。特に寝癖があるわけでもなくどう見てもいつもの俺だ。なんだか落ち着かない。そわそわする。アキと美嶋と3人で隣町まで遊びに出かける。それはいつも学校帰りでやっていることだがこうしっかり約束してちょっと遠くに遊びに行くことは始めのような気がする。それにお互いに私服であるということも初めてだ。いつもは制服とかだったし。俺の中でもやもやとしているのは緊張か?

 いやいや、いつものメンバーじゃね。何もおかしなことなんてないよ。うん、そうだよ。いつも通りに行けばいい。

 とか言いつつも俺も私服である。わざわざ2日連続で家に帰り物置と化していた自室のかすかな隙間に入る体を丸めて寝た。帰ったのには今日出かけるための私服を回収するためだ。

 ジーパンに7分袖のダンガリーシャツパーカーに中はチェック柄のシャツ。それなりにおしゃれをしてみたのだが・・・・・・。

「これ着たの1年ぶりくらいな気がする」

 最近、引きこもりみたいな生活していなかったし。

 アキと美嶋と待ち合わせ場所にしたのは駅前のコンビニ。休日ということもあってか人の行きかいはそれなりにある。そんな中俺はふたりを待つ間ずっとコンビニのガラスで自分の姿を確認する。店員に変な目で見られていることも知らずに。

「教太」

 声を掛けられてビクンと肩がはねる。聞いたことのある馴染みのある声。振り返ると美嶋がいた。だが、いつもと少し違う。髪は毛先に向けてウェーブを掛けている。細い足を強調するかのような白いスリムジーパン。深い緑色をした7分袖のシャツを羽織り中に薄いピンク色の花柄がプリントされたシャツ。そのほのかに膨らむ胸が俺の男心を刺激する。

「教太さんお待たせしました」

 後に続くようにアキもやって来た。ノースリーブの白いワンピース。それは中が透けて中の服が見えるようになっている。中はショートパンツと薄青い花がプリントされたタンクトップだ。そこにハットをかぶっていつものアキとはイメージが違う。

 ふたりともほのかに化粧をして

「よ、よう。特に待ってないからだ大丈夫だ。時間もピッタリだし」

 アキはしっかり普通の女の子として過ごしているようだ。なんだか俺はうれしいぞ。

「どうしたの?いつもと違うあたしたちに緊張してるの?」

 頼むから美嶋は蒼井みたいに予知能力に目覚めないでくれ。普通に緊張してるよ。ただでさえ見た目で評価点が高いお前らがそんなおしゃれしてきたらもう無敵になるだろうが。俺が対応できないだろうが。

「何黙ってるの?」

 近づかないでください。冷静でいれなくなります。

 もう、今日は暑くないか?特に顔。

「さぁ、行きましょう」

 アキに言われてそれに続くように俺と美嶋は駅の方に向かう。

 女の子二人に囲まれてこうして人前を歩いている。こんなことを俺はこんなことを想像しているはずがない。どうすればいいのか全く分からない。いつも通りでいいのか。こうしてこのふたりを女の子として本気で意識するのは初めてな気がする。

 アキは魔女と呼ばれてきた魔術師として、美嶋は深い傷を負った孤独な女の子として見ていた。こんな風に普通の女の子として見るのは初めてだ。こう改めてみると俺の周りにいる女の子のレベルって高いんだなと思う。

「教太?何ボーっとしてるの?」

「い、いや」

 意識するとこうした普通の仕草でもドキッとしてしまう。何だろう?誰か教えてくれ。俺はどうすればいいんだ?

 そんな葛藤を繰り広げながら電車に乗り隣町の大型ショッピングモールにやって来た。食品売り場や専門店はもちろん、映画館やボウリング場、カラオケなどの商業施設もある大きな施設だ。休日ともなると多くの人が集まる。

 ここに到着するころにはだいぶこのふたりに慣れてきた。

 電車から降りて改札を出るとその大きな施設が目の前に現れる。

「そういえば、アキはここに何か目的でもあったのか?」

「そうなんですよ!よく聞いてくれました!」

 体を乗り出すように俺の顔の正面まで迫る。近づかないでほしい。何か間違いが起きる。といっても美嶋はこういうことをするのは結構普通だ。同一人物のアキがやってもおかしくない。

「実はですね。こっちの世界に来て最初に経験してみたいことがあるんですよ!」

「それはなんなのよ?」

「案内します!この日のために予習をしてきたんですよ!」

 そういってアキは施設の方に小走りで行ってしまう。

「子供みたいね」

「いいんじゃないか。アキにはこういうのは初めてだし」

「そうなの?」

 その美嶋の反応を見て気付いた。こいつはアキが魔術の世界でどんな人物だったのか知らないようだ。話していないのかもしれない。必要もないかもしれない。まだ、同一人物だって言うことも知らないみたいだし。知らない方が平和なことだってたくさんある。例えば、魔術とか。

「さぁ!教太!あたしたちもいくわよ!」

 そういって俺の腕を抱きつくように引っ張る。

 何か柔らかいものが当たってる!やめろ!これ以上俺を刺激するな!

 施設に入ると3階まで吹き抜けになっておりそれぞれ惜しみなく店が並んでいる。自然と見上げてしまう。

「教太さん!秋奈さん!こっちです!」

 いつの間にかアキは2階にいた。

 元気いっぱいのアキについて行き到着した先は映画館だった。

「何か見たい映画でもあるのか?」

「いえいえ、そうではないんですよ。でも、テレビで見るよりも映像も音も迫力があると聞いていて面白うそうだから前から行ってみたかったんですよ!」

 確かに俺も映画はテレビよりも映画館の方がいいという意見には賛成だ。たまに俺も見に行くことがある。もちろんひとりで・・・・・・。

「じゃあ、特に見たいものはないのね」

「そうですね。私のわがままですし、映画はお二人に任せます」

 そうなのか。なら、最近公開されたばかりのアクション超大作を見たい。

「恋愛物がいいわね」

「いいですね」

 多数決で俺の意見が速攻で拒否されることがほぼ確定した。でも、言ってみるだけの価値はあるはずだ。

「俺は」

「教太もそれでいい?」

「いや、俺は」

「決まりね。チケット買ってくるわね」

「あ、私も行きます」

 うん。ふたりは俺の意見を全く聞く気がないみたいだな。

「教太は適当に飲み物でも買ってて」

「ポップコーンは必須と訊きました。お願いしますね」

 今日のお出かけって3人でだよな。俺はちゃんと人数には入ってるか?

 まぁ、楽しそうな二人を見ていれば怒る気にもなれない。俺は大人しく言われたことを実行しよう。

 さて、頼まれたものでも買いに行くとしよう。販売しているところまで行くと店員がやってくる。そういえば、飲み物は何がいいか聞いていなかった。適当に3種類買ってけばいいか。

「いらっしゃいませっす。ご」

 店員が急に言葉を詰まらせる。メニューばかりを見ていた俺はそこで初めて店員の顔を見る。金髪短髪の小柄な男。どこかで見たことのある人物だ。

「ご、ご注文をお願いしますっす!」

 何か焦っている。向こうは俺のことに気付いているようだ。

「ポップコーンの塩味とオレンジとコーラとカルピスを頼む」

「は、はい!ただいま!少々待ってくださいっす」

 その時、俺はその金髪短髪の語尾を聞いて思い出して逃げようとする店員の首根っこを掴み捕まえる。

「な、なにするんっすか!」

 うん、やっぱりだ。

「久しぶりじゃないか?」

「な、なんのことっすか?俺にはさっぱりっす」

「とぼけるな。なんでお前がここにいるんだよ。何だっけ・・・・・・確か・・・・・・雷恥だっけ?」

「ポップコーンお願いっす!」

 そういって俺を振りほどいて裏に逃げていく。

「飲み物の方お先失礼します」

「ありがとう。・・・・・・・あ」

「あ」

 俺に飲み物を渡してきた女の子は幼さが残る童顔に赤髪のツンテール。

「火輪だっけ?」

「こ、国分教太!なぜここに!」

「いや、それこっちのセリフ」

 ここは俺の住んでる世界だし。だから、そんなにびっくりするな。ということは待てよ・・・・・。

「雷恥と火輪がいるとなるとどこかに氷華いるのか?」

 俺は周辺を見渡して探す。

「い、いません!」

「教太さ~ん」

 アキと美嶋がチケットを持ってやって来た。

「ま、魔女まで!」

 だからそこまで驚くことでもないだろ。

「おい、アキ。ここに火輪がいるぞ。ついでに雷恥もいる」

「あ。やっぱり二人もいたんですか。氷華もいたのでもしかしたらと思いました」

 やっぱり氷華もいたのかよ。予想通りだ。

「・・・・・・・誰なの?」

 美嶋が耳打ちで聞いてくる。そうだよな。知らなくても仕方ないよな。まぁ、知っても何か美嶋の身に危険が訪れるわけでもないし。

「魔術師だよ」

「ま、魔術師!」

「声が大きい。と言っても全員霧也の知り合いだ。氷華って言う女の子は彼女だけど」

「そうなの?見た目と違って彼女持ちなの!」

 うん。やっぱり驚きだろ。よかった。俺だけじゃなくて。

「ちょっとあなたたち!」

 氷華だ。白い髪は前と同じだが前に会った時のような冷酷で冷たい雰囲気はない。キャリーウーマンのようにスーツ姿だ。服の右裾にはしっかり腕が通っている。魔術によるものだろうか?そんな氷華が血相を変えてこちらに向かってくる。特に武器も握っていないその姿は普通に働いている女性だ。

「何でここにいるのよ?」

 それをそのままおうむ返ししたいね。

「そちらこそなんでこちらの世界に?」

 代わりにアキが聞く。

「そ・・・・・・それは・・・・・・」

「それに関しては俺が説明する」

「あれ?霧也じゃん」

 なぜか霧也がいる。確か魔術の世界に帰るとか言っていた気がする。

「何でここに?」

「見ての通り。その・・・・ただ・・・・梨華に会いに来ただけだ」

 美嶋の顔が赤くなる。

「なんだか風上さんがいつもよりかっこよく見える」

「いつもより?」

 そうだな。氷華の前ではいつもより男らしく見える。

「お前ら俺のことをからかってるだろ」

 いいじゃないか。おもしろいし。

「氷山ちゃん!サボってないで仕事して頂戴!」

「は、はい!霧也!しっかり説明してね」

 そういって氷華は仕事に戻っていく。

「ねぇ?」

 美嶋が裾を引っ張って訊く。

「風上さんの名前って何?風上風也なの?風上霧也なの?風也霧也なの?」

 ああ、そのことでこんがらがってるのか。説明が面倒だな。

「また、今度説明してやるよ。内容的にはどうでもいいことだし」

「それはどういう意味だ?」

 そうか。なら余すところなく詳しく美嶋に話す必要があるようだな。さて、どこから始めようか。

「教太!それ以上何もしゃべるな!今度で飯でもおごるから!」

 分かった。自重しよう。

「え?何?教太は何か知ってるの?」

「り、梨華たちは組織の命令で俺たちと同様にこちらの世界で魔術師の探索を行っている!」

 これ以上美嶋に踏み込まれないように釘を刺した。うん、これからも氷華ネタで霧也をいじって行こう。

「そうなんですか。初めて聞きました」

「ここ1ヶ月の話だ」

「でも、あいつらがここで働いてる理由が分からないぞ」

「この世界で生きていくのにお金が必要だ」

 なるほど生活資金を稼ぐためにこうしてまじめに働いていたのか。

「そういえば、風上さんとアキはどうやって生活してるの?アキはいっしょにいる感じだと働いてるイメージないけど」

「私は何もしてないです。風也さんが稼いだお金で生活しています」

「何の仕事だ?」

 想像できない。

「たこ焼き屋さんです」

「「た、たこ焼き屋!!」」

 俺と美嶋が驚く。全く想像できない。

「な、何を余計なことを!」

「どこのたこ焼き屋だ!」

「教えなさいよ!アキ!」

「アキナ!絶対に言うな!頼むからそれ以上言わないでくれ!」

 なんだか霧也が泣きそうだ。霧也の最初のできていたイメージが日に日に崩れて行っている気がするのは気のせいだろうか?

「お、俺のことは気にせずに今日は3人でしっかり楽しむんだ!じゃ、じゃあ、俺はこの辺で!」

 霧也は逃げるようにトイレの方に駆け込む。逃げる方向のせいでなんだか痛い人に見える。

「さて、あいつらのことはほっておいて映画でも見ようぜ」

「そうですね」

「そうよね」

 俺は火輪からジュースとポップコーンをもらい金を払う。

「さぁ行きましょう!」

「行くわよ。教太!」

 二人に両手を引かれて上映されるステージに向かう。こんな羨ましい状況を誰が考えただろう。これも魔術に関わったおかげだろう。そうじゃなかったら俺はまだ無で何もアクションを起こさなかっただろう。魔術に関わったが今の魔術の関係の日常。これがいつまででも続きますように、そう願いを込める。

「二股なんて最低っす」

 あとで雷恥はどこかに埋めることとしよう。

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