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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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青影①

 気付いたら川辺で寝ていた。周りは真っ暗で橋の街灯と車のヘッドライトが明るく照らして神秘的だった。体を起してポケットから携帯電話を取り出す。時刻は午後7時ちょうどだった。あれから商店街を出て何をしたか覚えていない。それにしても驚きだった。

「あいつこの町に戻って来てたのか」

 城野香波。俺と同じ年だ。俺と同じ中学に入学して中2の時に親の仕事の都合で転校して以来の再会となる。ちょうど2年前になる。そして、俺が教術を手に入れる以前の無な存在になったのもちょうどそのころからだ。今のように家族と疎遠になり赤の他人も同様になったのもちょうどそのころだ。彼女との出会いと別れが俺のすべてが大きく変わった。

 思い出したくない記憶。ここ最近は魔術という非常識的なことの連続で記憶の片隅に埋もれていた。その魔術と関われない日々が続き、そして再会。記憶がよみがえる。

 考えるとますます気分が悪くなっていき考えるのを止める。

 立ち上がって近くに落ちていたバックを拾い、とりあえず美嶋の家に向かう。 さほど遠くもない場所だ。住宅街の裏道を使えばすぐにつく。

 美嶋の家のある一帯は開発が進んだばかりの地域だ。だが、開発の意見の食い違いなどが発生したために住宅の外壁との間が路地のようになっていて人一人通れる隙間が何カ所かある。それは地元民からすれば誰も知らない裏道だ。近道となる道もある。俺もそれなりに把握している。だが、時間帯のせいかその路地は薄暗く何も見えない。少し入り込むのに抵抗するが入って行く。

 家から差し込む光で多少は足元が明るくなっている場所もある。だが、先が見えないほど暗い。そんな暗い路地の先でポッと青色の光が見えた。それは揺れていて明かりというよりも炎のようだった。

「なんだ?」

 こんなところで小火が起こったら大変だ。こんな小道で消化作業は困難だ。自然と進む足が速くなる。だが、炎は何も事もなかったかのように消えた。

「あれ?」

 青い炎があったであろう場所までやって来た。確かにそこは黒く焦げた跡がありかすかに焦げた臭いがした。しゃがんで燃えカスを拾う。掴んだ衝撃で粉になって消える。なんだろう。俺の勘がこれは普通ではない気がした。この世界ではありえない何か。そう、魔術だ。

「近くにいるのか?」

 アキたちと一緒にいないせいでこっちに魔術師が来ているという情報を俺は持っていない。確信はないが3度の魔術が絡む戦場を生き抜いてきた俺の勘が告げる。魔術がいる。

 自然と両手に力が入る。だが、教術は発動する気配はない。

 その途端、俺の両手が震える。魔術師がいるかもしれない。だが、今の俺にはその魔術に対抗できる力がない。つまりそれは死を意味している。足は路地の外へと動き出す。俺の意思とは違う。生き物が持つ生への執着が俺の足を動かす。ここにいてはダメだと告げているのだ。

 いろんな葛藤のせいか俺は前を向いて歩いていなかった。誰かにぶつかる。

「す、すみません」

「いや、気にしなくていいよ」

 ぶつかったのはスーツ姿をした若い男だった。身長は俺よりも少し高く細身で髪も短くスポーツ刈りだ。その男が俺とぶつかって何かを落とした。それに気づいていないようだ。

「あの落としましたよ」

 そういって俺が拾ったもの。それはトランプよりも一回り大きいカード。それには見覚えがあった。そして、そのカードの中心には六芒星が描かれていた。

「ありがとう」

 そういうと男はカードを取り上げるように俺が奪い内ポケットにしまう。

 冷静に考えてみればこんな時間にスーツ姿の人がこんなところにいること自体がおかしい。そして、決定的だったのがあのカード。向こうは気付いていないようだが俺は気付いた。魔術師だ。本当にいた。

 相手は俺が教術師だと気付いていない。ここで俺が不意を突いた攻撃を仕掛ければあのカードは奪うことが出来るかもしれない。だが、カードはあれ1枚とは限らない。今の俺に魔術に対する対抗が何もできない。だからと言ってここでこの魔術師を逃がすわけにはいかない。

 俺は魔術師の後をつける。

 魔術師は人通りの多い道に出てごく自然に人の中に溶け込む。俺は人ごみから見失わないように魔術師の後を追う。携帯でアキに連絡を試みるが連絡がつかない。美嶋も同じだ。魔術師の探索でもしているのだろうか?なら、俺の目の前にいる魔術師についてもすでに分かっているのだろうか?俺には何もわからない。

男は駅前までやって来た。仕事終わりのサラリーマンたちがそれぞれの家に向けて足を急がせる中俺と魔術師はその流れに逆らうように駅の方に進む。そして、駅の改札の横を通り過ぎて線路をまたぐ連絡通路の一角にある椅子に腰を掛ける。机を挟んで反対側にも丸椅子が置かれている。近くに占いと書かれた看板が置かれていた。男はさっき俺が拾ったカードを取り出した。一枚だけではない。複数の束で持っていた。だが、今のあの男。教術師ではない俺が見るとすればただの占い師にしか見えない。あのカードも占いに使う物にしか見えない。

「勘違いだったのか?」

 柱の影から男を観察するとひとりの中年のサラリーマンが話しかける。一言二言その魔術師と会話をすると中年のサラリーマンは魔術師の正面の丸椅子に座る。魔術師はカードを混ぜて一枚ずつめくっている。それを見せて何か話している。どう考えても普通に占っているだけにしか見えない。

「やっぱり違うのか?」

 しばらくして中年のサラリーマンは満足そうな顔をしてお金を払い、何度か会釈をすると去っていった。

 気付けば連絡通路の人の数も減っていた。このままだと見張っている俺が目立って怪しまれる。特に変わった様子もなかったことだし引き上げようとした時だった。連絡通路にひときわ目立つ格好をした少女がいた。サラリーマンでもキャリーウーマンでも学生も服でもない。白いふりふりとしたワンピースに青色のジャケットを羽織った少女。その子を見た途端俺は元いた位置にまた隠れる。その少女は知っていた。それもさっき2年ぶりに再会した少女だ。

 城野香波だ。

 香波は例の魔術師と思わしい占い師の元へ一直線に進み椅子に座る。知り合いのようだ。さっきのサラリーマンのように一言二言会話を交わした後同じようにカードを引いて香波に見せる。そこまではさっきと同じだ。違ったのはここからだった。

 占い師は用意していたカードとは別に懐からカードを取り出した。そして、青い水晶のような宝石を取り出してカードの上に置いた。それから香波に話すと彼女の手から出てきたのはキーホルダーにチェーンのついた十字架だった。それを宝石の置いてあるカードに向かって打ちつける。

 あの動作は間違いなく魔術だ。さっきのサラリーマンには使っていなかった。もしかして、香波も・・・・・・魔術師なのか?

 多くの疑問が浮かぶ。だが、俺にはそれを確認できる手段はどこにもない。

 ふたりはその後行動を共にしてタクシーに乗り夜の街に消えて行った。もちろんそれ以上の尾行は事実上不可能になった。

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