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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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再会①

「オカマ。帰りにゲーセンにでも寄るぞ」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 なんで驚いてるんだ?

「どうした行かないのか?」

「いや!そんなことはない!行こうぜ!」

ウザいけど今はこれくらいしかすることがない。

「どうしたんだよ!今日は!最近そういう付き合いが悪かったから心配してたぜ!」

 美嶋はアキと霧也といっしょに魔術師がこっちの世界に侵入してきた穴の捜索をしていることだろ。昨日まで俺もそのメンバーのひとりだったが今日からそのメンバーにはずされた。よって、美嶋の家によっても誰もいないから入れない。アキの家も同じだ。自宅には帰りたくない。そう考え抜いた消去法で最もマシなのがオカマとゲーセンという結論に至ったのだ。

「今日は何する?最近、味方殺しのできるゾンビゲームの続編が出てな!やるか?」

「お前の金でな」

「いいよ!教太が俺の元に復活した祝いで今日は俺が全部金を出してやるよ!」

 豪快さだけは尊敬するよ。

 今日の捜索は何時くらいに終わるんだろう。家に帰る気にはなれない。それくらいだけでも聞いておこうか。

「・・・・・・・いや、いいか」

「行くぞ!教太!」

 オカマに言われてのんびり後を追うように歩く。

 昇降口で靴を履きかえて外に出るとポケットの中の携帯が震える。長く震えていなかったのでメールだろう。開いてみると美嶋からだった。魔術師探しに行ってくるという内容だった。帰りは7時くらいになるだろうという内容だった。

「気の利く奴だな」

 あいつ自身も仲間外れにされて嫉妬していた。そんな自分の嫌な状況に陥っている俺のことも考慮したメールの内容だ。

「俺にもこのくらいの気遣いくらいできたらな」

「どうした?教太?」

「話しかけるな」

「いつもの毒舌。ようやくいつもの教太だな」

「は?」

「いや、ここ最近付き合いも悪いのもそうだが何より魂が抜けたみたいに空っぽな感じがしたから少し心配だったんだよ」

 オカマに心配されていたのかよ。同じようなことを美嶋やアキに言われた気がしなくもない。俺の有の存在にした教術という力を失ったこと、俺が魔術に関われず美嶋が魔術に関わっていると逆転した立場に絶望する現実、家に帰っても相変わらずだったこと、嫌なことばかりでパンクしそうだ。

 だが、無の時と比べると俺の周りにもたくさんの人がいるものだと改めて思う。美嶋にアキに霧也に蒼井に一応オカマ。

「一応ってなんだよ」

 俺の日常は俺の知らないところで回っている。

「さっさと行くぞ」

「お前が遅いんだろ」

 オカマの文句を無視してゲーセンに向かう。商店街の方にあるゲーセンだ。駅前のある商店街もあってか俺たち以外の制服を着た学生もたくさんいる。それぞれが当たり前の日常を送っている。

 このどうでもよく、それでも楽しく最高の思い出となることを人は青春と呼ぶ。

 俺の青春は危うく魔術に染まるところだった。

 俺は魔術の世界の人間じゃない。魔術ばかり考えていたここ数か月。改めて思えば俺は異常だったんだなと痛感できる。美嶋やアキに普通に過ごせと言っている割には俺自身がその普通からかけ離れたところにいた。

 美嶋はそんな俺を守ろうとしている。少しこの時間を過ごして大切に思おう。

その時、道行く人と肩がぶつかる。相手は女子高生だ。制服は違うことから他校だろう。見覚えがなくもないから市内のどこかの高校だろう。女子高生は持ってたバックから手荷物が散乱する。

「すみません」

「こちらこそ」

 ふたりで散らばったものを片づける。

「ひゅ~ひゅ~。何やってるんだ?」

「すみません。ちょっと時間を下さい」

「へ?」

 オカマの顔面を殴る。

 何となく冷かしている気がして腹が立ったので殴る。ついでにここ最近ため込んでいた教術が使えないストレスと家に帰ったことによるストレスもいっしょに発散した。気分がいい。

「人を殴っておいて気分がいいとかどういう意味だ」

「あ。蚊だ」

 オカマの顔面を殴る。

「何するんだよ!」

「いや、蚊がいたから」

「拳で蚊を退治する奴なんて聞いたことないよ!」

 細かい奴だな。

「あ・・・・・・あの」

 おっと忘れていた。

 振り返ると女子高生は散乱した荷物を回収し終わっていた。

「本当にすみません」

 そこでようやく面と向かって女子高生の顔を見る。

 大きな瞳に低い鼻、プルンと下唇に髪はまっすぐとしたロングヘアー。誰もが認める美少女だった。はっきり言って好みだった。俺の青春がここから加速するのもいい。でも、それを許さないのがいるんだよな。美嶋とか。

「ごめんね。こっちからぶつかっておいて何もしなくて」

 すべての原因はオカマにある。あとで晩飯もおごらせよう。

 すると女子高生はじっと俺の顔を見つめる。

「な、何?」

「い、いや・・・・・・その」

 俺に見覚えでもあるのか?ここ数年しっかり関わって来た人間の数はかなり少ない。だから、俺の方が先にこの女の子が誰なのか気付くはずだ。誰だっけ?

『思い出せよ。教太』

 その時頭の中に激痛と共に響いた声。それはゴミクスによるものではない。あの白い無の空間で唯一色のあった建物の中に閉じ込められていた奴。キョウの声だ。何で今更。あれ以来まったく関わっていない。あれだけかと思っていた。だが、ここにきて声が聞こえた。

 そして、俺の中で固く鎖で封印されていた記憶が解き放たれる。その記憶の中に目の前に女の子に似た人物が出てきた。まるで目の前の女の子をそのまま大きくしたような子だ。その瞬間、俺の体中から変な汗が噴き出る。この子は確かに俺のここ数年の間に関わったことのある人物のひとりだ。そして、この子と絡むのはやばい。

「お、オカマ!早くいくぞ!」

 オカマの頭を鷲掴みにしてすぐさまこの場から逃げるように歩き出す。

「いたたたた!教太!止めろ!」

「教・・・・・・・太・・・・・・」

 不味い。

「その腐った口を動かすな!」

 腹を殴る。

「俺がいつ教太に何をしたっていうんだ」

 そんな条件なくてもいつもこんな感じだろうが。それよりも俺の名前をそれ以上呼ぶな。向こうはまだ気づいていない。早くここから立ち去るんだ。

 さっさと俺は歩き出す。

 だが、それを妨害する女の子の呼び声。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 その声は女の子の声にしてはよく通り俺の耳に刺さるように伝わる。早く立ち去りたいのにその声がまるで金縛りの呪文のように足の動きを止める。そして、振り返る。

 女の子は恐る恐る聞く。

「もしかして・・・・・・・キョウ君?」

「は?キョウ君?」

 オカマは反応しなくていい。

「キョウ君なの?」

 俺のことをそんな風にして呼ぶ奴は生まれて15年間でたったひとりしかいない。それは遥か昔に呼ばれていたあだ名。もう、呼ばれることのないあだ名。そんなあだ名をつけてくれたもう会うことのないだろうと思っていた人物。

「か、香波?」

 俺がそう呼ぶと恐る恐るとした表情がパーッと明るくなる。

「やっぱりキョウ君!久しぶりだね!」

「あ、ああ。マジで久々だな」

 向こうは親しげに話してくる。だが、俺はここで話さずにこの場を早く立ち去りたい。

 俺の意思と記憶と体が彼女との距離を必死に開けようとする。これ以上近付いてはいけない。親密になってはいけない。魔術師との戦いとは比べ物にならない緊張感が俺を背負っている。

「初めまして。自分は岡真広と言います」

「え?」

 オカマは何してやがる!

「この町一のイケメンと言われても過言ではございません」

 この町一のブサイクと言っても過言じゃないぞ。

「ぜひ、マヒと呼んでください」

 ベストスマイルをしたつもりなのだろうが、香波はなるべく直視しないようにしている。顔も完全に引きづっている。というかこの子と関わるなよ!

「おい!麻痺!早くいくぞ!」

「変な漢字が違う!」

「ちょっとオカマ君。退いてくれる」

「何?俺の名前はもうオカマだって統一されてるの?」

 世界でな。

「キョウ君。なんで逃げるの?」

 俺は目を合わせない。以前に会ったよりも顔立ちも大人っぽくなり元々かわいかった顔に大人らしさが加わっている。体つきもすっかり女の子だ。出るとこで出てしまるところでしまっている。誰が見てもう見ても完璧な女の子だ。だからこそ、見てはいけない。そうしたらまた・・・・・・。

「オカマ!行くぞ!」

「ちょっと!キョウ君!」

「オカマ!俺は先に行くぞ!」

 俺は香波に背を向けていく先も決めずにただ走り去る。たくさんの人にぶつかった。その際に荷物が散乱した人もいた。でも、俺は謝りもせずに商店街から逃げるように出る。

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