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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
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日常④

 目が覚めると部屋は暗闇に支配されていてカーテンの閉められた窓からは月の明かりが差し込む静かな部屋。住宅地の真ん中で車のエンジンの音もなかなかしないのでこの場所が一番落ち着ける場所だ。

「結構寝てたな・・・・・・」

 思ったより疲れていたのかもしれない。それは死ぬかもしれない状況下にいたのだから仕方ないだろうと冷静分析。

「・・・・・・・・・・ん?」

 俺の膝で気持ちよさそうに寝ている美嶋。

「何してんだ?お前は?」

 スキンシップの多い奴だ。こういうことをしていても抵抗ない。俺は抵抗がある。というか起きて美嶋の膝上だったらたぶん冷静でいられないような気がする。

「近くに枕的なものは・・・・・・・」

 このままだと身動きが取れない。

 手の届く範囲に枕になるようなものを探していると闇の中で何かがうごめいていた。暗闇に目を慣らしていくと部屋にある唯一の机に置いてあったおにぎりに食らいつくあの子がいた。女の子らしからぬ大口をあいて口周りにはたくさんの米粒がある。

 口の中いっぱいにしたその子が俺と目があった。

 しばらく、固まった。すると慌てて何かを探し出した。たぶん、手荷物だろう。

「ちょっといいか?」

 美嶋が起きない程度の声を掛けると体をビクンとさせてゆっくりとこちらを振り返った。

 疲れ切っていた時とは違ってしっかりと開いた黒くて透き通ったような瞳にさっきとは違って髪を下した時の黒髪のセミロングは印象を大きく変える。というか結構美人さんじゃね?

「あのさ・・・・・・・。そこの枕とってくれない?」

 俺が指差した枕はその子が寝ていた布団の枕だ。その子は俺の目をもう一度見て枕を確認すると、それを俺に渡してきた。

「ありがとう」

 美嶋から俺の膝と枕を交換した。美嶋を起こさないように慎重に変え替える。何でそんな緊張をしないかというと、まるで妖精みたいに気持ちよさそうに寝ている美嶋を起こすやつとかたぶん人間じゃないからだ。その緊張感をその子も味わっていた。慎重に美嶋の頭を浮かして俺は横に移動。完了したら、枕を敷いて浮かした頭を枕の上に静かに置く。成功する俺たちはお互いに安堵する。

再び目が合う。

 すると自分がやろうとしていたことを思い出したのか枕元に置いてあったバッグと杖を持って玄関の方に走った。俺はそれを阻止するためにその子の足をつかんだ。もちろん、その子はバランスを崩して転倒した。しかも、派手に物音を立ててだ。

 まずいことをしたと思って寝ている美嶋の方を見る。変化なし。大丈夫のようだ。

 その子は掴まれた足を振り払おうとバタバタと暴れるがだんだん弱々しくなってきた。最終的には大人しくなってしまった。そういえば、さっきの顔からこけたが大丈夫だろうか?

「大丈夫か?」

 俺がそう聞くとその子は声で鳴くお腹で返事をした。かわいらしい音だったので俺の方まで恥ずかしくなった。

 お腹の音を聞かれて恥ずかしいのか再び足をばたつかせて暴れる。かわいそうになって来たので足を離す。急に自由になった足の脛が柱の角に直撃した。するとその子はその場でうずくまってぶつけた脛を押さえる。涙目になっている。

「おい、大丈夫か?」

 2回目である。

 しかも、今度もお腹で返事をした。どうやら、会話をする気はないようだ。しなくても何をしてほしいのか分かってしまう。分からない方が変かもしれないかもしれない。

「飯でも食うか?」

 俺がそういうとその子は目線を外して悩んだみたいだが頷いた。

「よし」

 俺は立ち上がって玄関に向かう。その子もついてきた。

 しかし、これは俺が思っていた以上にいい展開かもしれない。美嶋に訊かれないで俺に背負わされたものを知ることが出来る。なぜか、美嶋には聞かせたくないと思った。それはウルフから逃げたときに感じた危険な予感だ。美嶋を巻き込むわけにはいかない。

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