表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
89/163

現状③

 夕方でも春先と比べると日がまだ高く明るく感じる。学校帰りの放課後、オカマの追跡を振り切り俺は美嶋とアキを連れてすべての始まりの場所であるあのショッピングセンターにやって来た。未だに火災によって丸焦げで所々に穴が開いて崩落している状態だ。謎の爆発と火災の原因は未だに分かっていない。俺たちはもちろん知っている。美嶋もアキに説明を受けて知っている。このショッピングセンターは閉鎖中で誰も入ってこない。都市伝説による影響もあってか誰も近付かない。そんなここで俺たちは霧也と合流するためにやって来た。

「今日は少し遅いか?」

「そうだな。オカマを振り切るのに苦戦した」

 霧也は二階の瓦礫の上で暇そうに待っていてくれた。

 最近あいつも学校に来るようになった。来てもほとんど寝ているからいないに等しいけど。

 俺は制服のネクタイを外してバックと共に美嶋たちの近くに置く。

「今日もやるのか?」

「当たり前だ」

「なら、仕方ない」

 霧也はバットケースを投げ飛ばす。美嶋たちの近くに落下して刺さる。ふたりとも驚かない。最初は驚いていたけど、毎日同じようなことをしているので慣れてしまっているようだ。

 俺はカッターシャツの腕まくりをして少しでも動きやすい格好になる。霧也は右風刀の代わりに木刀を構える。そして、カードと十字架を取り出し木刀に魔術を発動させて宿らせる。右風刀でやってしまえば俺が斬り殺されかねないからだ。だから、木刀でやってもらっている。

「じゃあ、行くぞ」

「こい!」

 霧也は木刀から吹き荒れる風を機動力に突っ込んでくる。

「発動しろ!俺の力!」

 両手に力を込めて走り込んで突っ込んでくる霧也を迎え撃つ。霧也が木刀で斬りかかってくる。俺はそれを両手で受け止めようとする。ここで力が発動していれば木刀を破壊して攻撃を不発に終わらせることが出来る。だが、両手からいつも黒い靄が発生しない。

「なんで!」

 俺はなんの抵抗もできずに霧也に斬り飛ばされる。風魔術が発動した状態だったためにかなりの距離を飛ばされる。受け身をとって衝撃を少しでも抑える。

「受け身だけうまくなっていくな」

「うるさい。もう一丁来い!」

「たく」

 今度は走りこんでくる。木刀は下に構えたまま俺に近づいて振り上げてくる。俺は左手で右手首を掴む。

「木刀のみを破壊しろ!無敵の短刀(デストロイ・ダガー)!」

 何も起こらない。俺はそのまま霧也の攻撃をもろに食らう。体が振り上げられて地面に落下する。

「痛っ」

 痛みに耐えて立ち上がる。

「まだだ!」

 霧也が今度は風を使って突っ込んでくる。木刀の突きを交わして木刀の側面を狙って殴る。だが、俺の手が木刀を殴った衝撃で痛むだけで木刀は何ともない。突きが不発に終わった霧也は風を使って切り替えして俺の頭上から木刀を振り下ろしてくる。俺は両手でそれを防ごうとする。だが、その木刀の攻撃重く威力があり。そのまま体が地面に叩きつけられる。唇が切れて血が出る。

 俺はそれをぬぐって立ち上がる。

「まだだ!」

「もうやめよう」

 霧也はバットケースを取りに美嶋たちのもとに向かう。

「待て!俺はまだ戦える!」

「戦えてないだろ!」

 霧也にそう怒鳴られる。

 霧也はバットケースを肩にかけてショッピングセンターを後にする。静けさが建物全体に広がる。

「チクショー!」

 地面を思い切り殴る。痛みが拳を伝わる。それで涙目になる。拳から血が滴り垂れる。

「教太さん。大丈夫ですか」

 正直言おう。大丈夫じゃない。こんな怪我は大したことない。だが、心の方がもう限界だ。今のようなことを俺は毎日行っている。教術が発動しなくなって半月だ。俺の意思が発動のブレーキをしていると予想した霧也は自分の危機に陥ったら発動できるのではないかと睨んだ。だから、こんな教術が発動しない状態でも魔術師の奇襲があれば駆けつける。だが、戦う術がない今の俺はただのお荷物だ。そこで今日のように霧也と命の取り合いに等しい修行的なことを毎日している。効果は全くない。俺はあきらめずにこの修行を毎日やっているが、霧也は無駄だと考え次の作戦を練っているらしい。

「どうしたんだよ」

 アキが俺に回復魔術を施す。小さな傷が治っていく。でも、この回復魔術が治せるのは外傷だけだ。

「大丈夫ですよ。きっと明日には発動できますよ」

 これも半月の間毎日のように聞いている。

 俺も思っているよ。このスランプも今日で終わりだ。毎日、寝る前に何度も考えてるよ。でも、この半月何もないんだよ。ゴミクズに原因を聞きたいが何も言ってこない。俺の体を使って出てきたせいで俺と会話できるだけの魔力がない状態なのだろう。となると2か月近くはあいつの助言を借りることが出来ない。

「アキ」

「なんですか?」

「アキにもスランプとかあったか?」

「わ、私は・・・・・・その・・・・・・」

 その言い方だとないみたいだな。

「教太」

「なんだよ」

「あんた休みなさい」

「は?」

「こっちにくる魔術師は風上さんとアキとあたしでなんとなするから」

 確かに最近の美嶋はもう化物並みの強さだ。属性魔術に絶対的強さを誇る。ほとんどの魔術師が魔武に属性魔術を絡めた攻撃がほとんどだ。だが、すべての属性魔術をその手の内に納めている美嶋に属性魔術は無駄だ。そんなチートのような強さを誇る美嶋だが、俺はこの美嶋を守るために今まで戦ってきたんだ。

「嫌だね」

「いうと思ったわ」

「でも、休みなさい。あんたは魔術と関わりだしてから戦い続けてるんでしょ」

「それは俺だけじゃない。アキや霧也だって」

「ふたりは魔術の世界の魔術師よ!あんたはこの世界のただの不良モドキなのよ!教術師になったもの偶然じゃない!」

 確かにそうだ。

「しばらく、ただ暇で平和な教太に戻ったら?最近ゲーセンもいかなくなったんでしょ?」

 確かにアキに会ってからオカマとつるむことが少なくなった。それはイコールゲーセンに行かなくなるという方程式が出来る。

「私も秋奈さんに賛成です」

「アキまで」

「教太さんは今まで無理をし過ぎたんです。少し休憩をとっても」

「いや、ここ最近の魔術の狙いは俺だぞ!」

 この半月で襲ってきた魔術師は皆共通して俺をターゲットして襲ってきた。その魔術師は傭兵だったり、犯罪者だったり、別組織の魔術師だったりと共通点がなく裏でマラーが関わっている可能性もあったが情報はつかめないでいる。アキ曰く、作戦が単調だから違う可能性もあるという分析だ。

「なら、あたしが守ってあげるわよ」

「え?」

 美嶋に言われた。

「今まであんたがあたしを守り続けてきたんだから恩返しよ。今度はあたしがあんたを守る番よ」

「でも」

「大丈夫よ。アキに魔術師専用の用具とかももらったし」

 美嶋の腰にぶら下がっているカードの束。十字架を打ちこんでそのまま下に引きはがせば新しいカードに変わる。安易な作りだが美嶋のように場面に応じて魔術を使い分ける魔術師には必須らしいのだ。右に炎と水。左に雷と風。それぞれ組み合わせの相性がいい者同士を分けてまとめてある。土と氷は別に束ねて持っているらしい。

「だから、教太はゆっくり休んで。そしたら、またあの圧倒的に強い教太になってまた戻ってきて」

 今は美嶋がすごく大きく見えた。

 魔術を手に入れてから全体的に明るくなった気がした。生き生きしていると表現してもいいだろう。それが魔術のおかげならいいかもしれない。でも、美嶋はまだ魔術の残酷さをまだ知らない。俺も知ったつもりで本当は知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ