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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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現状②

 静まり返る夜。星々がそれぞれの輝き誰もが落ち着ける雰囲気を醸し出す夜。そんな夜の街に胸に響く低い轟音が鳴り響く。音の出所に俺はいる。

 足場は砂利でちょっとしたことでこけてしまいそうだ。川を登るように俺は走り続ける。これは走るのではなく逃げているのだ。足場が悪くこけないようにするために疲れが通常よりも増す。その成果息が上がるのが早い。

「ニャハハハハ!その程度か!国分教太!」

 俺の背後を追いかける。人物は全身黒いマントで覆っていて見えるのは顔だけの男。だが、そのマントの外からでも分かる筋肉の質。でも若干オカマ。だが、それだけなら関わるのは止そうと思うだけの人間だ。奴はこの世界の住民ではないのだ。結論から言うと。

「食らいなさい!氷の檻(アイス・サークル)!」

 俺を囲み閉じ込めるように円状に氷の檻が発生する。俺は両手に力を入れて教術を発動して氷の檻を破壊しようとする。だが、いつものように両手に黒い靄が出てこない。ただの拳の攻撃が氷の槍に当たるが俺の手が痛み冷えるだけに檻はびくともしない。

「くそ!」

「ニャハハハハ!終わりよ!国分教太!」

 オカマ魔術師はカードに十字架を打ち付けると氷の投げやりを作る。普通に魔力だけで打ち込むよりも自分の持っている筋力も加えて投げたほうが威力がでる。まるでやり投げの選手のように氷の槍を構えてオレに向かって投げ込む。

「ちぇ!さー!」

 やり投げの選手にしか見えない。

 槍はオカマ魔術師の投げ体力と魔力による撃ち出しによって地面の砂利が巻き上げながら閉じ込められた俺に向かってくる。

 俺は左手で右手首を握る。

「無敵の槍!」

 反応がない。

「俺の意思に答えろ!無敵の短刀(デストロイ・ダガー)!」

 だが、反応がない。

「・・・・・・どういうことだよ」

 力が発動しない。理由は分からない。そもそも力が発動していればこんな低能な魔術師から逃げないで済んでいた。氷は物体を持つため俺の力と相性がいい。でも、それは発動しないと意味を持たない。

 どうしたんだ?俺は?

 氷の槍が俺を閉じ込める檻の前の到達した瞬間空から火炎弾が落ちてきた。地面に当たるとそこを中心に炎が飛び散り爆発する。

「なに~!」

 氷の槍は炎の熱と爆発による衝撃で消え去った。氷の檻も同じように破壊された。

「やっと見つけたわよ」

 空から美嶋は降りてきた。足に風を纏っている。風属性魔術を発動して足に宿しているのだろう。風属性は攻撃力よりも機動力に長けている。逆に火属性は攻撃力は高いが機動力はないに等しい。その属性魔術の性質的弱点ともいえるところを補うようにすべての属性魔術を同時に発動できる魔術師。それは美嶋秋奈だ。

「教太さ~ん!」

 後ろからアキが走ってやって来た。

「アキ」

「あんたって本当にアキの方がいいのね」

「いや、そういうわけじゃないって!」

 アキはか弱い女の子だぞ。お前みたいな最強な女じゃないんだよ。何て言ってみろ。冗談抜きで殺される。

「教太さん!怪我はないですか!わぁ!」

 アキが砂利に足をとられてこける。

「おい。大丈夫か」

 俺が駆け寄る。

「ちょっと教太。そんなにアキのことがかわいいの?あたしにも何か言うことあるでしょ!」

「いやいや、あんたらこっちの魔術師のこと忘れてない?」

「アキ。膝から血が出てるぞ」

「本当よ!結構な量の血が!」

「ぜ、全然大丈夫です!このくらい」

「泣きながら言われても説得力ないよな?」

「そうよ。見せてみなさい」

「ちょっとあんたたち?」

「ただの擦り傷よ。あたしの回復魔術で治してあげるわよ」

「あれ?美嶋って無属性も使えるのか?」

「簡単なものはね」

「注目しなさ~い!」

「それより秋奈って呼びなさいよ」

「いや、なんだか恥ずかしいというか」

「は、恥ずかしいって!じゃあ、なんでアキは下の名前で呼んでるのよ!」

「私の場合は最初の自己紹介でアキとしか名乗ってなかったので」

「じゃあ、あたしもそうすればよかったわね」

「こっちに敵がいるわよって言ってるでしょうが!」

 氷の槍が飛んでくる。

「うるさいわね!」

 美嶋が左右の腰にキーホルダー用の丸カンでひっかけてあるカードに向かって同時に十字架を打ち込むと右に炎、左に雷が発動。この混合属性魔術攻撃が撃ちこまれる。氷の槍は炎の熱と雷の電撃で破壊されてそのまま魔術師の元へ。

「待て待て待て待て!待って~!」

 爆発する。爆煙はすぐに晴れてオカマ魔術師が白目をむいて倒れていた。

 まさに、

「化物かよ」

「何か言った?」

「いえ何も」

 美嶋はすべてに魔術を使うことが出来る。普通ならあり得ないそうだ。その魔術の基礎値の高さが魔術の戦いにおける経験値を補っている。そのために今回のような魔術師の奇襲にもこんな余裕をかまして対応することが出来る。

 ちなみに研修が終わって半月ほどたつ。夏を感じさせるように蒸し暑い夜が続く。この半月であのオカマ魔術師を含めて4人の魔術師が襲ってきた。ランクは平均してCと決して弱い魔術師じゃない。だが、その4人の魔術師をすべて美嶋だけの力で倒している。

 俺に関してはあの一件以来教術が発動しなくなってしまった。原因は不明だ。だが、霧也とアキはこう分析する。教術は魔術よりも術者の感情や意志に影響がされやすい。イサークとの戦いではそれがプラスに働き無敵の短刀(デストロイ・ダガー)無敵の拳(デストロイ・ナックル)といった俺のスタイルに合わせた教術が発動した。今回の場合はその感情、意思がマイナス面に大きく影響された。ふたつの約束の破綻。特に俺の心に大きく響いたのがこの手でイサークを殺してしまったことだ。その人を殺してしまったという強い感情、意志に教術が答えて力の発動を抑え込んでしまっているのだ。

 確かに霧也やアキの言うとおりだ。俺はイサークを殺した。そして、この力を使うことでまた人が死ぬ。その怖さにおびえていた。それは俺自身もそうだが、何より今までの戦いを支えてくれたゴミクズでさえ心に傷を負った。

 美嶋に頼りっぱなしではいつか美嶋にも対応できないような魔術師や教術師が現れたらどうしようもない。焦りが俺を狂わせる。

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