現状①
国分教太は言いました。「魔術を壊してやる」と。
駿河ギンは言いました。「テストを壊してやる」と。
ようやく4部が完成しました。上記にもあるように地獄ようなテストの現実逃避にこの話を書いていったら気付けばかなりのペースで書いていました。
今回はお話が中心になっています。戦闘は少なめのつもりです。
もともと、今の駿河を名乗る前はこの部のような話ばかりを書いていました。また、機会があればあげようと思います。
誰もがひとつは消したいという記憶があるはずだ。
その記憶は誰にも触れられないように自分でも忘れるために記憶の奥底にしまい込む。だが、その記憶はふっとしたことで鮮明に蘇ってしまう。消したい記憶というのは積み重ねてきた記憶の中で最も印象が大きく無意識に覚えてしまっているのだ。
俺にも消したい過去がある。その過去は2年経った今でも・・・・・・。
「ごめんね。もう忘れるから」
「そうだな。すまない」
ふたりは夕日の差し込む階段の踊り場交わした言葉。少女は下の階へ。少年は上の階へ。それぞれが別の階へと向かう。まるでこれからもう関わらず別の道を歩いて行こうという意思が表れているようだ。
「さようなら」
少女は言うと少年は振り向かないまま言う。
「・・・・・・さようなら」
それで俺は思うのだ。もっと、別の出会い方をしていれば・・・・・・そうすればもっと・・・・・・。
そこで俺の目がいつも覚める。
「またか・・・・・・」
重たい体を起す。
俺は廊下の床にかけ毛布一枚で寝ていた。服装も寝間着ではなく制服のままだ。全身がきしむように痛い。もうこんなところで二度と寝ないことを心の中で決めた。起きたばかりなのに肩が凝ったように痛い。効果があるのかないのか分からないが適当にもんでみる。
そんな時、廊下の扉のひとつが開く。中から出てきたのはカッターシャツにチェックのスカート姿の女の子。髪は長く腰付近まである。普段ならその髪を二つに束ねて前に送るような髪型をしている。その子は俺の姿を見るとまるで他人のような眼差しで冷たく見つめる。そして、そこには何もいなかったようにスルーして階段を使って一階に下りていく。
あれは俺の妹、国分文香。年は俺の二つ下だから13だと思う。血もしっかりとつながった実の妹だ。でも、俺はあいつとここ2年近く会話をしていない。
気にしたことではない。痛む体を起して玄関に向かう。俺が寝ていたのは2階。玄関はもちろん1階だ。この家から出るには玄関から出るしかない。1階に降りてすぐ正面にはトイレがある。そのトイレから出てくる寝間着姿の初老の男。俺と肩がぶつかるがまるで何もなかったかのように視線も向けずリビングの方に歩いていく。
あれは俺の父。国分教平。文香と同じように2年近く口を聞いていない。頑固なジジイだったから一度やる決めたことは最後までやり遂げる奴だ。文香もそういうところがあのジジイと似たのだろう。
リビングには向かわずに玄関に向かう。靴を履いてこの家から出ようとすると扉が開いた。家に入って来たのはエプロン姿の女の人が入って来た。
俺の母。国分文子。見た目と10は若く見える。文香といっしょに歩いていれば姉妹と間違われることもあるのだと言っていた。と言ってもこの情報は2年前で今はどうだか知らない。だが、2年経っても若く見える。
そんな母と目がある。すると母は・・・・・母さんは。
「おはようございます」
笑顔で軽く会釈して俺の横を通りサンダルを脱いでリビングに向かう。
文香やジジイの方が母さんよりマシだ。母さんは俺を近所ですれ違う人と同じ扱いで接する。他人行儀で当たりざわりはいい。だが、腹を痛めて生んだ子供をまるで他人のように挨拶をする。息子なのに。
そこに一番腹が立つ。
靴を履き玄関から出てすぐに家の敷地から出る。振り返る。
その家は集合住宅の中にあるごく一般的な家だ。だが、俺はその家の国分と書かれた表札を思い切り殴る。石でできた表札はびくともせず逆に俺の拳から血が出る。
そんなことを気にせずに俺はそそくさと歩き出す。
これが俺の家での扱いだ。
廊下で寝ていたのも俺の自室が物置になっていて寝る場所がなかったからだ。俺の私物は外の納屋の中にしまってあった。もう、俺はあの家の住民じゃない。そんなことを言わずに語られている気がした。それでも俺は月に2、3回というペースで家に帰宅している。だが、歓迎するものは誰もいない。すべては2年前の事件が原因だ。
俺と家族に大きな溝を作った大きな事件だ。




