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想い届け⑦

 敵を初めて倒した。でも、そんな意識をしてやったことじゃない。体が勝手に反応した感じだった。向こうもシンだけじゃないみたいで安心した。

「秋奈さん!次が来ますよ!」

 それぞれ剣を構えた魔術師が攻めてくる。あたしは火の弾をその魔術師を狙って撃つ。でも、命中率が悪く火の玉は外れてはるか後方で爆炎をあげて爆発する。戦闘を走る魔術師の剣からは雷が発生している。その剣であたしに斬りかかってくる。

 そこであたしは気付く。ここでは本気で命の取り合いをしているのだと。教太はこんな戦場にあたしを連れて来たくなかったんだと改めて分かった。でも、それは教太だけじゃない。あたしも同じ。あたしも教太を助ける。今ある魔術の呪縛をあたしが全部壊して解いてあげる。そのためにあたしが強くならないといけない!

 魔術師の斬撃をアキが杖を使って受け止める。

「秋奈さん!氷です!」

 言われるまでもなく氷の魔術の使えるカードを取り出して十字架を打ちつける。あたしの左手に氷の結晶が塊になり、内大きな3本の結晶が襲い掛かる魔術師に撃ち込む。

 アキは魔術師の攻撃を振り払う。そこにあたしの撃ちこんだ氷の結晶が飛んでくる。魔術師は剣で弾こうとするけどあたしの氷の結晶の方が威力があり剣を粉々に砕く。それを見たアキが杖でカードを打ち込んで魔術師を攻撃する。その杖には紫色の電気が流れている。その杖で殴られた魔術師は気絶した。

 そのアキの頭上に別の魔術師が斬りにかかる。その魔術師を同じように氷を打ち込む。だけど、その魔術師の剣からは勢いよく火が灯りあたしの氷を溶かし砕く。その隙にアキはあたしの元まで後退してくる。

「秋奈さん」

「分かってるわよ」

 氷の魔術を解いて別のカードを打ちつける。あたしの右手のひらを中心に青色の円が発生する。その中心は四角形が描かれている。その円の中心から水が噴き出る。直接的なダメージはないけど剣の火が消える。でも、水を出し続ける。

「行きますよ!」

 噴き出る水に電気が流れている杖を突っ込むと電気の威力が大きくなり魔術師を襲う。電気が魔術師に届くとバンと音を立てて水が蒸発する。その蒸気の中から魔術師が落ちて来る。意識を失っている。

「なかなか連携でしたね」

「そう」

 なんというかアキの考えていることが分かる。分かるというかあたしと考えていることが同じのような気がする。それはこうやって魔術を絡ませる前から感じていたことだ。服のセンスとか学力とか。

「なかなか面白いことをするな」

 待っている蒸気の中からもうひとり男の人が出てきた。髪の毛はぼさぼさとしている。そして、その眉間にしわが寄っていてあたしに突き刺すような鋭い目線を送っている。

「秋奈さん」

「何?」

「あの人は今までの魔術師と同じだと思わないでください」

「もしかして、あいつらのボスなの?」

「まぁ、そんなところだ」

 するとさっき水と電気の攻撃をして気を失った魔術師がボスの足首を掴む。それに気づいたボスはしゃがむ。

「イサーク様。自分の魔力を使ってください」

「・・・・・・いいのか?」

「自分も魔術師として生かしてください」

「・・・・・・分かった」

 ボスはそんな会話を部下の魔術師と交わした後左手で魔術師の首元を掴む。

「秋奈さん!イサークさんに攻撃してください!」

「え?イサーク?」

「あの男の人です!」

 アキは杖を構えて突っ込んでいく。様子がおかしい。焦っている。何か他とは違うところがあのボス、イサークにはある。

 あたしは水の魔術の発動を解いて氷の魔術を発動する。そして、イサークに向かって撃ち込む。それに気づいたイサークは右手で炎を超してあたしの氷の結晶を溶かす。その火の中を突っ切るようにアキが杖で攻撃する。イサークはその攻撃を部下を投げつけて防ぐ。アキの攻撃はぐったりして動かない部下に当たる。イサークはその隙に下がる。アキはイサークが投げた部下を保護するように抱きかかえて地面に転がるように着地する。全身が泥だらけになるもそんなことを気にせずに部下の人を心配そうに様子を確認する。

 するとアキが表情が暗くなり優しく部下を地面に寝かせる。

「どうしてですか?なんでですか?」

「・・・・・・・・」

「あなたは味方をましてや自分を尊敬するような部下を殺すような人じゃないでしょ!」

 その言葉を聞いてあたしはアキが抱きかかえていた部下の方を見れなくなった。

 さっきまで生きていた人が死んでしまっているということをこの目で確認したくなかった。震えが止まらない。これが命の取り合い。でも、イサークはなんで部下を?

「殺したわけじゃない」

「何を言っているんですか?」

「そいつは生きている。俺の中で魔力なってな」

「・・・・・・それは・・・・・・それは」

 魔力となって生きているって?

「あんた自分がしたことが何かちゃんと分かってるわけ!」

 アキよりもあたしの方が先に言葉が出た。

「人を殺したのよ!あんたの使う魔術がどんなものか知らないけど、その部下の命は絶たれて死んでるのよ!あんたそのこと分かってそれ言ってるの!」

「・・・・・・秋奈さん」

 イサークは下を向いてこっちに目を合わせようとしない。

「確かにそうだよな」

「何か言った?」

「オレは自分に力がほしいだけだ。すべての属性魔術をこの手で使えるようにすること。それがこいつらから魔力を奪った理由だ」

 なるほどね。どんな魔術を使うのか知らないけど、人を殺したのは私的な理由なのね。

「あんたは許さないわよ!」

 あたしは水の魔術でイサークを攻撃する。アキは一歩横に移動してあたしの射線から外れる。水は一直線にイサークに向かう。

「ありがとうな」

「え?」

 イサークは左手であたしの水の攻撃を受け止める。すると水が左手に吸い取られている。イサークが左手を振りほどくとパチンと水の魔術の陣が壊される。

「え?」

「これがお前の魔術だ」

 今度は右手をあたしの方に向けると同じように陣が発生してその中心から水が噴き出る。その水の威力はあたしの物とは比べ物にならないほど強く、地面をえぐるように向かってくる。

「秋奈さん!」

 アキがあたしを押し出す。その水の攻撃をあたしの代わりに食らってしまう。

「アキ!」

 水に押されるアキは木にぶつかってようやく止まる。ゴホゴホとせき込む。

「あんたね!」

 あたしは雷の魔術を起こして右手に宿らせる。そして、イサークまで走って攻撃を仕掛ける。

「お前オレのことについて何も聞いてないのか?」

 あたしの拳の攻撃を簡単に交わして軽く額を殴る。それは明らかに手を抜いているのが分かった。でも、頭がくらくらして足元がふらついた。

「さて。いったい何の属性の魔力が吸収できるのか楽しみだ」

 左手であたしの首を掴みあげる。

 足がつかなくなり首を縛られて苦しくて暴れる。

 死ぬ。殺される。足元にさっきの部下が転がっている。目を閉じて顔色が青白くなり呼吸もしていない。あたしもそうなる。嫌だ。絶対に嫌だ!

 その瞬間、あたしの首を絞めているイサークの左腕から血が噴き出る。血が宙を舞う。

「は?」

 イサークもなんで血が出たか分かっていなかったようだ。首は縛られたままだけどあたしは力を振り絞って雷が発動したままの拳でイサークの肩を殴る。バンと大きな音を立ててイサークの肩から煙が上がる。その衝撃にイサークはあたしから手を離す。吐くことも吸うことも困難な状況から出したあたしはせき込み呼吸を整える。イサークは雷の攻撃よりも腕から噴き出た血による怪我の方が痛むようで押さえている。

「お前、今何をした?」

 あたしが知るわけないじゃない。

「秋奈さん!目を閉じて!」

 アキの声がして慌てて目を閉じると目の前で何かがとんでもない光を出して光った。

 次に目を開けるとイサークが後退していた。その左手の腕の怪我を気にしているようだ。

「おい、アキナ」

 え?あたし?

「なんですか?」

「そいつのメインの属性はなんだ?」

「私にも分かりません」

「そうだよな。吸収できていればどれがメインか分かるよな」

 イサークは左手を掲げる。何かを確認しているように。

「まぁ、いいか。吸収できないわけじゃないから」

 何か吹っ切れたようにあたしたちに睨む。

「ねぇ、アキ」

「なんですか?」

 いろいろと訊きたいことがあった。でも、今の状況からすれば最初に聞くことはこれ。

「あのイサークは魔力とかいうものを吸収するの?」

「はい。さっき秋奈さんが吸収されそうになりました。本来はあのように吸収するのが効率がいいですね。他にも遠距離の魔術も吸収して自分の物にします」

「それって一種類だけ?」

「え?・・・・えっと確かにそうですね。別の属性魔術を同時に吸収できないですね」

「そうなの」

 アキは使う魔術の威力が弱い。初心者のあたしにも分かる。だから、アキに手伝わせるわけにはいかない。

「アキ。少し下がって」

「待ってください!教太さんや風也さんが来るまで時間を!」

「同時に別の属性で攻撃すればあいつはあたしの攻撃を防ぐことが出来ないわね」

 あたしは2枚のカードを用意する。

「秋奈さん!説明しましたよね!別の属性魔術を同時に発動することはできないですよ!属性魔術同士が打ち消し合って干渉します!意味ないですよ!」

 やってみないと分からないじゃない。納豆やチーズも食品が腐ってできた物よ。それを誰かが勇気を持って食べたから今でもおいしく食べられている。できないと決めつけているから誰もできないのよ。それにあたしはすでに土属性以外の属性魔術を使うことが出来る。別荘を探す前に検証した時に風も使えた。土属性は持ち合わせていなかったからまだ試してない。

 それは魔術の常識から外れていると言われた。なら、それ以外にも外れたところがあってもおかしくない。昔からあたしは誰かと少しずれていた。お父さんがいて社長令嬢を語っていた時もみんなと違っていた。その社長令嬢じゃなくなってもこうしてみんなとずれている。それが嫌だった。でも、今は嫌だと思わない。このずれで教太を守れるなら。

「答えなさい!あたしの思いに!」

 まず、右手に炎を灯す。あたしの思い答えているかのように荒々しく燃える。そして次にカードを打ちつける。

 すると目の前がくらむ。正面のイサークが歪んで見えて、今にも倒れそうにある。



 その時、目の前から光があたしに向かって迫ってくる。その光にあたしは包まれる。その光には勢いがあって目が開けるのが難しい。腕を盾にしながら目を開けると目の前に女神みたいな女の人が立っていた。その背中には白い翼が生えていて白い修道服みたいな服にふりふりがついていて優しいオーラで包まれている。その女神があたしに手を差し伸べる。あたしもそれにつられて手を取る。すると女神はあたしに微笑みかける。

「その思いを忘れないです」

 すると女神からさらに強い光が発せられて目がくらみ明けてられなくなった。



 そして、次に目を開けるとイサークがいた。一体なんだったのか分からない。

「あ、秋奈さん」

 アキが驚きで声が裏返る。

 そこであたしは今の自分が置かれている状況見てアキが驚いている理由を理解する。

 右手には炎。左手には雷。誰も成し遂げたことのない属性魔術の同時発動をあたしはしている。さっきの女神はきっとあたしのこと力をくれた。

「おいおい、マジかよ」

 イサークがあたしの姿を見て後退りをする。

「なんだろう。今、あたしは負ける気がしない」

 あたしは両手を振り上げて同時に振り下ろす。すると炎と雷が同時にイサークを襲う。水属性の魔術しか使えないイサークはこの同時攻撃を防ぐことはできない。水で炎は消せても雷を防げない。だからと言って吸収もできない。

「くそ!」

 後ろに下がる。イサークのいた場所に炎と雷があたり轟音と爆炎が上がる。

「どう?アキ?」

 アキも驚きが隠せないようだった。それもそう。誰も成し遂げたことのないことを今のあたしはしている。

「まったく厄介だ」

 イサークは爆炎の中から抜けてくる。あたしはゆっくりと歩み寄る。

「美嶋?」

 教太だ。少し顔色が悪いけど生きている。よかった。

「待ってて教太。すぐに終わらせる」

 両手に力を込めると知れに反応して炎と雷が大きくなる。

 この戦い終わらせるのはあたしよ。

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