想い届け⑥
霧也が叫ぶと右風刀から起きる風を使ってロケットのように敵陣に突っ込んでいく。
坊主みたいな錫杖をもった体格のいい魔術師が錫杖を構えてその先端から風が渦巻いて迫ってくる霧也に突きかかる。だが、霧也は飛びながら体をひねらせて右風刀を錫杖の側面に滑らせるように坊主の背後に立って右風刀の風で坊主を吹き飛ばす。だが、同じ風属性を使う魔術師だ。錫杖から風を起こして霧也と同じように空を飛ぶ。だが、それは美嶋の格好の的だ。
「秋奈さん!今です!」
「分かってるわよ!」
美嶋の手のひらには火の玉が発生していた。その添える手をアキが支えている。よく見れば美嶋は震えている。それを補助するようにアキが支える。そして、火の玉が坊主に襲いかかる。坊主は錫杖で防ごうとするが無駄なことだった。火の玉を直撃して黒煙が上がり坊主は近くに倒れる。ぴくぴくと動いているので死んではいない。加減を分かっている。
「俺も負けてられないぞ!」
目の前には矢を構えたレイがいた。もう、あいつが使う魔術がどんなものか分かった。あいつは矢を複数同時に射っているように見えるが実際は3本が限界。それを多く見せているのが幻影魔術だ。さらに水属性の攻撃もアキの使う自然の火を集めて攻撃するものと似た類の水属性魔術だ。矢の刺さった当たりの水が吸い上げられていた。つまり、幻影の矢と本物の矢を見抜き地面に刺さる前に矢を破壊すればいい。銃弾のように決して速いわけではない。なら、この力で簡単に破壊できる。
レイが右目だけを開けてじっくり狙いそして放つ。その瞬間は矢が3本に増えた。構えている時は1本だった。つまり残り2本は偽物。
目を凝らす。ドリルのように回転しながらまっすぐこちらに向かってくる。どれが偽物でどれが本物か。目を凝らすと3本のうち一番先頭を飛んできているものだけ回転している。つまり、本物はこれだ!
右手の力を込めて殴りにかかる。俺の力により発生した黒い靄の中に矢の先端の刃が入ると回転しているために均等に刃が破壊されそして木の部分も裂けるように破壊した。その以外の矢は俺の体をすり抜ける。幻影だ。
レイは見るからに使っている武器はあの弓矢だけだ。
「ああああああ!」
レイは慌てて次の矢を放つ。次は1本だけ。だが、慌てたせいで矢の軌道は俺の少し右にそれていたおかげで頬に切り傷が入った程度。レイは次の矢を構えるが俺は弓に掴みかかり力でバラバラに破壊する。レイは矢で刺しかかろうとするが俺は突っ込んだ勢いを使ってレイの脇にそれて攻撃を交わす。地面に転がり方向転換して振り返る。レイは持っている矢を地面に突き刺す。矢を中心に陣が発生する。水属性の攻撃が来る。だが、あの魔術は地面の水分を使って魔力だけでは低い力を補っている。つまり、その水を吸収する手段を絶ってしまえばいい。
俺の手は地面に触れている。それはつまり地面を破壊できる態勢であるということだ。俺の力により手の触れているところからレイを囲むように亀裂が走りレイの足元の地面が陥没する。魔術の発動は失敗に終わる。陥没した地面に落下したレイは痛みで動けないでいた。俺はレイの持っていた矢をすべて破壊する。
「無駄な抵抗はするなよ」
「キキキ。もう無理だってことくらい分かるだろ」
俺は穴から抜ける。すると急に何かの影に入った。俺は咄嗟に前に飛ぶ。俺がさっきまでいたところが丸で隕石が落ちたようなクレーターができる。
「なかなかの反応である」
「ドルダックか」
ハンマーに雷をすでに宿している状態だ。あのハンマーの攻撃をもろに食らえばただじゃすまない。
「素直に降参するである」
「誰がするかよ」
「うむ。では仕方ないである」
ドルダックはハンマーの先端を地面と接触させた状態で俺に向かってくる。雷を宿した状態のハンマーは地面をえぐりながら向かってくる。嫌な予感がして正面から受け止めずさがる。
「なかなかの判断である!」
ドルダックはハンマーを振り上げる。その攻撃は俺に当たらなかったが発生した風圧とえぐった地面の破片が俺を襲う。ドルダックの攻撃はそれだけにとどまらない。振り上げたハンマーの遠心力を使って今度は横から殴りにかかる。さすがにこれをかわすことはできない。
「やばい!」
「終わりである!」
ハンマーにはドルダックのパワーと重量による遠心力がプラスされてかなりの威力になっている。この力で受け止めてハンマーを破壊できたとしても俺の腕も壊れる。まだ、イサークとイズミがいる。こんなところで戦えないような怪我を負っている場合ではない。
「終わりにはまだ早い」
ドルダックの背後から霧也が右風刀で斬りかかる。だが、殺さないことを同じように貫いている霧也は峰打ちでの攻撃だ。巨漢のドルダックを押し倒すほどではないがハンマーの軌道が大きく下にそれて俺の手前の地面を叩く。ハンマーにかかったパワーと雷による威力で俺は吹き飛ばされる。それだけで済んだ。
ドルダックは背後にいる霧也をけん制するためにハンマーを振り回す。霧也も属性では相性がいいが真正面から受け止めることが出来ず一歩下がる。冷静なドルダックは周りを見渡す。俺も便乗すると霧也の相手をしていたであろう魔術師たちは地面に倒れている。
「まったく機関出身者は強いであるな」
これで2対1。数でドルダック勝っている。
「我をふたりで相手をしている場合であるのか?」
なんだ?この余裕は?
機関の出身者である霧也の強さも俺の力の威力も知っているはずだ。だが、ドルダックのこの異常な落ち着きぶりはなんだ?
すると霧也は何か気付いた。
「アキナ!」
そう叫ぶと美嶋とアキのいる方に飛んでいく。霧也が飛んでいた方にはイサークがいた。美嶋の水属性の攻撃で応戦しているが左手で吸収されていて意味がない。
「不味い!」
俺も向かおうとするがドルダックが阻む。
「いかせるとでも思ったであるか?」
「くそ!」
美嶋たちのところに向かっていた霧也はイズミが操る土人形に行く手を阻まれる。
ドンと体の奥底に響く音が鳴り響く。美嶋がアキが危ない。
「邪魔するな!」
俺は両手の力を発動した状態で手のひらを中心に破壊の指示を送る。俺の両手の間に存在するものがすべて破壊されバチバチと閃光が走る。そして、その両手のひらをパンと合わせると爆風が俺を中心に吹き荒れて地面の砂埃が舞いあがる。ドルダックが一瞬だけ怯んだ隙に突撃する。ドルダックの使うハンマーを以前のように防げば雷による痺れとけがによる痛みで力を発動するのに支障が出る。そこで俺が出した結論はこうだ。
触れずに破壊すればいい!
左手で右手首を握る。
ドルダックは怯みながらもハンマーを構える。そのハンマーを狙う。
「すべてを破壊する最強の槍!」
俺の右手から黒い靄の西洋の槍、いつもの巨大なランスが出来上がる。
「その手に握る武器だけを破壊しろ!」
その巨大なランスの形状が変わる太さが以前の無敵の槍よりも格段に細くなりそして長さも短くなり槍というよりも剣になる。さらに違うのは靄の色の濃さが無敵の槍と比べ物にならないくらい黒い。それは力が密集していることを意味している。
まるで俺の意思に答えているような形状だ。俺は靄で出来た剣を振り上げる。ドルダックはハンマーで防ごうとするがハンマーは何の抵抗もせずに俺の使う剣にあっさり切られてる。ドルダックは柄だけになってしまった方を投げ捨てる。だが。
「もうその武器は使えないぞ」
「なぜ!」
しばらくしてドルダックのハンマー全体に亀裂が知っていく。そして、砕けて砂のように粉になり粒子になり消えて行った。
「消し飛ばしたであるか」
「違う。俺が破壊したいものだけを完全に破壊する」
無敵の槍は俺が破壊したいと思ってないところまで破壊してしまい微調整が聞かない。でも、これ無敵の槍とは違う。これは俺が破壊したところだけを攻撃できるように無敵の槍の威力をそのままに短く細くなりコントロールが出来るようになった。俺の意思に教術が答えたくれた。そう、名づけるなら。
「無敵の短剣」
驚いている。おそらく、ゴミクズ使っていなかったものだろう。そうだ。俺はあいつとは違う。
「だが、シンとは違う。それは情けを掛けて我自信を攻撃しなかったことである」
「邪魔だ。俺は美嶋のところに行かないといけない」
「なら我を」
「もう、攻撃してるよ」
その瞬間、ドルダックの左肩から血が噴き出る。しかも、ただ血が噴き出しただけじゃない。ドルダックは痛みでその場にうずくまる。俺が破壊したのは表面の皮と関節、筋肉を支える筋。それをすべて左肩に集中させた。痛みがすべて左だけでその痛みに耐えることが出来ずドルダックはうずくまる。
さぁ!早く美嶋を助けに!
「行かせない」
俺の目の前を複数の土人形が阻む。その後方にはイズミの姿もある。
「どけ!お前の相手をしている場合じゃないんだよ!」
「イサーク様の邪魔はさせない」
土人形たちが襲いかかってくる。俺はその土人形たちの攻撃を交わしつつ力が発動した状態の拳で攻撃をする。一番突出していた土人形の腕を破壊した。怯んだ隙に上半身を殴り破壊できなかった頭や腕は地面に落下して下半身だけになった土人形はその場に倒れ崩れる。ここまで破壊しないと土人形を破壊したことにならない。
「霧也は何してんだよ!」
確かあいつは俺よりも先にイズミと交戦していたはずだ。それに土属性は風属性と相性がいいはずだ。
「風上風也なら私の土人形と交戦中だ」
「まだやってるのかよ」
「確かに属性では私の方が負けている。だが、風上風也の使う風属性魔武の右風刀は切った斬撃の後に風が起こる。あの水属性を使った魔術師とは違い連続で永続的に風を起こせない風上風也ではあの数の土人形を一瞬で倒すことはできない。そして、それを見て私が新しい土人形を作る。風上風也は属性では勝っているが永遠に勝ちの見えない戦いをしている」
属性魔術での相性の他にも武器や使う魔術種類で相性が逆転することがあるのか。だが、イズミの今の説明で分かったことがひとつある。それは土人形が自動的に永久に出てくるわけではないということだ。つまり、ちまちま倒さずに一気に倒せばいい話だということだ。
左手で右手首を掴む。
「その土人形。全部ぶっ壊してやる!行くぞ!無敵の槍!」
槍を構えて土人形の軍団に突っ込んでいく。槍の靄に入った土人形たちはぼろぼろと崩れて消えていく。槍を振り上げて土人形たちを振り飛ばして消し飛ばす。槍の攻撃から無事だった一部の土人形でも落下する衝撃で崩れて動けなくなる。
「どうだ!」
「さすが、イサーク様の親友の力を持つ物。だけど、ただ土人形を召喚するだけが私の魔術だと思ったら大間違い」
イズミは新しいカードを取り出す。そのカードを地面に置いて十字架を打ち付ける。陣の中心には五芒星。中級の魔術だ。
「これは私が使う最も強い土属性魔術。契約を交わし私の魔力だけで動く最強の土人形。土聖剣士」
大きさは今までの土人形とは一回り大きく頭は西洋の騎士をイメージさせるような鎧の形をしている。その左手には大きな丸い盾、右手にはすべてを叩き斬るような剣。今までの土人形とは雰囲気が一段と違う。
「申し訳ありません。イサーク様」
イズミは一体何を言っているんだ?
「国分教太。殺してしまうかもしれません」
その瞬間、イズミの召喚した土聖剣士が剣を構えて襲い掛かる。
今までの土人形とは違い数は一体。それにレベルの高い魔術みたいだ。二体も三体も出すことはできないだろう。なら、無敵の槍を使わずとも胴体を破壊できれば沈められる。
振り下ろして剣の攻撃を横に飛び退いて交わす。それを呼んでいたのか剣の刃の方向を変えて横切りで俺を襲う。その攻撃を両手の力で受け止める。その土で出てきた剣の斬撃は思いのほか重く威力があり俺はその勢いに負けて飛ばされ転がりながら気にぶつかりようやく止まる。
「なんだよ。あの威力は」
全身の痛みに耐えながら立ち上がる。すると小さいながらも俺の力が働き剣に亀裂が走る。剣の重量のせいで亀裂が大きくなっていき二つに折れる。これであいつの武器の威力を削ぐことが出来た。後は胴体を攻撃すれば。
「これは今までの土人形とは違う。分かっていないようだから二度言った」
「何言ってんだ?」
すると剣士の右手に周囲から砂が集まっていく。そして、次第に剣の形をして元に戻る。
「ウソだろ」
剣士は再び俺に攻撃を仕掛ける。
俺が攻撃したのは本体ではなく武器だ。だから再生した。なら、本体に直接攻撃すればいい。剣士は今度は振り下ろしではなく突いてきた。俺は剣士に向かって走り込んで剣の下側に入り攻撃を交わす。剣は地面に刺さり次の攻撃はない。俺は剣士の巨漢を支える足を破壊する。俺の攻撃は普通の土人形と同様に簡単に伝わり左足が崩れ壊れる。バランスを崩した剣士はその場に背中から倒れる。
「どうよ!トドメはもらった!」
剣士の上に乗って拳を構える。すると持っていた盾で俺を押し返す。力が発動していた拳に盾に当たり一部が崩れるが、元の形に再生する。
「だが動けない!」
飛ばされた俺はこけずに踏ん張り剣士の方に向く。剣士が立ち上がる。
「え?」
よく見れば、破壊した左足が再生している。そして、再び俺に攻撃してくる。今度は横切りだ。俺はその場に防いで交わす。だが、剣士は斬撃を切り返してくる。今度は俺が防いでかわされないように地面をえぐりながら斬撃が俺を襲う。受け止めれば剣を破壊できるがダメージは防ぐことはできない。なら、俺のところに到達する前に破壊してしまえばいい。無敵の槍を発動して剣に向かって突いて攻撃する。すると俺に到達する前に土の剣をバラバラ崩れ消え去る。破壊できたことにホッとしたせいで剣士の次の攻撃に反応することが出来なかった。剣を失った剣士は剣が再生する前に盾を前にしてタックルしてきた。巨漢の重量を使った重い攻撃に俺は飛ばされる。地面に何度もバウンドして転がる。全身傷だらけになる。苦しくて何度もせき込む。脇腹に痛みが走る。さっきの攻撃で骨がいったみたいだ。痛み耐えながら立ち上がる。
剣が再生した剣士がゆっくりと俺に近づいてくる。
あいつは武器も本体も破壊しても再生するようだ。どの程度破壊すれば再生されないのか分からない。でも、ただの土人形とは違うようだが土人形であることは変わらない。なら、同じように胴体を破壊すれば動かなくなるはず。そのためには攻撃を仕掛けてくるあの盾と攻撃を防ぐ盾を貫いて胴体に攻撃するための強力な一撃が必要だ。だが、俺にはそれが出来る。
「行くぞ。無敵の槍」
左手で右手首を掴み力を発動させる。黒い靄がランスの形になる。その瞬間、俺の体中の力が抜けて立っていられなくなる。黒い靄のランスは消え去る。膝をつく。呼吸が苦しく頭がボーっとする。めまいがする。どうしたんだ?一体何があったんだ?
「魔力が切れかけてる」
「何?」
「それはあんなのに連続に無敵の槍を発動していたら魔力もすぐになくなる」
魔力が切れかかっている。つまり、アキがいつも陥っているあの症状に俺もなっているということか。アキはいつもこんなになるまで戦っているのか。俺は力の発動を止める。するとめまいが解消されるが全身のだるさが抜けない。それでも立ち上がる。
「シンは無敵の槍をトドメにしか使っていなかった。元々、魔力の消費の大きい大技だったみたい。それを連続で使っていた。もう、無敵の槍を発動するだけの魔力は残っていない。大人しく拘束されろ」
誰が大人しく拘束されるかよ。でも、確かに力が入らない。まだ、目の前の土剣士はまったくの無傷だ。
「シンのように属性魔術を使えない以上そうやって効率の悪い戦いをしている貴様は弱い」
ゴミクズが属性魔術を使っていた?どういうことだ?こいつの力は触れた物を分子レベルまで破壊するという力だ。消し去るのではなく分子レベルまで破壊するということが分かっていない使うことが出来ない。でも、それ以外にもあるのか?
「ドルダックの時にシンと同じようなものを使っていたが使い方が違うから違うか」
あいつも同じようなものを使っていたのか。いつかアキが言っていたこの力は破壊もできれば創造もできる。俺はその創造まで来たということか。だが俺の作ったものはなんだ?
・・・・・・風。
両手のひらに力を集中させて合わせると手と手の間にぱちぱちと閃光が走る。
「雷?国分教太。シンの力を使えるのか?」
いや違う。これは俺が起こしているものじゃない。勝手に起きているものだ。両手周りにあるものが破壊されて発生している自然現象。つまり、この後に俺が起こしているものも自然現象だとすればゴミクズが創造していたものはただの自然現象。
魔術の世界には科学がない。つまり、自然現象もすべて魔力が関係していると考えられている可能性が高い。つまり、それは神の法則。
「分かったぞ」
「何を?」
「誰も知らない神の法則が」
また一つ。俺はしゃがみ。閃光が走る両手を地面の方に向ける。そして、俺は両手をパンと合わせると風が爆発的に起こり俺の体を空中に吹き飛ばす。かなり飛ぶことが出来た。俺は空中で体をひねらせて地面の方を向く。あの剣士を倒す方法。強力な一撃もそうだ。今、もうひとつ方法を思いついた。そう、胴体を破壊するのは向こうが対応できないくらい早い攻撃だ。
俺は地面とは反対方向である頭の上で掌を合わせて閃光を走らせる。そして、パンと合わせて爆風を起こして剣士に向かってミサイルのように突っ込んでいく。右拳のみに力を集中させる。いつもは力は拳から肘まで靄が覆っている状態で発動している。その範囲を拳だけに集中させる。すると無敵の短剣のように濃い黒い靄になる。そして、機動力によるスピードと重力により攻撃力が増している。剣士は俺が突っ込んでくることに反応して盾を構えようとする。だが、俺のスピードの方が増している。この攻撃、無敵の槍や無敵の短剣のように範囲も狭くいつもの拳の攻撃と変わらない。でも、この自然に存在するものを使って攻撃するこの拳は確かに無敵そのものだ。そう、名づけるなら。
「無敵の拳!」
ミサイルのように飛んできた俺の拳は剣士の兜に当たりそのまま破壊で突きぬけて胴体まで到達する。そして、破壊が全体に伝わりバンと轟音を立てて剣士は二つ裂ける。胴体から頭まですべて破壊され再生される気配はない。
息を整えていつものように両手に力を発動させイズミを睨みつける。
「やはりシンとは少し違う」
なんだか様子がおかしい。魔力不足でまだ視界がぼやける。目をこすり目を凝らして気づく。イズミの顔色が悪く苦しそうに息をしている。それはアキと同じ症状だ。
「おいおい、魔力不足はお互い様かよ」
「土聖剣士は召喚にかなりの魔力を消費する。最後の手として使う物だ」
今にも倒れそうだ。
「それに風上風也を足止めするために土人形を召喚し続けた結果がこれだ」
背後で霧也がイズミに向けて刃を構えていた。息は荒れて全身傷だらけだがイズミのように顔色が悪いわけじゃない。魔力が切れているというわけではなくただの疲れのようだ。
「あきらめて手に持っているカードと十字架を捨てろ」
「あきらめない。イサーク様の命令を遂行する。それが私の生き様」
だが、その言葉とは裏腹にカードと十字架を捨てる。と同時にスカートの下からナイフを取り出して霧也を襲う。霧也はそれが読めていたかのようにかわして右風刀の柄でイズミの後頭部を殴る。イズミは滑るように倒れて動かなくなった。
「気絶したのか」
「そうだ。いいから早くアキナたちのところに」
その瞬間、爆発音が起こる。そして、黒煙が上がる。アキたちがいた方角だ。
「美嶋!」
俺はそのフラフラの足取りで黒煙が上がる方に向かって走る。その黒煙から飛び出してくる影があった。
「イサーク?」
霧也が呟いて俺も集中していて見ると確かにぼさぼさの髪をしたイサークだ。
「まったく厄介だ」
そうイサークは言う。よく見れば左手は切り傷だらけだ。
イサークが睨みつける黒煙が晴れた先にいたのは右手に炎、左手に雷を宿した少女だった。
「美嶋?」
それはまるで魔女のようだ。




