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想い届け⑤

「ただの別荘にしか見えないな」

「ですが、人が寄れないような結界が貼ってあります」

「よく分かるな」

「魔術師ですから」

 アキの魔術探知によってイサーク及びその残った部下の潜伏先が分かった。それは俺たちが止まっている施設の近くの別荘だった。昼飯をとるためにバーベキュウスペースに移動したことで奴らの潜伏先に近づき探知にかかったというわけか。アキ自前の双眼鏡で別荘を覗くが何も見えない。窓はカーテンで閉ざされている。外には人影が見えない。

 そんな別荘の様子を俺とアキと美嶋は茂みに身を潜めて様子を見ている。

「戻ったぞ」

 霧也が上空から罠がないか確認しに戻ってきた。

「どうでした?」

「特に罠が仕掛けてあるわけでもないただ別荘だ」

「だったらさっさと攻撃すればいいじゃない」

 美嶋はやる気のようだ。俺たちが苦戦していた土人形をほぼ一瞬で消し飛ばした力を使ったことによって生まれた自信だろう。それは油断になるからやめておいた方がいいと俺は思う。

「だが、ここまで完璧な作戦を立てたマラーが俺たちの侵入を簡単に許すはずがない。見えないだけで罠が仕掛けてある可能性もある」

 マラーの作戦は確かに完璧だっただろう。俺たちはその作戦にまんまと引っかかり3度の奇襲を簡単に許してしまっている。でも、マラーの作戦の想定に入っていなかった人物。それが美嶋だ。しかも、普通の魔術師ではない。

「美嶋」

「秋奈って言ってるでしょ」

「いや、いきなり下の名前で呼ぶのは・・・・・・」

 俺はチキンなのだ。女の子前では。美嶋は別。もちろん、美嶋と同一人物であるアキも同じだ。

「恥ずかしがるなんて気持ち悪いわよ。そこは男らしさを見せなさい」

 分かったよ。

「秋嶋」

「せめてどっちかにしてよ。それだと誰だか分からないでしょ」

「じゃあ、美嶋でいいか?」

「・・・・・・・秋奈って呼んでほしかった」

「よしよし、教太さんは本当に女の子のことが分かってないですね」

 いじける美嶋をアキがなだめる。一体なんことやら。

「美嶋」

「何よ」

 なんだか不機嫌。これは俺が美嶋のことを秋奈と呼べるように羞恥心を捨てる努力が必要のようだ。がんばるよ。2年くらいかけて。

「お前は属性魔術以外にも何か使えないのか?例えば、幻影魔術とか」

 レイが使っていたものだ。あれに何度も騙されている。もし、美嶋が使えるのなら奇襲が仕掛けやすくなる。

「無属性魔術は使えないことはないと思います。ですが、幻影魔術は相手を騙すための技術がいるので今の秋奈さんでは使えこなせないと思います」

 それは残念だ。

「ですが、秋奈さんにはその圧倒的な魔力と多彩な属性を使えば無属性魔術のサポートがなくても十分圧倒できると思います。前例がないものですからいくら場馴れした魔術師でも対応に困るでしょう」

 魔女と呼ばれていたアキですらその美嶋の使う属性に驚いて硬直していたもんな。

「秋奈さんの属性のレパートリーならイサークさんにも勝てると思います」

「何でだよ。吸収されることには変わりないんだろ」

「ですが、今の持っている秋奈さんの魔術のほとんどは遠距離タイプの物です。それを複数に連続で使われるとイサークさんでも吸収対応ができないと思います」

 もう、美嶋は俺より強いんじゃないのか。昨日、魔術を知ったばかりなのに。

「だが、美嶋さんはいくら圧倒的な力を持っているからと言って無理をしない方がいい。今はその力で自分を守ることに集中してくれ。それは結果的に俺たちの助けに」

「風上さん、分かってるわよ」

 美嶋は霧也の忠告を最初から分かっていたかのように告げる。

「あたしはこの力を敵を倒すために使うわけじゃないわよ。この力は教太のために使う」

 美嶋はまっすぐ俺の方を見つめる。その大きな瞳は濁りがひとつもない透き通ったきれいな瞳だ。

「教太があたしやアキを守りたいのならそのためにこの力を使う。それで教太と同じようにあたしにもこの力を使う目的がある」

「それは?」

「教太を守るために使う」

 こいつも同じだった。俺と同じようにただ今ある日常を守りたいだけだ。

「・・・・・・見つかったようだな」

 霧也が右風刀を鞘から抜き取る。炭のように黒ずんでいた刃が根元から銀色になっていく。そして、腰にしまってあった小刀もいっしょに抜き取る。霧也の見ている方向にはイサークさの潜伏先の別荘。その入り口から続々と人が出てくる。中に知っている顔、ドルダックとレイもいる。だが、イサークの姿はない。

「まだ、イサークは出てくる気がないみただな」

 そう俺が言う。

「そうでもないみたいですよ」

 アキが杖を拾い立ち上がる。玄関からイズミの後に続いてイサークが出てきた。

「教太」

 霧也が俺のすぐ横にやってくる。

「俺とお前で敵陣に突っ込むぞ。後ろの敵は彼女らに任せよう」

「分かった」

 この状況では下手に作戦を立てるよりも単純に突っ込んだ方がいい。いや、違うかもしれない。でも、俺の力は突っ込んでいった方が相性がいい。遠距離がまったくないせいだ。

「行くぞ」

「教太」

 美嶋に呼ばれて振り返る。

「帰ってきて」

 何を言っているんだ。

「当たり前だろ」

 美嶋は不安そうな顔をしている。安心しろ。俺はこんな死地をすでに2回も潜り抜けてきている。今回も生き残って見せる。力も使いこなせるようになってきている。大丈夫だ。

「行くぞー!」

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