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想い届け④

 また目の前でオレの部下が死んだ。もちろん俺が教術で魔力を吸って殺したのだ。そいつは幸せそうに笑顔を浮かべて冷たくなって動かなくなった。その度にオレの左手の震えが止まらない。平常心でいるのも限界が近づいている。だが、あいつらはそんな混乱しているオレなんて見たくないはずだ。だから、オレは部下たちにとって理想のボスでないといけない。そのプレッシャーと常に戦っている。部下を殺したことに涙腺がにじむ。

 その時、扉をノックをした奴がいた。涙をぬぐい眉間にしわを寄せて表情を険しくする。

「入れ」

「失礼します」

 入って来たのはイズミだ。確か大人数での奇襲作戦の指揮を執っていたはずだ。戻ってきたということは成功か失敗を伝えに来たのだろう。

「イサーク様。そこに倒れている者は?」

「脱落者だ。目が見えないながらもここがシンたちにばれないように結界を張ってくれた。だが、戦うことが出来ないからな。オレの中で戦うことを決めてここに来た」

「・・・・・・そうですか」

 イズミは何も感じないのだろうか。いや、感じないのではない。感じるのを止めたのだろう。あいつの周りでは人が死に過ぎたんだ。

「それで何か用か?」

「はい。申し訳ありません」

 失敗に終わったのか。まぁ、最初から成功させる気はない。今のシンは人を殺さないことにこだわっている。あいつが選んだ器だ。それなりに周りの信頼性も高いとみて誰も死ぬことはないだろうと無茶な作戦を決行させた。元々、今のメンバーで最強の教術師シン・エルズーランの力を伝承した奴と機関出身者と魔女がいる奴らに勝てるはずがない。

「懐かしいな」

「何がですか?」

 イズミは死体を片づけながら聞き返す。

「戦争していた頃、どう考えても勝ち目のない戦場。今がそれだ。懐かしい」

 オレのいた戦場は勝ち目のないものばかりだ。それを勝ちに導くのが隊長だろ。そう指揮官どもに言われた。もう死ににいくような戦場に送り出される兵士たちはその最後に俺の元に来た。命乞いだ。でも、ただの命乞いじゃない。奴らも誇り高き魔術師だ。敵前逃亡はしたくない。だから、戦いたいのだ。オレの魔力となって。奴らは命の救いではなく、心の救いを求めていた。オレはそいつらを結果的に助けたことが味方殺しと呼ばれる羽目になった。これを知っているのはシンとイズミだけだ。

「イサーク様。偉大です」

「どこがだ?」

 イズミは死体を部屋から出して手を後ろに組んでピシッと立つ。

「我々を絶対に見捨てない。それが死であろうとも。イサーク様に救われた彼らは生き続けています。戦場で魔術師として。彼らもうれしいと思います」

「そうだな」

 俺たちは確かにこの手で殺した奴らのためになっているだろう。だけど・・・・・・。

「イズミ」

「何でしょう」

「誰が残った?」

「ドルダック、レイ、私を含む7名です」

 20くらいいたよな。もう、そんな数になったか。3分の1くらいは俺が殺している。この残っている7人のうちオレは何人殺すのだろうか。マラーはオレがこの世界にシンを探しに来た理由をおそらく知っているはずだ。でも、イズミは知らないはずだ。

 こいつには死んでほしくない。

「行くぞ。イズミ。あいつらのことだ。魔力探知でここもすぐに特定される」

「迎え撃つと?」

「ああ」

 だが、今のメンバーでは無理だろうな。

「イズミ」

「何ですか?」

「お前は生きろよ」

「あなたの隣なら」

 もう笑うしかなかった。

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