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少女に迫る魔術③

 教太さんには非常に悪いと思っている。秋奈さんに魔術を関わらせないという大きな目的があったから彼はあそこまで強くなることが出来た。そう言っても過言ではない。あのドルダックさんの一撃を防いだと風也さんから聞いたときにまだまだ成長する兆しが見えた。その希望にすがればきっと今回もうまくいくと思っていた。でも、状況はそうもいかなくなった。

「・・・・・・・美嶋さんを使うしかないんでしょうか?」

 風也さんにもう一度問いかける。

「今の不利な状況をひっくり返す方法はそれしか浮かばない」

 私も同じです。相手の作った都合のいい状況にはまってしまっている。まさか、この施設のスタッフの中にあれだけの仲間を忍ばせることはそんな簡単なことじゃない。かなり前から私たちがここに来ることを知っていて準備してきた感じがした。

「これもマラーが手をまわしたんですかね?」

「考えられるな。イサークにこれほどまで戦略でやられた奴はいないだろう」

 それから妙なのが今の状況。私の魔力も完全に回復したとは言えないし、教太さんもけがをしている。攻撃するには絶好のチャンス。なのに何もしてこないのはなぜか。まるで何かを待っているようなそんな感じがした。

「教太は大丈夫なのか?」

「ここに来る際にロビーに先生方が戻ってきていました。勝手に生徒がここに残っているのを知って捕まえに来たのでしょう。私もそのひとりですね」

 学校の先生の中にはイサークさんの味方はいないと思う。私がこっちの世界に来る前から勤務していた先生が多い。魔術で唯一出来ないことは預言などの時間操作。

 魔術はまだ時間操作という神の力まで使うことはできない。よって、私たちがここに来るということは魔術による予測はできない。そう考えるとここに来ると知っているのは学校の関係者。学校内にイサークまたはマラーの仲間がいる。そう考えるのが妥当だと思った。

「美嶋さんをここに呼べるか?」

「教えるんですか?魔術を。教太さんの立会なしに」

「・・・・・・・仕方ない。生き残るためだ」

 良心が痛む。教太さんが秋奈さんに魔術を関わらせないようにどれだけ苦労してきたのか私は知っている。あの人は私を守ることも兼ねて魔術について学んでいる。この世界の人は本来知らなくてもいいことだ。それでも教太さんは努力を続けて魔術に関してほぼ教えることは何もない。

「他に方法はないのでしょうか?」

「・・・・・・アキナも言っただろ。勝ち目のない状況では頼れるものにはすべて頼る。戦場での絶対的な法則だ」

 私が風也さんの意見に賛同したのは以前のように私と、魔女と間違われて何も知らない秋奈さんが襲われることが一番怖いから。また、私のせいで人が死ぬのはもう嫌だった。だからと言って秋奈さんに魔術を教えることは逃げるということになる。

「どちらにせよこうなると思っていた」

「・・・・・・そうですね」

 教太さんと秋奈さんの距離が近すぎた。あれではいつか秋奈さんが魔術に関わってしまう。そう教太さんも思っていたのか距離を開けていたけど、そのことをよく思わない秋奈さんとさっきぶつかりふたりはケンカになってしまった。

「すみません。教太さん」

 私は携帯電話を取り出す。この世界で初めて自分で買い使いこなしている機械のひとつ。使い方は秋奈さんに教えてもらった。彼女には私の知らない普通の女の子のことを何でも知っていた。今度は私が彼女に魔術を教えるのだろうか?できることなら教えたくない。

 電話帳から美嶋秋奈を選んで電話を掛ける。自分と全く同じ名前。もし、この場にまだ魔術を学んでいない私がこれから起こることを知っていたなら止めたと思う。でも、私は電話を掛ける。

 だけどつながらなかった。電波の届かないところまたは電源を切っているかというアナウンスが聞こえる。電話を切ると圏外になっていた。ここに来たときはしっかりアンテナが立っていることを確認している。なんで急に圏外になったのか。携帯を高く上げてみたり、振って見たりする。こうしたらたまに通信の繋がりがよくなったりしたことがあったからだ。でも、どうあがいても圏外だ。

「どうした?アキナ?」

 何か妙な感じがした。

「まさか!」

 私は部屋の扉を開けようとしたけどびくともしなかった。カギは開いている。押しても引いても開かない。

「どうした!」

 風也さんも異変に気づいて扉の方にやってきて開けようとしても開かない。

「少し離れろ」

 右風刀を抜いて扉に向かって攻撃するが傷ひとつつかなかった。

「これはもしかして!」

「そのもしかしてですね」

 窓も同じだった。カギを開けても開く気配がない。ガラスを割ろうとしても全く傷もつかない。

「結界か」

「はい。特定の人物を閉じ込めるタイプのものですね」

 この世界に来たときにアゲハによって建物に閉じ込められた時と同じタイプの物。違うところは陣が建物の中にあるかないかの違い。でも、これは閉じ込められた身からすればかなり大きい。

「解除できるか?」

「時間はかかりますが何とか」

「教太との連絡は!」

「ダメです!」

 秋奈さんと同様に教太さんとも連絡が取れない。

「これ不味いですよ!」

「ああ、不味い!教太が危ない!早く解除を始めてくれ!」

「はい!」

 この結界を解くにはこの結界と効力が真逆の結界をこの部屋で発動すればいい。でも、そのためにはこの部屋に陣を直接描く必要がある。しかも、この結界は陣の頂点に儀式用の小物を置かないといけない。準備に時間がかかる。

 ・・・・・・・・・・教太さん。

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