少女に迫る魔術①
ちょっと言い過ぎたかもしれない。反省しないといけないところも自分にあったと思う。原因は最近教太と疎遠になっているのに対してアキとどんどん親しくなっていくことによるあたしの嫉妬。あれが本来の教太の姿なのかもしれない。実際にあたしは教太とここまで関わるようになったのはここ最近の話。中学は別で高校で久々に再会した。小学校ではたまたま席が隣だったというだけの関係。あのころは権力で物言うそれ以外では全く人と話すことのできない弱い子供だった。今も子供だけどあのころは最も子供だった。そんな子供だった頃のあたしと変わらずに接してくれた。自分もあたしと同じように傷を負っているのにもかかわらず変わらない教太に私は自然と惹かれていた。傷を隠してなかったことにしている姿を見ていると自分には出来ないことをやっている教太がすごく大きな存在に見えた。だから、気付いたときには教太の後を追いかけるようになっていた。でも、最近その教太がどこに向かっているのか分からなくなった。あたしには今みたいにこうして部屋でいじけているこしかできないのだろうか?
昼間だけど空は曇っていて暗く部屋に光が入ってこない。電気をつけてないからさらに暗くあたしの気持ちみたいだ。
教太はあたしに何かを隠している。それは最初にあった時、すでに負っていた傷のことじゃない。何かすごく重要なことをあたしに知られないように必死に隠している。本人はばれてないと思っているみたいだけど、最近の謎めいた行動を見ていれば何か隠れてやっていることは丸分かり。
教太があたしに知られたくないのならあたしは何も詮索しない。あいつがそうしたように。
でも、それも続かなかった。だって、そのあたしに知られたくない秘密を共同していそうな人物がいた。それがアキ。ひと月前ほどいっしょにアキと空子と買い物をしていた時にアキの携帯に教太から召集の連絡が届いた。どういう要件かあたしには教えてくれなかった。
その後、1週間くらい教太は学校を休んだ。アキは何か知っている感じだった。でも、何も教えてくれない。教太も同様。ふたりだけの秘密。あたしには知られたくない秘密。なんだかイライラした。腹が立った。これが嫉妬というんだなと自分で理解できた。
あたしはアキに何を隠しているのか迫るだけ迫った。でも、成果はゼロ。アキは真顔で「なんのことですか?」の一点張りで何も答えない。怒りは少しずつ教太の方に向いていた。そしてさっきのケンカ。
「久々にしたなぁ~」
声に出してしまうほど久々ケンカだった。ここ数年は相手すらいなかった。でも、この怒りは全部教太のせい。あたし隠し事なんかしないで言えばいいのに。そうすれば少しは力になれるのに。
教太はあたしを必要としていない。そう思うようになった。
ドーン!
建物全体が轟音と共に揺れる。
「何?地震?」
そのわりには短い。
ドーン!
また音がした。今度は音だけで建物は揺れない。
「何?」
外を見ると砂埃が発生していた。何が起きているのかさっぱりだった。その時、紫色の稲妻が地面を走る。そして轟音が再び鳴り響く。
「きゃ!」
思わず悲鳴を上げて耳を塞いでその場にうずくまる。近くに雷は落ちたみたいだ。よく見ると木のところどころから白い煙が上がっている。かなり近いようだ。
「あれ?」
何か影が見えた。その影はこの建物の屋上に着地のが見えた。それが何なのか分からない。あたしの勘は告げていた。昨日と同じ謎の現象が起きたとき屋上にいたのは。
あたしの足は自然と部屋の外に向かい屋上を目指す。
廊下では施設の従業員たちが慌ただしく動いている。
「雷か!」
「分かりません!」
「避雷針が近くあるはずだぞ!」
「状況はどうなっている!」
「外の様子は!」
「危なくて見に行けませんよ!」
「建物に直撃してる!」
「けが人は!」
みんな雷のせいだと思ってる。でも、あたしはそんな気がしない。昨日の光も雷のせいだと結論づけられたけどこうも毎日雷が落ちるようなものなのか?それに避雷針があればそこに落ちるはず。雷の落ちたのに停電などの電気障害が起きない。それはなぜか別のあたしの知らない力が加わっているのかもしれない。根拠はないけど確信している。あたしじゃない別の何かが確信している。
アキと初めて会ったのは教太が入院していた病院だった。なんで教太がけがをして入院しているのか、あのショッピングセンターがなぜ廃墟になってしまったのかもあたしは知っている気がした。のど元まで出かかって引っかかる。誰かがそれを妨害している。
多くの疑問があった。でも、気にならなくなった。本当はすごく気になっているはずなのに無視できるはずもないのに、忘れているのだ。いや、忘れ去られている。あたしじゃない誰かによって。
階段を上がり屋上の扉を開く。雷のせいによってか霧が発生している。木が燃えているせいで発生した煙かもしない。でも、そんなことよりもあたしは目の前に現れた人物を見て驚愕する。
「何してるのよ?」
あたしの声を訊いた瞬間、凍りついたような目で教太とアキと風上さんがこちらを向く。
アキは顔色が悪く汗だくで体調がすごく悪そうだ。さっきまで元気だったのに。
教太の右腕は血だらけになっている。その痛みに必死に耐えている。
風上さんはやっぱりいたんだ。それよりもその足元に置いてあるものに驚く。それは刀。時代劇とかで見るものとは違う。銀色に輝く刃は全く別の威圧感を感じる。
「み・・・・・・美嶋」
何不味そうな顔してるの?一体教太とアキは何を隠してる?
そんな疑問よりも最初に見えてきたのは・・・・・・。
「なんで怪我してるの?血だらけじゃない!」
あたしは慌てて教太に駆け寄る。
「み、美嶋!」
教太は慌ててしまって持っていた小瓶を落とす。中身の液体がこぼれる。
「ひ、ひどい。今すぐお医者さんに診せないと!下の医務室行くわよ!早く!」
「あ、秋奈さん」
アキは話すだけで苦しそうだ。
「アキもいっしょに行くわよ!風上さん!アキを抱えて!」
いろんな疑問もある。さっきのケンカの怒りもある。嫉妬もある。でも、一番嫌なのはこんな苦しんでいるのを見ていたくない。
「ほら!行くわよ!」
あたしは教太の無事な左手を引っ張る。
「み、美嶋。落ち着け」
「落ち着いていられるわけないでしょ!ひどい怪我じゃない!すぐに治療しないと!」
「すまない。美嶋さん」
「何!風」
その瞬間何か殴られたみたいで意識が急に遠のいていく。その後、すぐに闇の中に葬り去られる。




