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迫る影④

 朝になった。俺はあの後大人しく部屋に戻った。オカマがひとり興奮していたが無視して俺は疲れ切った体を癒すために眠りにつく。今夜はもうイサークは襲ってこないだろうという確信があった。だから、安心して眠ることが出来た。この安心感は大きいものだった。おそらく、ゴミクズも同じ考えだったのだろう。あいつがそこまで恐れているイサークとはどんな奴なのか知りたくなった。ゴミクズは知っている感じだ。でも、眠ってもあの無の空間には行くことはできなかった。気付けば起床を告げる音楽が流れていた。

 重たい体を起す。なんとなく収納を開けてみるが霧也はいなかった。どこで一晩を過ごしたんだ?

 寝ているオカマを無視して制服に着替えて飯を食べに食堂に向かう。

 食堂にいる生徒のほとんどが眠そうな顔をしていた。昨日の謎の光によって真面目に寝ていた奴らも起きてしまって寝不足気味なのだろう。俺も同じだ。寝不足で頭が痛い。

 ここでの飯はバイキング方式で好きな量だけとって食べるという感じだ。俺の朝飯は菓子パンばかりだったから和食を食べたい気分だった。納豆、焼き魚などを好きな量だけ取ってトレーに乗せてなるべく人の少ない席に座る。すると座った途端、美嶋が隣にやって来た。トレーを見るとパンが半分くらい減っていた。どこかの席で食べていたのだろう。俺を見つけて席を変えたのだろう。

「なんだよ?」

 納豆を混ぜるためにふたにビニール外す。

「昨日の夜どこにいたの?」

「昨日の夜?」

 納豆に醤油を入れる。からしは苦手なので入れない。

「部屋にいたぞ。妙な光で起きたけどな」

 納豆を混ぜ始める。美嶋が臭いを気にして少し距離を置く。

「あたしね。屋上にいたのよ」

 俺の納豆を混ぜる手が止まる。

「・・・・・・どういうこと?」

「あたしはあんたが嘘ついてるって知ってるわよ」

 俺はまだ満足に混ぜていない納豆をご飯の上にのせる。

 ・・・・・・・落ち着け。俺。落ち着くんだ俺。

「何でお前は屋上にいたんだ?」

「アキが急に部屋から飛び出していったのよ。どうしたのかなってついて行ったら屋上にいたのよ」

 アキの奴。急襲で慌ててつけられてることに気付かなかったな。味噌汁を飲みながら周りを見渡すがアキの姿はない。

「他にも聞きたいことがあるわよ!」

 ドンと机を叩く。

「何を?」

「風上さんいたわよね」

 少し味噌汁を吹きかけた。そこまで目撃されてたのかよ。

「なんで風上さんがここにいるの?あの人はアキの親戚の人じゃないの?」

 ああ、霧也はそういう設定になっているのか。

「最近、教太おかしいわよ。すべてはアキに会ってからよ。なんだか目的がはっきり見えたみたいで明るくなっていういい傾向もあるけど、付き合いが悪いのよ」

 さびそうな顔をする。美嶋には俺が関わってしまった魔術には関わってほしくない。俺といっしょにいると魔術に出会う可能性が高くなる。だから、俺は少し美嶋に冷たくしてしまったのもそのせいだ。

「教えなさい!教太の知っていることを!なんで屋上にいたの?なんで風上さんがいるの?」

 やばい。どうしよう。逃げる道がない。

「答えなさい!教太!」

 朝飯のチョイスをミスった気がする。和食だと量がそれなりにあるし納豆を混ぜたり、焼き魚を崩したりという手間が合って時間がかかる。

 迫る美嶋を交わす方法。適当に行ってみるか。

「何言ってんだ?」

「・・・・・・・は?」

「俺は昨日の夜ずっと部屋で寝てたから屋上にいってないぞ」

「嘘つきなさい。だったらオカマに確認するだけよ」

「寝てたって言ってもトイレに行くために部屋を出たのは覚えてるな。寝ぼけててあやふやだけど」

 これは事実。後は嘘だ。

「でも、あたしは見たのよ」

「夢じゃねーの?」

 美嶋が少しひるんだ。そう、ここに霧也が来ているという決定的な事実もない。アキが飛び出していったのも実は夢の中ではないかという可能性を過らせる。これで大丈夫だよな?

「なんだか緊迫した空気だね」

 げ!なんでこうもタイミングが悪いところで蒼井がやってくるんだ!

「空子も見たでしょ」

「何を?」

「アキが急に出ていくところ!」

「ああ、私はちょうどトイレに行ったから見てないけど」

 よかった。あの蒼井までが美嶋の味方をしだすともうどうしようもない。

「でも、三月さんが慌てて走っていくのは見たよ」

 味方じゃなかった。

「何?おもしろそうなこと話してるね」

 めんどくさい。特にこいつには隠し事が通用しない。俺の心が見えてるんじゃないかと思える。

「おい!教太!何で起こしてくれなかったんだ!」

 なんでこうも次々と変なタイミングでいろんな奴が現れるんだ。頭が痛くなる。これは寝不足のせいじゃない。

「オカマ!」

「俺はオカマじゃない。いい加減にしてくれよ」

「昨日の夜教太はずっと部屋にいた?」

「昨日の夜国分くんがどうしたの?」

 蒼井がまだ俺と美嶋が話している内容を分かっていないようだ。それが唯一の救いかもしれない。何とかごまかす方法を・・・・・。

「教太か?光が見えたときは部屋にいなかった」

「これはどういうこと!」

「いや、あの時ちょうどトイレで部屋を出ていたから」

「そんな都合のいい言い訳があると思って?」

 いや、いいわけじゃなくて真実だよ。といってもトイレに行ってていたのは光る前のことだけど。

「さっさと答えなさい!なんでアキと屋上にいたの?なんで風上さんがいたの?」

 やばい。どう言い逃れればいいんだ?オカマも蒼井も俺の発言に注目している。このままでは美嶋に魔術を関わらせないという目的以上の面倒なことになってしまう。魔術のことを言わないようにしてどうやって逃れるか・・・・・・。

すると蒼井が妙なことを言った。

「なんだか国分くんがかわいそうだよ」

 ・・・・・・・え?

「これ以上困らせると嫌われちゃうよ」

「な、なんで空子は教太の味方するのよ?」

「気分だよ」

 妙だぞ。いつもの蒼井ならここで俺を徹底的に追い詰めておもしろがるような奴だ。こんな簡単に引き下がるはずがない。もしかして罠?

蒼井が笑顔でこちらを見る。その笑顔には悪意ではなく善意で行ったような感じだ。

「さぁ、早くご飯食べようよ。時間なくなるよ」

 なんだ?この妙な感じは。なんで俺をかばった?もしかして、魔術師だからか?イサークの部下のひとりか?中から混乱させるためか?いや、蒼井は俺がこの高校に入学してから知っている人物だ。ましてやイサークの仲間ならここで魔術のことを広めれば混乱状態になりそれを収めるために奮闘する俺たちに不意打ちを食らわせることもできるはずじゃないのか?

謎が謎を呼ぶ。

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