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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
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無の空間①

 目が覚めると白い空間にいた。果てしなく地平線まで真っ白で何もない世界だ。例えるならそうだな、精神と時の部屋みたいな感じだ。重力とかは大きく感じないけど。

「つか、ここどこ?」

 確か俺は薄汚い路地にいたよな。

 上も下も右も左も真っ白。何か気が狂いそうだ。本当に何もない。色も何もない空間に俺だけがぽつんとひとりいる。

「おい」

 声が聞こえた。俺の後ろからだ。振り返るとそこには安そうな木の椅子に座っている俺がいた。肘掛けに頬付しながら俺のことを妬ましそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。

「国分教太と言ったか?」

「そうだけど?」

「年は?」

「・・・・・・・15」

「ガキじゃねーか」

 目の前の俺は呆れたように頬付けをやめてぼろい椅子に深く腰掛けた。

「貴様の覚悟を聞こう」

 何か一方的話しているせいで訳が分からない。

「質問いいか?」

「ひとりひとつまでな」

 めんどくさい奴だな。

 なら、今一番気になることを処理しよう。

「ここはどこだよ?」

「知らね」

「おおい!」

「貴様の覚悟を聞こう」

「質問終了かよ!」

 何だよこいつ。質問答えてない質問タイム終了かよ。

「もうひとつ質問いいか?」

「ひとつまでだって言っただろ」

「お前誰?」

「質問の受付は終了しました」

「なら、適当に名前を決めてやるよ。・・・・・・・・ゴミクズでいいか」

「いいわけないだろ!」

「では、ゴミクズ」

「待て待て!誰がいつ採用した!」

 いちいちうるさい奴だな。

「答えてやるよ。俺はそうだな・・・・・・・神様かな?」

「神様ってどういう意味だよ。ゴミクズ」

「もう、わざとだろ」

 わざとだが、何か悪いか?

「俺は貴様からすれば、神様的な存在だ。俺は貴様の運命も知っているし、命も握っている」

「それはどういう意味だ?ゴミクズ」

「ゴミクズいうな!」

 何か怒らせてしまった。赤の他人なのだが、親近感がある。以前からいっしょにこうやって話をしていたようなそんな気がする。

「ここはお前の心の中だ!」

「なんだよ。ここがどこなのか知ってるのかよ。ゴミクズのくせに」

「いや、だからゴミクズじゃない」

 つーか、よくよく見ると誰かに似てるな。誰だろ?

「いいか。俺は真剣だ。さっき言ったことは嘘でも冗談でもない。本当の話だ。夢でもなんでもないからな!」

「はいはい、分かったよ。ゴミクズ」

「もういいよ。どうせ俺はゴミクズだ」

 意外とあっさり心が折れるものなんだな。神様とか言っているくせに。

 それに初めて話した時とキャラが違う。というか俺が壊したのか?

「それでここが俺の心の中でお前が俺の運命も命も握っているっているのはどういうことだ?詳しく分かりやすく説明しろ」

「は、はい」

 こんな腰の低い神様を神様と言っていいのだろうか?やっぱりゴミクズの方が良さそうだ。

「ここは貴様の心の中だ。今の貴様の心の中はこんな感じだ。空っぽだ。色もない無に等しい。貴様は一体どんな人生を送ったらこんな生まれたての赤ん坊みたいなれるのか俺は不思議で仕方ない」

 ここが心の中である根拠はないのかよ。でも、何となくそれは分かる。確かに俺は無に等しい。誰かに必要とされているという感覚もないし、必要にされたいという思ったこともない。特に縛られることも縛ることもしない。何もないのが俺だ。

「だが、白い空間を心に宿すやつは珍しくない」

「は?」

「白という色は無に等しい。だから、どんな色でも受け入れる。自分を主張したがる赤、物静かな青、喜怒哀楽どんなものにも溶け込む黄、何も受け入れない黒。いろいろ人には心に色があるが、貴様はなんでも受け入れるそういう心の持ち主ということになる」

 へぇ~。そうなのか。何もないというのはうれしくもなんともないが、そう言われると素直にうれしいな。

「で、何を受け入れた?」

「何って何?」

「俺が貴様の心の中にいるということはあれが発動したということだ。何か説明を受けていないのか?」

「説明?」

 何の事だかさっぱりだ。

「ここに来る前のことをよく思い出せ」

 ゴミクズのくせに偉そうに。

 でも、ここに来る前に確か何かしたような。

「何か十字架を握ってカードに打ち付けた。そしたら、ここにいた」

 するとゴミクズは頭痛でもしたかのように頭を押さえる。

「それは自らやったのか?」

「いや、やらされた」

 そうだよな。あれはあの子が勝手に・・・・・・・。

 そうだ!あの子!

「おい!ゴミクズ!」

「・・・・・なんだよ!」

 やっぱり気にしてるみたいだな。その名前で呼ばれることが。

「ここを出るにはどうすればいい?あの子が危険だ!早く助けに行かないと!」

「それは黒髪のポニーテールの女か?」

「ああ。知ってるのか?」

 俺の質問を無視してゴミクズは話を続ける。さっきとは違う真剣な面持ちだ。

「その女に何を言われた?」

 何?それは・・・・・・・。

「すべての運命を受け入れるかって言われた」

「そうか」

「あの子は運命を受け入れれば、ウルフを振り切ることが出来ると言った。俺はあの子が助けることが出来るのなら運命を受け入れる。たったひとりの女の子守れないくらいなら死んでもいい。だから、受け入れる」

 するとゴミクズは下の向いて薄く笑みを浮かべた。

「やばい状況にしてはいい判断じゃねーか。アキナの奴・・・・・・・」

「何か言ったか?」

「いや何も」

 するとゴミクズは少し距離置いて俺の方を振り返った。そして、右手のひらを俺の方に向けてこう叫んだ。

「貴様の覚悟しかと受け取った!貴様にそれ相応の力を与える!これから起こる運命をすべて受け入れて前進しろ!それが貴様に与えられた運命だ!望みを言え!」

 望み。そう。俺の望みは単純で簡単だ。

「あの子を助けたい。だから、ウルフを振り切る・・・・・いや!ウルフを撃退する力を俺によこせ!この野郎!」

 するとゴミクズは爆笑した。高々と声をあげて笑った。

「俺に力をよこせだ?そんな悪役みたいなことをいう奴がいるか?」

 若干、バカにされたような気がする。

「だが、気に入ったぞ!国分教太!」

 するとゴミクズの周囲に渦が巻いた。そして、足元には青く光る線で魔法陣が描かれていた。

「貴様に力をやる!ドンと暴れてきやがれ!」

 その瞬間、再び視界が真っ白になった。何かが吹っ切れたみたいだ。そうだな。これは俺の予想だが、たぶん恐怖だろう。

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