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騒がしくも平和③

 学校が借りた施設はバスで2時間と言ったところにある山の中だ。春だというのにひんやりとした空気。新鮮で心地いいものだ。周りで囲まれているが人が歩きやすいようにそれなりに間引きされた森の中全体が公園のようになっている。

「え~。お前たちはここに遊びに来たわけではない!」

 野澤のどうでもいい説明を聞き流す。

 施設は二階建てでそれなりのショッピングセンター並みの広さを持つ。敷地には野球場と体育館、浴場があり普通のホテルと言えばホテルに見えなくもない施設だ。歩いていけば、駅のある商店街があり、温泉街がありそれなりに観光ができるようになっている。一応、研修のスケジュールに駅前の散策が組み込まれている。勉強だけではなく新たな信頼関係の樹立も目的とした研修らしいのだ。

「というわけだ!分かったか!」

 うるさい。お前の出番はもうないんだよ。

「では、それぞれの部屋に移動だ!」

 野澤の合図で全員が立ち上がり荷物を持ち移動する。

 俺は4人部屋を人数の関係で2人で使うことになっている。そのいっしょになる奴が。

「教太!俺と部屋同じだよな!」

 このバカとだ。面倒だがイサークという教術師の襲来を備えるための作戦を立てるにあたって俺の部屋は都合がいい。こいつを追い出せば簡単に作戦会議が出来る。

 周りを見渡すが霧也の姿が見当たらない。どこに隠れているのか。バスは駐車できるところに移動してしまってここにはない。バスを降りるときに上の方を注目したが、霧也の気配はなかった。

 施設のロビーはホテルのような豪華さはないが広さはホテル並みだ。中央は吹き抜けになっていて談話が出来るようにソファーが並んでいた。近くには自動販売機もある。飾り気がないのが少しさびしいところだ。

 俺とオカマの部屋は1階の階段横にある。2階が女子専用の階になっているのでアキと合流しやすい場所だ。非常に都合がいい。問題があるとすれば。

「おお!ここが俺と教太の部屋か!」

 何だろう。吐き気がする。

「4日間よろしくな!」

「死んでしまえ」

「部屋に入って第一声ひどくない?」

 無意識だ。

 俺が過ごす部屋は6畳の広さの畳の部屋だ。中央に机が置いてありテレビもある。クローゼットらしき収納にはおそらく布団等が入っているのだろう。外を見渡すのに十分な大きさの窓もある。

「どうした?そんなにこの部屋が珍しいか?」

「黙れ、永遠に」

「誰か部屋を変わってくれ」

 いざとなれば、窓からも入り口からも逃げれる。とにかく今は作戦をたてなければ。

 そう思った時に扉がノックされた。

 ゴミクズが反応して様子を見に行く。

「おお!美嶋のそっくりさん!えっと、名前は・・・・・・」

「三月アキですよ。オカマさん」

「・・・・・・・教太。俺の名前は?」

「オカマ」

「みんな嫌いだ」

 俺たちもお前のことが嫌いだ。

「教太さん。そろそろ」

「・・・・・・そうだな」

 アキがオカマに聞こえないように俺に耳打ちをする。今の状況、こいつがすごく邪魔だ。

「おい、オカマ」

「俺はオカマじゃねーよ!」

 しつこいな。いい加減に認めろよ。ゴミクズみたいに。

「俺とアキの分の飲み物を買ってこい」

「何で俺が!」

「いいか。よく訊け。これはお前にしか頼めないことなんだ」

「・・・・・・俺にしか?」

「そうだ。お前にしか」

「分かったよ!買ってくる!何がいい?」

「コーラ」

「私は紅茶をお願いします」

「了解した!」

 ゴミクズは部屋を飛び出していった。この貴重な自由時間にあんなゴミみたいな邪魔者がいては立てられる作戦も立てることが出来ない。

「これでよかったか?」

「はい。オカマさんには少し悪いですが」

 アキは扉を閉めてその扉に向かってカードを当てて十字架を打ち込む。ぼんやりと青色の三角の一番レベルの低い陣が発生する。

「何したんだ?」

「人払いです。これで誰もこの部屋に入ってこれません」

「誰もって霧也はどうするんだ?」

「俺はここだ」

 声が聞こえて振り返る。だが、そこには誰もいない。でも、しっかり霧也の声は聞こえたぞ。

「こっちだ」

 収納の扉が開くと中から霧也が出てきた。

「いつの間にそんなところに」

「教太がここに入る前からだ」

 そういえば、スムーズに俺たちと合流するために出発前に俺とアキの部屋を確認したんだ。俺はオカマと二人部屋だったからここでなら合流しやすいということを事前に打ち合わせていた。

「気付かなかった」

「人払いの結界を張ってたからな」

 その狭い収納スペースに?お疲れ様です。

「さっそく作戦を立てるぞ」

「お、おう」

 今回は今までと違って敵が攻めてくるという確信がある。今までと違った緊張感が俺の中で葛藤している。

「地図は用意してきました」

 アキがこの施設周辺の地図を取り出した。俺もそれに便乗して施設の地図を取り出す。この施設は建物以外の森の一部も敷地になっている。地図にするとなかなか広さになる。

「周りを森で囲まれているのか」

「そうですね。どこから攻めてきてもおかしくないです」

 このあたりは俺のいるような施設の他にも同じような建物が並ぶように立っている。他にも金持ちの別荘とかが並んでいる。どれもなかなか敷地を要する。だが、大半が森になっていて身を隠すのには最適だ。

「そういえばさ。向こうは俺たちが泊まってる施設がどれだか知ってるのか?」

「知っていない可能性もある」

 だったらひたすら隠れてやり過ごすというものありだな。

「私は知っていると思いますよ」

「確証は?」

 霧也が聞く。

「マラーの一味がイサークさんの襲撃を予告したなら、おそらくイサークさんがここに襲撃するように仕込んだはずです。そうなると向こうもこちらの情報を持っていると考えたほうがいいでしょう」

 さすが魔女だ。俺も納得する。

「するともしかしたらすでにこの施設に忍び込んでいるという可能性も」

「否定できないな」

 難しい。戦略ゲームならやったことはあるが、持っている情報があやふやで適格性がない。マラーの一味が言っていたことも本当なのかも分からない。

「とにかく探知を掛けてみましょう」

「探知?」

「前回、異次元の穴を探した時に使ったものです」

 机の上の地図の上にカードを置く。そのカードに向かって霧也が十字架を打ち付ける。すると今後は五芒星の陣が地図の上に発生する。その陣が地図の中に溶けるように消えると地図上に青い点がいくつか浮かんできた。

「これは?」

「探知魔術です。地図上にある魔力を探知してくれるものです。持っている魔力が大きいほど、この青い光が強くなります。異次元の穴は大量の魔力を使う物なのでより強い光が発生します。ちなみにここに三つ固まって光っているのが私たちですね」

 本当だ。ちょうど、施設の真ん中で光っている。二つは眩しくはないが強い光でもう一つは今にも消えそうな弱々しい光だ。俺とアキの魔力の差がどれほどのものなのか分かってしまう。今それよりも異次元の穴探しだ。敵は異世界の住民だ。アキたちと同じように異次元の穴を使ってじゃないとこっちには来れない。でも・・・・・・。

「ないみたいだな」

「そうですね」

 地図上には俺たち以外の光は観測できなかった。だんだん光が消えていく。発動が終わったみたいだ。

「地図より外で出入りしたか、まだこっちに来ていないかのどちらかだな」

「イサークさんが多くの部下を連れているという情報をあります。あの人の能力を考えると」

「そうだな。奴の能力を使うには魔術師の数が重要だったな」

 そういえばまだ聞いてなかった。

「俺はそのイサークの使う教術を知らないぞ」

「そうでしたね。すみません」

 霧也とアキは知っている。なぜなら味方だったみたいだしな。

「イサーク・ブランド。彼の名前です。イサークさんは教太さんと同じ教術師です。イサークさん自身は魔術を使うことが出来ません」

「どういうことだ?」

「イサークさんの使う教術は無属性魔術光属性です。聞いたと思いますが光属性は攻撃力を持たいないものがほとんどです。イサークさんも同じで使用する教術自体には威力はありません」

 でも、アキたちのボスに匹敵するんだろ?

「イサークさんは別名魔力喰い(マジック・イータ )と呼ばれています」

魔力喰い(マジック・イータ )・・・・・・・」

「その名の通り相手の魔力を吸収して自分の物にする教術です」

「魔力を吸収するのか」

「例えば、風也さんの魔力を吸収した場合、風也さんのメインである風属性魔術を使うことが出来る。その状態で今度は私の魔力を吸収した場合、使える属性魔術が上書きされて私のメインである雷の魔術を使うことが出来ます」

 つまり、吸収した魔術師の魔力で使うことが出来る属性魔術を使えるということか。使えるのは最後に吸収した魔術のようだ。

「これは魔術師の場合だ」

「え?」

「教術師の魔力を吸収した場合はその教術師と同じ教術を使うことが出来ます」

「ということはイサークが俺の魔力を吸収したら」

「お前の力が使える」

 それってすごく不味くないか?

「ということはお前らの最強だと言われるボスの魔力を吸収すれば、ボスの教術が使えるってことか?」

「そうだ。だから、厄介なんだ」

 俺はまだ知らないことがたくさんあるようだ。神の法則が分かっていてもそれはほんの一部に過ぎない。アキたちにとっての神の法則を俺は知っている。でも、俺にとっての神の法則つまり魔術は未だに知らないことであふれている。

「だから、もしお前の教術が吸収されたら奴はシンの再来になる。それだけは阻止するんだ」

 そうだ。俺の力は世界を壊せるくらいものだ。まだ、全然使うことが出来ないだけで本当はチート並みの強さを誇る。誰にも渡すわけにはいかない。

「それと魔力が吸収されるということは魔術、教太さんの場合は教術ですけど。それを発動するための魔力も奪われます。弱点があるとすれば、魔力のネゴ削ぎ奪うためにはゼロ距離まで近づかないといけないのであまり近付かないのがベストです」

 それはつまり俺になるべく戦うなと言っているのに等しくないか?だって、俺の攻撃って拳だぞ。触れた物は原子レベルまで破壊する能力はせいぜい手から数十センチしか有効範囲がない。無敵の槍を使えば射程が数メートルまで伸びるが、単調な攻撃だから見切られやすい。この前霧也に言われた。

「イサークの話はこの辺にして作戦を立てるぞ」

 すると扉をノックする音が聞こえた。俺たちは素早く振り向いて戦闘態勢に入る。霧也はいつものバットケースから刀を取り出す。アキもカードと十字架を取り出す。俺も両手に力を入れる。

「教太!アキ!いるんでしょ!開けなさい!」

 この声は美嶋だ。ホッと一息を撫でおろす。霧也は刀をバットケースにしまい、アキも取り出したものをバックの中にしまう。

「なんでこちらのアキナがこの部屋に入ろうとしている。人払いしただろ」

「魔術が秋奈さんを私と勘違いしているのが原因だと思います」

 ということはまったく一緒ってことだな。DNA判定とかするとまったく一緒だったら世界中の科学者が驚くような気がする。

「とりあえず、作戦会議を中断しましょう」

「まだ、何も決めてなくね?」

「仕方ないだろ。とりあえず、この机の上にあるものを全部あの収納にぶち込め。俺が入って人払いしておくから」

「分かった」

 こんな状態で襲撃してくるかもしれないイサークと戦えるのだろうか?不安が募る。

 そして、もう一つの不安は美嶋だ。いつまで隠し通せるか分からない。前のウルフの時のように美嶋が魔女と間違われて殺されるのではないか。魔術を知らない美嶋をここに連れてくることもかなり危険だ。

 薄々勘付いていた。ゴミクズが言っていた誓った約束がイサークを倒すカギ。それって美嶋じゃないだろうか。つまり、美嶋が魔術と・・・・・・・考えるのはやめよう。

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