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迫る影①

 時間は午後8時。俺は今、家に向かっている。明日の宿泊研修に向けて衣類などの必要なものを取りに戻るためだ。1週間に1回帰るか帰らない頻度でしか出入りしていない。一応一声を掛けるのだが誰も俺なんて見えていないかのように無視をするのだ。一度目を合わせるとここから出て行けと目線で俺を見てくる。

もう、あそこにいるのがつらいのだ。

 でも、必要なものは全部家にある。取りに帰らないと明日から大変だ。

「はぁ~」

 溜息が止まらない。街灯だけが道を照らす。家での関係は街灯なんていう明かりはなく常に真っ暗で解決する方法が見当たらない。俺も向こうも関係を修復する気はさらさらないようだ。でも、学費は向こうが払っている。小遣いもくれる。どこかに関係を修復するきっかけが存在することは確かだ。それを見ないふりをしている。

 重い足取りで夜の街を歩く。人通りは少ない住宅街。俺以外に人はいない。

ふっと思って振り返る。そこには誰もいない。この力を手に入れてから連続で死にそうになった。常に狙われる身としてはこういうところでひとりになるのは不安だ。イサークとかいう教術師が突然背後に現れたりしないよな・・・・・・。

 再び前を見る。誰もいない。ホッとして夜道を歩く。角を曲がって少ししたところの地面に何か落ちていた。奇妙な面だった。赤いラインが入った悪魔みたいな仮面だ。

「なんだこれ?」

 俺が面に気をとられている時背中に背後に人の気配がした。振り返ろうとすると背中に何か固いものを突き付けられた。

「動かない方がいいぜ」

 かちゃという音がした。背中から伝わる冷たい鉄の感触とその中心に穴が開いている。

「今、突きつけてるの拳銃だぜ」

「な!」

「騒ぐな動くな。いつでも殺せる状態であることを忘れるな」

 意味が分からない。なんで俺は拳銃を突きつけられてるんだ?何か悪いことしたっけ?

 見てもいないのに恐怖で足が震えて何も言い返せない。今までの死と隣り合わせの時には感じなかった緊張。これは初めてだ。

「教術師、国分教太でいいよな?」

 教術師という単語を聞いた瞬間俺の中でスイッチが切り替わった。今までの死と隣り合わせの時と同じ緊張。だが、そこに恐怖はなく頭も正常に回っている。きっと、魔術が関わって来たからゴミクズが恐怖を消してくれたのだろう。

「お前魔術師か」

 声からして男だ。この拳銃は魔武だ。ウルフやリュウが使っているのを見ているから分かる。これだけ至近距離だと自分にも被害がこうむる。だから、下手に魔術を絡めた攻撃はしてこない。

「さぁ、どうかな?」

 イサークの部下か?多くの部下を連れてきていると言っていた。その一人かもしれない。

「明日、3泊4日の旅行に行くらしいな」

「何でそれを」

「全部知ってるぜ。まだ、その力を完全に使いこなせてないこと。魔女を守ろうとしていること。美嶋秋奈を魔術から遠ざけようとしていることも」

 何だこいつ。なんでそんなことまで知ってるんだ。

 とっさに動いて拳銃を破壊すれば形勢逆転できるかもしれない。やってみるか・・・・・・。

「おっと、力を発動しては困るぜ。どうなってもいいのか?美嶋秋奈が・・・・・」

「くっ」

 人質って言うのはこういうものを言うのか。

「さて、俺の情報がどれだけ正確なのか分かってくれたか?」

 目的はなんだ?ゴミクズの力が目的ではないようだ。なら、アキか?だったらなぜ俺を狙う。

「明日の旅行先でイサークという教術師がいる」

「何!」

「奴は自分の部隊を率いてお前を殺しにかかる。魔女それと風上風也にそれなりの装備をして旅行に向かうように伝えろ」

「何でそれを!」

「ふたりにはそこの面を持っていけば分かるぜ」

 目の前に落ちている面。これはこいつがわざと俺に気を引くために落としたのか。

「じゃあな。健闘を祈るぜ」

 その瞬間男は俺を押し倒した。俺はバランスを崩して地面に倒れる。その際、体をひねって後ろを振り返り男の顔や特徴だけでも見ようとしたが曲がりかどの近くだったためにそこには誰もいなかった。

「どういうことだ?」

 俺は面を拾って立ち上がる。

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