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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
風と氷の糸
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風と氷④

 森の中を歩き回る氷の化物。それが俺の恋人だと考えたくもない。体を侵食している氷は右半身を完全に覆っている。あのきれいな顔にも氷が侵食して半分を氷の仮面でおおわれている。角のような装飾がある。アキナが言っていた。ブリザード・ハンド。それは氷のドラゴンのことを意味している。氷華が梨華がだんだん氷の龍と化している。

「助けないと・・・・・・」

 だが、体中が痛む。さっき施した治癒魔術が切れたようだ。もう、俺に体を動かす気力がない。このままあの氷華をほおっておけない。こちらの世界に魔術のことを知られる訳に行かない。

 剣を拾い上げる。右風刀は無事だったが、雷属性の魔武の小刀は折れてしまった。風属性では今の彼女に太刀打ちできない。どうすればと思った時だ。

「いつまで寝てんだ、風上」

 俺を呼ぶ声がした。国分教太だ。

「なんだ。君か」

 その両手は魔力によって無理やり傷を治した跡がある。大きく傷跡がある。きっと、その両手ではものが掴めないくらい本当は痛むはずだ。なのに彼はカードを持ってきている。

「これはアキから貰った回復魔術だ。自分の魔力で回復させろよ。それで手伝え」

「何を?」

「アキと火輪が協力してあの氷の腕を破壊できるだけの火属性魔術を今準備してる。それには隙もデカいからあの氷華を引きつけないといけない。協力してくれ」

 ここぞという場面ですごい力を発揮する男だと感心してしまう。アキナが言っていたようにアゲハとの戦いの中で彼は自分の力がどういうものなのかを知り理解した。あの神の法則を解いたというらしい。だから、賭けてみようと思う。

「分かった」

「じゃあ、俺はこれから雷恥の方にも行ってくる」

「援護しよう」

 俺は自分にカードを打ち付けて回復魔術を施す。体が多少は軽くなるがそれでも痛みが完全にとれたわけじゃない。だが、国分教太は氷華のために動いていてくれている。俺はアキナを守るためのひとつの武器として彼を扱っていた。そのことを彼に言ったところ同じように利用してやると言っていたが、今の彼はそんなことを考えていないだろう。

「不器用だ」

 だが、嫌いじゃない。

「氷華!」

 叫ぶと元の美しかった姿は変貌して氷の化物みたいになってしまっている。そんな氷華を俺は助けたい。

 氷の刃を作ってこちらに放ってくる。俺はそれを右風刀の風を使って移動力あげてかわす。

 遠距離では攻撃が当たらないと判断したのか今度は突っ込んでくる。これ以上あの左氷刀の攻撃をもろに受止めていたら右風刀ももたない。でも、やるしかない。

「師匠の剣。どうか俺に力を」

 氷の腕の拳の攻撃をかわす。そこに左氷刀の斬撃。俺はそれを受け止める。腕、足がきしむ。剣の前に俺が壊れそうだ。

「はぁぁぁぁ!」

 雷恥だ。雷の二刀流で左氷刀に斬りかかる。雷恥の雷属性の攻撃は弱いわけじゃない。だが、それを遥かに上を行く氷。氷華の契約した悪魔術はやはり強い。が、その分彼女は体を乗っ取られている。

「それじゃあダメだ!」

 俺は全身の力を振り絞って氷華の斬撃を振り払う。そして、氷華の懐ががら空きになる。普段なら斬りにかかる。でも、それが氷華だと思った瞬間躊躇する。

「躊躇するな!」

 国分教太が俺の代わりに氷華の懐に突っ込んで氷の腕を破壊しにかかる。でも、破壊速度が遅く吹き飛ばされる。

「このー!」

 雷恥が刃に雷を宿して突撃していくが氷の刃に進行を阻まれて動きが止められたところに左氷刀の斬撃に襲われる。直撃はしていないが勢いによって発生した爆風に吹き飛ばされる。

「くそ!」

 俺は無謀にも氷の腕を破壊しにかかる。でも、びくともしない。振り払おうとするところを体をひねってかわす。だが、尻餅をついて地面に落下してしまった。その瞬間、氷華が左氷刀を俺に向けて振り上げていた。死ぬと思った。

 しかし、その斬りこんできた左氷刀を受け止めた。国分教太と雷恥だ。国分教太は両手に力を発動させた状態、雷恥は雷を帯びた二本の刀で受け止めている。どちらも苦しそうだ。

「こら!風上!お前の守りたいのはアキだけか!」

「そうっすよ!氷華さんも同じじゃないんっすか!」

 そうだ。俺は氷華も守りたい。国分教太の言っていたようにアキナに美嶋さんに自分の日常を守ろうとしている。それを誰が無理だと言った。だが国分教太は無理だと言っていない。俺もそうだ。俺も守るものがひとつじゃなくてもいいじゃないか。俺が守りたいのはアキナはもちろん、雷恥に火輪に氷華。俺の家族を・・・・・・。

「俺の家族を守る!だから、戻ってこい!氷華!いや、梨華!」

 俺は右風刀で起こした風を氷華に向かって起こす。その勢いに態勢を崩す。

「この野郎!」

 雷恥の雷の連続攻撃が氷の腕の耐久値を下げる。

「はぁー!」

 国分教太が両手の力で氷の一部を消していく。

 誰の目から見ても氷の腕は今にも壊れそうだ。

「今だ!風上!」

「いくっす!風也先輩!」

 俺はすべての魔力を右風刀に込める。この一撃であの氷華を縛る悪魔を破壊する。

「戻ってこい!梨華!」

 俺の右風刀の斬撃で氷の腕がほぼ破壊された。

「やった!」

 いや・・・・・。

「まだだ!」

 氷の腕が再び再生していく。陣を直接破壊するしかないようだ。

「風也さんどういて!」

 俺が振り返ると杖を構えたアキナが走り込んでいた。その杖の先端は赤く変色している。湯気が出ていて熱を感じた。アキナは俺の横を通り氷華の再生しかかっている氷の腕に向かって行く。それに気づいた氷華は左氷刀で斬りかかるが火の玉が飛んできて邪魔をした。それを撃ったのはアキの後ろにいた火輪だった。全員の力を合わせた攻撃がさく裂する。

「自然の炎!ナチュラル・フレア!」

 その瞬間、アキナの杖の先端が火で出来た槍が発生した。それが収縮されていたようで一気に放出して大爆発が起きた。周囲は氷で凍えきっていたが今度は逆に炎で包まれた。爆発した瞬間、爆発に巻き込まれたアキナが俺の元に飛んできた。俺はそれをしっかりと受け止める。

「アキナ!大丈夫か!」

「ハハハ。大丈夫です」

 笑っていた。

「アキ!」

 国分教太もやって来た。

「教太さん!ご無事で何よりです」

 アキナは彼を見るとすごくうれしそうな顔をした。俺には見せない顔だ。

「敵わないな・・・・・・・」

 この国分教太という少年は何か大きなものを持っている。いろんなもの受け入れやすい。それでたくさんの人が集まってくる。それは俺もそうかもしれない。

「先輩!」

 それは雷恥の声だった。それは氷華を助けることが出来た喜びのためのものではなかった。それは明らかに焦っていた。

「氷華さんが!」

 まさか、あの爆発で氷華が大けがをしたのかと思った。でも、そんな心配はなかった。なぜなら氷華は健全だった。氷の腕と氷でできた刃を従えた左氷刀。全身ドラゴンのような氷で覆われた氷華。怪我どころか無傷だった。

「あれだけのことをしてまだ・・・・・・」

 魔女であるアキナも予想外のようだ。もう手はないのか。

 ゆっくりと氷華が近づいてくる。近くの火は氷華の発する冷気で消されていく。火よりも冷気が勝っている。この状況は異常だ。

「シネ。マジョ」

 左氷刀を振り上げる。俺がいるのにも関わらず攻撃してとしている。もうそこには氷華はいない。

 俺はアキナを守るように抱き寄せる。国分教太が割って入る。でも、彼の両手には力が発動していない。両手の痛みで力が発動できないのだろう。もう、終わりだと思った時だった。

 赤黒い炎が氷華の持つ左氷刀を吹き飛ばした。その赤黒い炎には見覚えがあった。

「すまんな。遅れた」

「大丈夫だった?風也ちゃん」

 リンとリュウガだった。

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