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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
風と氷の糸
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風と氷③

「何これ!離して!」

 氷華がもがいて抵抗しようとするがそれでも氷の右腕は主の意思を無視して動き続ける。氷の一部が左腕の方まで伸びてきてもう体全体が言うことを訊かないようだ。折れた太刀に氷が集まっていく。そして、折れた剣先を補うように氷の刃が完成する。

「氷華!」

 風上が再び氷華を助けるべき突撃する。今度は氷華の周りに無数の氷の刃が出現する。そして、その氷の刃が四方から風上を襲う。それを交わすので風上は精一杯だった。

「助けに行かないと!」

「ダメです!」

 アキに強く引き止められる。

「何するんだよ!」

「教太さんには風也さんみたいな機動力がないです!あんなところに飛び込むことは自殺行為です!」

「でも!」

 その時、風上が氷の刃に押されて吹き飛ばされる。

「霧也!」

 もうおかしい。おかしすぎる。

 すると氷の刃のひとつが氷華の方に向かった。

「何?何なの?」

 その目には涙であふれている。自分の恋人をこれ以上傷つけたくないという意思の表れだ。だが、それを許さないのがあの氷の腕だ。

 そして、氷の刃は氷華の腹部に刺さる。

「え?」

 腹部から流れ出る血。じわりじわりと服に染みついていく。

「な、なんで・・・・・・」

 そういって氷華は気絶する。そして、すぐに顔をあげる。その時の氷華の瞳には輝きがなく、黒く染まっている。体を侵食する氷の進行は止まった。氷の腕で宙に浮いていた氷華は地面に自分の足で立つ。その腕の長さは相変わらず氷華の倍近くあり地面を引きずる。

「コロス」

「え?」

「マジョ・・・・・コロス」

 そういって跳び上がってアキに向かって斬りかかってくる。

「くそ!アキ!下がれ!」

 俺は両手の力を発動させて氷の刃の攻撃を受け止める。その威力はさっきと比べ物にならない。俺の回り地面がくぼむ。まだ、両手の痛みがしっかり引いていない。痛みとの戦いだった。その時、俺の頬を垂れてきた赤い液体。それは氷華からだった。氷華の腹部から流れ出る血。それは明らかに普通じゃない。

「氷華!もうやめるんだ!」

 俺は攻撃を受止めながら言う。だが、そんな俺の声は氷華には届いていない。

 氷の腕が俺を殴り飛ばす。その時に響いたボキボキという音。痛みが脇腹全体に伝わる。吹き飛ばされた俺は木に激突する。呼吸するのが苦しくなった。俺はアキの治癒魔術をしてもらっていない。回復魔術しか受けていない。だから、体の怪我が治らない。動けない。でも、氷華からの追撃はなかった。氷華の標的はアキだ。

「アキ!逃げろ!」

 だが、アキは逃げようとしない。いや、できないのだろう。その顔は殺気であふれるウルフを目の前にした時の美嶋だった。

 剣を振り上げて斬りかかる。そこに風上が飛び込む。右風刀と小刀で攻撃を受け止める。小刀の雷を起こした状態だ。その巨大なパワーに風上が押しつぶされてしまいそうだ。

 助けに行かないといけない。でも、体が動かない。アキでは助けることはできない。氷華は意識が完全にあの氷の腕に乗っ取られている。どうすれば・・・・・・・・どうすればいいんだ・・・・・・・・。

「俺たちを使うっす」

 そこにいたのは拘束された雷恥と火輪がいた。

「で・・・・・・・でも」

「このままだと先輩が!」

「風也さんが死んじゃう!」

 このふたりはアキを殺しに来た連中だ。そんな奴らに助けを求めていいのだろうか。

「国分教太!」

 託してみるしかない!

 俺は雷恥を拘束する縄を破壊する。そして、自由になった雷恥はすぐに火輪の縄を近くに置いてあった自分の剣で斬る。

「ありがとうっす。国分教太」

そういって雷恥は二本の刀を持って氷華に向かって行く。

「火輪!援護よろしくっす!」

「分かった!」

 そういってカードと十字架を取り出す。火輪は風上に剣を破壊されている。そのための後方支援だろう。

 カードを打ち付けると火の玉が発生する。ウルフが使っていたものと同じ魔術のようだ。その火の玉を氷華に向けて撃つ。氷の腕に直撃するが利いている様子はない。属性的には相性はいいはずだ。注意が風上から火輪に向く。その目線が外れた死角に雷恥が斬りこむ。雷を帯びた状態だ。だが、氷華を乗っ取る氷の腕はびくともしない。こちらも属性的には相性がいいはずだ。なのに氷華の氷の腕は壊れない。

 氷華は氷の腕で雷恥を吹き飛ばす。その後は氷の刃を作って火輪を襲う。俺は残った力を振り絞って火輪に向かって飛び込む。火輪は俺に押されて氷の刃の直撃を免れたが、腕に傷が入り血が出る。

「なんで?」

「人の死ぬところを見せるわけにはいかない」

 アキがここにいる限りそれは守らなければならない。

「氷華!」

 風上が飛び込むが今度は太刀の横切りを剣で防ごうとするが勢いに負けて吹き飛ばされる。そして、標的が俺たちに変わった。ゆっくりと近付いてくる。

 火輪が火の玉でけん制するものの全く動じず近づいてくる。火輪も焦る。俺も少しでも逃げるために這いずって逃げる。

 だが、向こうの方が早かった。氷華の氷の腕が大きく振りかぶる。

「ふたりとも目を閉じてください!」

 アキの声だ。瞬間、俺たちと氷華の間に小さな光の玉が飛んできた。

「目を閉じて!」

 火輪が俺に覆いかぶさるように目を保護する。その瞬間、ものすごい閃光が光の玉から発する。俺も少し見てしまって目が痛いが視界は良好だ。

「教太さん大丈夫ですか?」

「あれはアキが?」

「はい。そんなことよりも距離を置きましょう」

 氷華は目を押さえて苦しんでいる。

 アキは落ち着いている。ウルフの時と同じ感じになっている。この時のアキは何となく安心できる。

「どうするの?あんたならどうにかできるでしょ?魔女!」

「氷華さん自身があの契約系の魔術を抑え込むか、私たちで契約系の魔術の陣を破壊するのかどちらかをしなければなりません」

「できるのか?」

「陣を破壊する魔術の陣はかなり簡単に作れます。でも、氷で覆われているこの地面に陣を書くのは容易じゃないです」

「なら、私の火で溶かせば」

「ランクの問題です。溶かすよりも凍る速度の方が早いです。

「た、確かに」

 氷華の視界が回復した。近くの茂みに身を隠しているがいつ見つかってもおかしくない。

「なんで氷華の氷は溶けないんだ?」

「おそらく、火の威力が低すぎて氷を一瞬で破壊するほどの火力がないのが原因だと思います」

 何だろう。何か俺はいい方法を知っている。でも、これは俺の記憶じゃない。これはおそらくゴミクズの記憶だ。

「前にウルフと戦った時に使った周りに炎を集めて一気放出する火属性魔術を使ってなかったか?」

「確かに使いました。ナチュラル・フレアのことですね。でも、あれはたまたま周りに炎があって条件が良かったからで今はその炎はどこにもないです」

「火輪の炎を集めて一気に放出するのはどうだ?いくら火力がなくても集めるだけ集めて一気に放出すれば、あの氷の溶かせないか?」

 これは俺の意見じゃない。これはゴミクズの意見が頭の中に流れたのもの俺がただ話しているだけだ。

「確かにいい方法かもしれないです。でも、温度差ですぐに氷華さんに見つかります」

「時間を稼げばいい」

 俺は立ち上がる。ウルフ、アゲハ戦と違い怪我が目に見えるものだ。だが、大きく違うのは多くの味方がいるということだ。

「風上と雷恥を起こしてくる。三人がかりならきっと大丈夫だ」

 そういってひとり俺は茂みから抜けようとする。するとアキが手を掴んだ。

「止めるな。俺はこの力を使って全員助けたい。それが敵であっても味方であってもだ」

「・・・・・・・教太さん」

 この力で多くの人を助けたい。

「・・・・・・分かりました」

 そういってアキは俺の手の甲に治癒魔術を施してくれた。

「無理はしないでください」

「ああ」

 火輪もアキに協力してくれそうだ。思いは同じ。氷華をあの悪魔から助ける。

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