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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
風と氷の糸
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風と氷②

 ここで押さえておきたい。

 魔術は通常使える属性魔術が限られている。それは魔力の波長によって決まる。例えば、風属性の魔術をメインに使えるのなら他に使える属性魔術は水属性のみになる。だが、風上は使えないはずの雷属性の魔術を使った。これは風上が前に教えてくれた例外というものだろう。

「なんで風上が雷属性を?」

 この場において誰もが驚いているが誰も追及しようとしなかった。驚いているが何かみんな知っているみたいだ。

「教太さんは知らなくても無理ないです。基本的には風也さんは風と水しか使の属性魔術しか使えません。ですが、風也さんは例外に当てはまっています」

「その例外って?」

「風也さんが私の生命転生術によって生き返りました。その時に私の半分の命の他に魔力も風也さんに流れました。つまり、風也さんには元あった自分の魔力と私の魔力が流れています」

 そういえば、前にもアキが説明してくれた。あの時は魔術というもので会ってばかりそれどころじゃなかった。アキがメインに使う属性は雷。風上はそのアキの雷の特性を波長を持つ魔力を使ってあの魔武を使ったということだ。

 風上はやはり強い。俺の想像しているよりもはるかに強い。

「さすが強いわね、風也。でも、なんでよ?」

 俺には氷華が何を言っているのか分からなかった。

「なんで追撃しないの?隙はいくらでもあったでしょ?あんたがそれを逃すはずがない」

 まだ、風上は迷っている。恋人を斬ることに。

 氷華の破壊された氷の腕が再生していく。そして、また同じように短刀を握っている。

「それは君のことが・・・・・・・・」

 言いかけている途中で氷華は風上に斬りかかる。今度は太刀から先に攻撃してくる。風上は小刀の雷を起こして攻撃に備える。だが、何かを察知したのか攻撃を紙一重でかわす。そして、氷の短刀が風上に突き刺さる。風上は血の塊を吐きだし、左肩に血がにじむ。

「どう?痛い?痛いでしょ?私の心の痛みはこんなものじゃないのよ?」

 そういって刺さった刀をさらに差しこむ。

 風上は必死に痛みをこらえる顔をする。氷華はなぜか笑い続ける。

「痛いのなら言ってよ。私のところに戻ってくるって。ほら、言いなよ」

 だが、風上は何も言わない。そして、氷の短刀は根元まで刺しきってしまった。

「ねぇ?何か言ってよ」

 すると風上は口を開く。

「俺は君の元には戻らない」

 その瞬間、ただでさえ氷華の氷の魔術によって冷え切っていた周辺の空気がさらに凍りついた。

「そう。なら、私の好きな風也のまま死んで」

 氷華は差し切った氷の短刀を思い切り振り上げた。風上の左肩からは大量の血が噴水のように噴き出る。そして、風上がその場に膝から崩れる。倒れはしなかったが血が噴き出る左肩を必死に抑える。血によって左手は赤く染まり、顔の左側も血まみれになっている。氷華の美人の顔にも風上の返り血がべっとりとついている。透明の氷の腕や短刀には赤い血がついて赤色になっていく。

「アハ・・・・ハハハ。・・・・・・・・キャハハハハハハ!」

 正気じゃない。思い寄せる女の人には全く見えない。それはまるで魔女のようだ。

 すると、アキが俺の裾を引っ張る。その顔は恐怖で真っ青になっていた。もう、これ以上人の死ぬところを見せることはできない。

「アキ。離してくれ」

「で、でも・・・・・・・・」

「行かないといけない。風上が危ない」

「でも」

「離してくれ。俺もアキも風上の死ぬところなんて見たくないだろ?」

 小さく頷いた。

「ありがとう」

 そう言ったらアキは俺の裾を離してくれた。俺が風上を助けに向かうわけではない。アキのために風上を死なせない。

 氷華は戦意喪失してしまった風上にとどめをさすべく、氷によって大剣のようになっている太刀を振り上げる。

「バイバイ。私の初恋」

 両手に力を込めて力を発動させる。そして、氷華の太刀に向かって殴りにかかる。それに気づいた氷華は短刀で俺を斬り付けに来た。俺は走りながら滑ってかわす。そこに氷華の太刀が俺を襲う。俺はそれを両手で受け止める。破壊される音と氷が形成されていく音が響く。手は凍るように冷たい。でも、俺は負けられない。彼女は囚われている。風上に力に責任に。俺が助けてやる。その闇から!

その瞬間、氷でできた刃が砕けだ。俺は太刀自体を破壊するために太刀向かって靄を近づける。氷華は太刀が破壊されると気付いて太刀を引いて代わりに氷の短刀で攻撃を仕掛ける。

 俺は両手でつかみかかるようにそれを止める。靄の中に入り抜け出せなくなった氷の短刀は破壊される。そして、氷の短刀と一体となっている氷の腕も半分くらい破壊される。氷華は態勢を立て直すべく下がる。

 俺は風上と氷華の間に入るに立ちはだかる。

「何?邪魔するの?」

 氷の腕と短刀は簡単に再生した。

「うわぁ、きりない」

「何で助けた?」

「うるさい。黙ってろ」

「そもそも、悪いのは俺だ。アキナを守ることばかりに頭がいっていて氷華のことを考えたこともなかった。でも、俺はアキナを守ると決めた。決めたことは最後まで貫きたい」

「はぁ~」

 まったくため息が出る。

「なんだ?そのため息は?」

「お前ってバカ?」

「どういうことだ?」

「どうしてアキを守って氷華と恋人として付き合うという選択肢がなかったわけ?」

「そ、それは両立できないと思ったからだ。それに氷華たちをもう組織に縛らせたくないと思ったからだ」

「お前ってまじめ?」

「なんだと?」

「もっと、強欲生きろ。望みがあるなら人を利用してでも叶える。それが俺の知る風上風也だ。無理なのは諦めてるからだ。俺は叶えるぞ。アキを守る!美嶋には魔術を関わらせない!この力で人を殺さない!」

「何無理なこと言ってるのよ」

 氷華の太刀の氷の刃が完全に回復している。

「私が風也といっしょにいるという小さな夢も叶わないのにそんなにたくさんのことできるわけがない」

「それは俺に勝ってから言え。俺はアキを守るために風上を守る。アキの泣き顔は見たくない。そして、この力で人は殺さない。こっちの世界の住民が気付く前に戦いを終わらせる。俺に勝てばそれが全部パーになるぞ、氷華」

「簡単な話ね」

 氷華が飛び込んでくる。俺は風上を蹴り飛ばして巻き添えを防ぐ。そして、氷華の攻撃に備える。

 俺の力は触れた物を原子レベルまで破壊する。それは無条件で一度かけてしまえば、無限に破壊され続ける。それは人の体も同じだ。人を殺さないようにするにはこの力をうまくものにするしかない。破壊するのはあの氷だけだ。

 問題があるとすれば、破壊速度が遅いということだ。だが、逆にそっちの方が扱いやすい!

 氷華の氷の短刀の突き攻撃が俺に向かって襲いかかる。俺はそれを手のひらで受け止める。氷の短刀は破壊されず、俺の手のひらを貫通する。噴き出る血が俺の顔にかかる。生暖かい液体が気味悪い。だが、そこに恐怖はない。ゴミクズが緩和しているのだろうか。

 だったら、ありがたい!

 俺は痛みをこらえながら刺さった氷の短刀を握って、逆に押し返す。

「あああああああ!」

 痛みをごまかすためと気合を入れるために叫び声をあげながら強く押し返す。靄の中に入っていた氷の短刀は破壊される。そして、俺はそのまま氷の腕を殴りにかかる。氷華は抵抗しようと掴みかかってくる。それは逆に俺にとって好都合だった。俺の力は触れた物を自由に破壊出来る。

 氷だけだ。この氷は氷華と一体化している。でも、俺の破壊するのは氷だ。そうだ。

「氷だけだ!」

「何よ!こいつ!」

 太刀で斬りかかる。俺は空いた手の甲で太刀の氷の刃を破壊する。そして、鈍の刃だけになった太刀の刃も俺の力によって剣先が折れた。それはさっきと違って一瞬で破壊された。

「え?」

 驚きを隠せない顔をしていた。開いた口がふさがらない。そんな感じだった。

「強くなっている」

 風上も呟いた。この場にいる全員が驚いていた。俺は必死だったから自分の力が強くなっていることに気付かなかった。

 そして、俺は氷華の氷の腕のみを破壊した。氷の細かいかけらが粒子みたいに舞う。俺は転がりながら地面に倒れる。氷華は倒れてはいなかった。でも、右腕は破壊され、太刀も剣先が折れてウルフの持っていた刀並みの大きさになっている。

 どうやら俺の勝ちみたいだ。両手に走る痛みに気絶しそうだ。

「教太さん!」

 アキが慌てて駆け寄る。両手から流れる血が止まらない。痛みが麻痺してきて寒くなってきた。

「今!治療します!」

 アキが十字架でカードを打ち付ける。体全体が暖かく心地よかった。

 両手の痛みが引いてきた。血が止まっているが真っ赤に染まった手は血が止まっているかどうか分からない。

「くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!くそ―!」

 氷華が狂ったように叫ぶ。俺は体を起して立ち上がろうとする。

「まだよ!まだ負けてない!」

「氷華の負けだ」

 風上が立ちふさがる。肩は赤く血で染まっているがしかめた顔をしていないところ見るとアキによって治療されたみたいだ。右手には雷属性の魔武の小刀。左手には契約系の魔武の右風刀。見た感じは戦闘態勢だったが、声からして優しさがある。戦意はないようだ。

 ゆっくりと氷華に近づく。

「もうやめよう」

 風上は剣を捨てて近づく。

「近づくな!」

 氷華はカードを取り出して首にかかっていた十字架のアクセサリーをカードに打ち込んで風上に攻撃をするがそれはかすりもせずに外れる。

「もうやめよう。氷華」

「うるさい!そもそも風也が!」

 その瞬間、風上は氷華に抱きつく。優しく包むように抱きしめた。

「すまなかった。そうだよな。あいつの言うとおりだ。俺はお前のことをもっと考えるべきだった。俺の世界でたったひとり好きになった女だ。そんな女を幸せにできる自信がなかった。それだけだったんだ」

その声は若干涙声であった。

「これから毎日氷華に会いに行く。用がなくても会いに行く。会いに行きたい。だから、いつもの優しい氷華に・・・・・・・梨華に戻ってくれ」

 ・・・・・梨華って誰だ?

「先輩と氷華さんの間でつけあった名前っす。そういう遊ぶが機関の中ではやったんですよ。ひと時の幸せっす」

 拘束された状態で雷恥が教えてくれた。アキも初めて知ったみたいだ。

「本当?・・・・・・本当に会いに来てくれる?霧也」

 霧也。それが氷華に付けてもらった風上の名前。

 名前に縛られた者たちの愛情ではなく愛によってつけられた名前。風上は風上風也という名前を嫌っているかもしれない。でも、風上風也がいなければ、氷山氷華には出会えなかった。

 梨華と霧也。

 こっちまで涙が出そうだ。

 ふたりの愛が取り戻された。これでこの話もハッピーエンドで終わればよかった。

 そう。本当にここで終わればよかったのに・・・・・・・。

 しばらく抱き合った二人の様子がおかしいと思ったのはすぐだった。

「・・・・・・・・・・・梨華?」

 風上がそういって何かおかしいと思った。俺によって破壊された氷の破片がゆっくりと氷華に集まっていく。周りの空気も冷やされて白い空気が肉眼で確認できる。それが渦を帯びてふたりの周りを取り囲んでいる。

「アキ。何かおかしくないか?」

「・・・・・・これは」

 アキが手を顎に当てて何か思い出そうとしている。そして、急にハッとなった。

「風也さん!離れて!」

 その瞬間、氷華からさっきとは比べ物にならないほど巨大な氷の腕が現れた。その大きさは氷華がふたりいても足りないくらいの大きさだ。その異常に風上も思わずひく。落とした刀と拾って構える。

「梨華!」

 氷の腕が氷華の体を浮かせる。よく見ると氷華の体の上半身の右半身の氷で覆われてている。顔も半分氷で覆われて氷華は目を閉じて動かない。その姿はどんどん変貌していき氷でできた龍が氷華をまとっていく。

「梨華!起きろ!梨華!」

 その声に氷華は目が覚める。すると自分の置かれている状況に気付く。

「な、何!これ!やだ!止めて!」

「梨華!」

 風上は右風刀で風を起こして氷に覆われていく氷華に向かっていく。小刀の攻撃範囲に入ると右風刀の風を完全にシャットダウンさせて小刀の雷を起こして氷華を襲う。氷の腕に斬りかかる。だが、氷の腕が風上を吹き飛ばす。その際に木が何本か勢いで倒れる。その勢いを物語る。

「風上!」

 風上はアキの治癒魔術によってかろうじて動けていた。

「アキはあれはなんだ?氷華はどうしたんだ?」

 するとアキは言いにくそうに答えた。

「彼女の氷華さんの契約系の魔術はただの契約ではありません。あれはおそらく悪魔と契約して手に入れた物です」

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